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えぴそーど 17

「じゃ、ガナッシュでもカフェ・マリーへ?」


とアリスが尋ねる。

2人の話はまだ続いている。


「はい、絵がね、楽しみなんですよ」

「絵、ですか?」

「ルミナスにも飾られていたでしょう?」

「ええ…」

「マリーさんに伺ったら、知り合いの商家の娘さんの描いた絵だそうですね」


アリスはなんと答えるべきか考えたが、頷いてしまった。


「みたいですね」

「きっと、素敵な娘さんなんだろうな…。会ってみたいものです」

「あの…」


アリスが立ち止まって、スティーヴを見る。


「その娘さんに会ったら、スティーヴさんは…」


が、言葉はそこで止まった。 




突然、数人の男が現れたのだ。 




マリーの店は城からは近い。

が、一箇所だけ、道路の周りに木々しかない場所がある。

それは城への侵入者が分かりやすいようにと、城を囲むように作られた緩衝地域だ。

城への侵入者を防ぐ為に作られた場所のために、人の行き来が少なくなっている場所なのだ。


ところがだ、それが拙かったらしい。

今もアリスとスティーヴ以外は、奴らしかいない。


雰囲気が悪い人間達だ。

スティーヴがアリスを自分の後ろに庇うと、男達に尋ねる。


「誰だ?」


男達の返事は、こうだ。


「素直に答える馬鹿がいるか!」

「その女、渡してもらおう!」


アリスは思わずスティーヴの腕をギュっと握った。

自分にだって魔量はある。それ相応の練習もしてきた。

だが、所詮、護身が中心の練習だ。

母みたいに打って出る訓練はしてこなかった。

父は娘達に魔量が尽きるほどの練習を禁じていた。

それにアリス自身もそんな訓練をする暇があったら、絵を描きたかった。


自分がこうして襲われるなど慣れていないから、恐ろしさが先に立ってしまう。

震えがスティーヴに伝わったらしい。

彼は男達から目を離すことなく、アリスの手を力強く握る。


「大丈夫ですよ、幕、張れますか?」


そうスティーヴが言った。

アリスは「はい、」と小さい声で答える。

それを見ていた男達は大きな声で脅しに掛かる。


「丸腰のクセに、随分と余裕だな?はぁ?」

「色男振りやがって!!」


しかし、スティーヴは挑発には乗らなかった。

乗るだけ無駄なことを経験から知っているのだ。


「お前達くらいなら、それで充分だ」


そう言って、「少し離れて、幕を張ってくだいね?」とアリスに伝える。

アリスは頷いて少しの距離を取った。

急いで幕を張る。




場が動き出した。



わぁぁぁ!

いけーーーーーー!

くそーー!



相手は3人、一斉に掛かってきた。

スティーヴは真ん中の男の利き腕を掴み、持っていたナイフを叩き落して、羽交い絞めにする。


「い、イテェ!お、おまえら、よせ、俺が怪我する!」


そう掴まった男が、わめくものだから、残りの男達は手が出せない。

スティーヴは捕まえた男の腕をねじりあげ、ありえない方向に腕を曲げた。

ボキっと大きな音がした、間違いなく骨が折れた音だ。



ギャアアアアアア!



悲鳴が響く。

男を地面に放りつけると、ステーヴはアリスの側に行き、その前に立った。

それが、アリスの幕の中であった事には2人とも気づいていなかった。

ワザとノンビリとした声で男達に警告する。


「この辺で止めといた方がいいよ?それとも、お2人さんも骨、折ってみますか?」

「い、いえ、結構です…」

「おい…」

「ところで、何処の誰ですか?彼女のことを知ってるんですね?」

「「…、」」


残された2人が互いを見て、何も言わない。

だがスティーヴの気迫に押されるように、地面に転がっている男を抱えて逃げていった。


土誇りが舞った。


やれやれ、とスティーヴは自分の服を軽くはたく。

アリスを見て、無事なのを確認してから声を掛ける。


「姫、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫で…、」


幕が消され、アリスの瞳から涙が零れた。


「あ、ごめんなさい。なんで泣くんだろう、見っともないわ…」

「泣いて当然ですよ。怖かったでしょ?」

「けど…」

「さぁ、行きましょう。急いだ方がいい。歩けますか?」

「はい、歩けます」


スティーヴの手が差し出されて、アリスは素直にその手を握った。

温かい…、アリスはそう思う。






先程は打って変わって、無言のまま歩き続ける2人だった。





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