表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/81

えぴそーど 38

暫く後。



スティーヴはアリス・カナコ・ルミナスの護衛の任を解かれた。

彼はそれを素直に受け入れた。

どこか寂しくもあったが、自分が出した答えからの結果だ。



早くガナッシュへ帰ろう。

そこで生活を始めよう。

海に出て知らない土地で、そうだな、知らない土地で普通の女の子と恋をして、楽しむんだ。


ふっとアリスの顔が浮かんだが、直ぐに消えた。

分不相応な恋愛なんてするもんじゃない、と消したのだ。


早く帰ろう。

ここにいると未練が残りそうだから。

スティーヴは早くガナッシュに帰りたかった。


スティーヴは、だ。 


だが、サーシャはルミナスに滞在し続けている。

彼女なりに思うところがあったのかも知れない。






それから数日後のことだ。  




アリスがサーシャの宿に電話を掛けてきた。 

受話器越しのアリスの声は、明るくて強かった。

サーシャは安心した。


「アリス、元気そうね?」

「ええ、お姉様に叱られたから…」

「セーラが?」

「お母様のように、ちゃんとしなさいって」

「そうね、けどそれは全て陛下のためだったわ。フィーは陛下の為ならなんでもしたものね」

「そう、なのかも知れない。けどね、お母様はいつもお綺麗だったもの。だから、私もちゃんと生きようって思うの」


アリスは話を進めた。


「あのね、私、サーシャ伯母様にお願いがあるの」

「なにかしら?」


と言いながら、アリスのお願いの想像はついた。 

彼女の可愛い姪は心を決めたのだ。


「スティーヴさんに会って、渡したいものがあるの。でもね、1人で会う勇気がなくて、…。色々と決めたんだけど、意気地がないの。だから、伯母様の泊まってらっしゃるお部屋で、一緒に会っていただけないかしら?それだったら、スティーヴさんも会ってくださると思うから…」


もちろん、姪の願いをきいてやろうと思う。


「いいわよ。アリスの願いなら叶えてあげるわ。じゃ、彼には私が連絡するからね?それでいい?」

「はい、お願いします」


サーシャは伯母としての忠告を贈る。


「アリス、」

「え?」

「分かっていると思うけど、ルミナスの王女として恥ずかしくない姿で、会うのよ?」


アリスの声は変わらなかった。


「伯母様、私、変わろうと思うから大丈夫」

「そう。なら大丈夫ね」

「はい、サーシャ伯母様」


姪の声に、サーシャは安堵した。


「やっぱり、貴女はフィーの娘だわ。いい?貴女は私の自慢の姪よ?」

「ありがとう!」

「じゃ、日にちは後で連絡するわ」

「お願いします」


受話器を置いたサーシャは、滞在を伸ばしたて良かったと思うのだ。







スティーヴは毎日のようにサーシャの宿を訪れていた。


「サーシャさん、いつ戻ります?母が日にちを知りたがって…」

「知りたいのは貴方でしょ?スティーヴ」

「まぁ、そうですが…。けど、いつでも出立できるのに、なんでルミナスにいるんですか?」


なに、この子、分かってないの?とサーシャは呆れる。

そして思わず、スティーヴに説教をしだすのだ。


「それは、貴方とアリスの事を終らせるためでしょ?」

「終らせるって、別に何もなかったのに…」

「一度、アリスに会うって約束は?どうなったの?」

「…、私から言えるはずないでしょ?断りたいから会ってくれませんか、なんて言えますか?」


確かにそうである。

だからサーシャもアリスの言葉を待ったのだ。

これはスティーヴが正しかった。


「まぁ、そうよね。これはスティーヴの言う通りだわ」

「そうですよ」


「けどね、」とサーシャが告げる。


「さっきアリスから会いたいって電話があったの。いいわね?」

「いいって?」

「私が日にちを決めるから、会うのよ?」


スティーヴは渋々承知した。


「…、分かりました」


目の前で泣かれるのが嫌だけど、仕方なかったのだ。

そうしなければ、互いに先に進めないのは分かっている。


「私、思うんだけど、ね。スティーヴ、」

「なんですか?」


その続きを言おうとしたのだが、まったく普通の顔をしている彼を見ると、言っても無駄なような気がした。

だから、言葉を変えた。


「ううん、いえ、そうね。ガナッシュには来週にでも帰りましょう。いいわね?」

「本当ですか!来週ですね?準備します」


スティーヴは家族に知らせるために、飛ぶように帰っていった。







1人しかいない部屋。

サーシャはスティーヴに言おうとした言葉を独り言として呟いた。


「後悔するのは、貴方の方だと思うのよ?スティーヴ…」


そう、呟いたのだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ