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えぴそーど 62

王宮の食卓は意外な人間たちが集まった。

もちろん、全員があの2人を祝福している。


「昨夜もすまなかったな」


と王は左大臣に謝るのだ。

謝られたポポロは顔色一つ変えないで、そう、涼しい顔で答える。


「陛下、私などに謝る必要はありません。それに、もう済んだ事ですよ」

「しかしなぁ…、昨夜はなぁ、」

「そうですね、あれだけ認めるのを嫌がってらっしゃたのにです。実に、あっけなかったですね…」


その言葉に、王は唸るしかなかった。


「言うな、ポポロ…」


左大臣は王の心情を慮って、食べる手を動かした。

なのに、アリスは尋ねる。


「ポポロ、何があったの?」


ポポロは1度王を見てから、アリスを見る。


「陛下のやるせない気持ちを伺っていたのですよ、アリス様」

「やるせない?」  

 

アリスは相変わらずである。

そう尋ねることが相手を困らせることに、気づいていない。


ルイが姉を嗜める。


「姉様、何でも質問しないことです」 

「う、うん…」


アリスは弟にたしなめられる事に慣れてきた様だ。

隣に座っているアンドレアが笑いを堪えている。

それに気付いた王は彼に尋ねた。


「婿殿、どうかしたのか?」

「いえ、陛下。私の妻になる女性が可愛いので、つい…」

「なるほどな…、うん…、そうだ…」

「ええ。なにしろアリスが可愛くて、つい嬉しくなってしまったんですよ」

「うん…そうか、」


そのまま黙ってしまうのだ。

ルミナス広しと言えども王を黙らせられるのは、彼だけかもしれない。


「アンドレア殿?」


マリウスが声を掛けた。

本日はセーラの代わりに出席している。

彼女の体調は良くなっているのだが、大事を取って家での療養を続けている。


「なんでしょう?」

「貴方は、実に堂々と言葉にされる」


実直な彼はストレートに尋ねる。


「しかしながら、その様な言葉を口にして、恥ずかしくはないのですか?」


空気が固まった。

ルイは噴出してしまう。

王は苦笑いで目線をポポロに送り、ポポロもその目線に応えた。


しかし、マリウスは真面目な顔をしている。

そして、アリスは顔を赤らめている。

けれども、アンドレアは真剣な顔をしていた。

そして答える。


「恥ずかしい、ですか?」

「ええ、私はそのような台詞は言えないものですから、普通の顔で言われるアンドレア殿が不思議です」

「マリウス殿、これが普通の私には、恥ずかしい、が分かりませんね」

「これが、普通なのですか?」

「はい、そうです」


そう言って、アリスを見詰めた。


「そうだろう、アリス?」

「え?」


アリスはまだ馴染んでいないみたいだ。

黙ったままで下を向いた。

そして、少し小さな声で答えた。


「そ、そうね。けど、慣れない方もいるかも、知れないわ…」

「え?なんだか嫌そうに聞こえるんだけれども?」


アンドレアは分かってないようだった。

ここは誰かが話を逸らすしかない。


「えっと、」


とルイが言葉を出す。


「アンドレアさん、俺はアンドレアさんが兄となってくれて心強いです」

「殿下?」

「困った時は助けて下さい」

「殿下が頼って下さるなんて、それは嬉しいなぁ」


そんな2人の会話に思わずアリスが聞いてしまう。


「え?いいの?ルイ?」


アリスの言葉にアンドレアが問いかけた。


「え?アリス?それは、どういうことだろうか?」


その言葉に彼を除く全員が固まった。

アンドレアの天然振りも筋金入りのようである。

その強さがアリスの心を捉えたのだが、全てにおいてこれでは、周りは大変である。


誰かがその呪縛を消さなければならない。

アンドレアに気付かせなければならない。


「アンドレア殿…」


ポポロが声を出した。


「その様な甘い言葉はアリス様と2人だけの時に言ってくださいませ。でないと…」

「でないと?」

「ルミナス中が、呆れ返ってしまいます。いいのですか?」


なるほどといった顔をしたアンドレアは、ようやく理解をしたようだ。


「なるほど、そうですね。少し抑える事にしましょう」


その言葉に王は昔を思い出す。


「婿殿。ワシとカナコでさえ、人前では平然と振舞ったぞ?余り惚気て敵を作らないことだ」


その言葉に色々と思う所がある人々であったが、そこは王の顔を立てて黙ったのだ。


「無駄な敵は厄介だ。気をつけることだ」


なぜかポポロが相槌を打つ。


「そうですね、女で揉めるのはコリゴリですね」

「まったくだ。ポポロ、あの様な女は何処から攻撃してくるかわからんからな…」

「その通りでございます。極力リスクは下げるべきです」

「そうだ、お前の言う通りだ」


2人は思い出に浸る。

が、アンドレアが尋ねた。


「陛下、あの様な女とは…?」

「うん?それは、あの様な、だ」

「ぜひ1度、お教え願いたいです」

「良いだろう。このままだとお前も色々と問題が出そうだからな。今度、時間を取ろう」

「ありがとうございます」


アリスが不思議そうな顔をする。

また思いつくままに言葉にした。


「どう言うことかしら?アンドレアさんが他の女性に心を奪われるってこと?」

「そ、そんな事、ないからね?」

「え?アデュ、どうして、詰まるの?」


返事が出来ない婿殿だ。


これには皆が笑い出す。

笑い声が溢れる。





この食事会は色々と楽しいものとして終わったのである。




ようやく再開します。

このまま完結まで、お楽しみください。

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