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えぴそーど 14

カフェ・マリーは盛況。

店内のざわめきが店の外まで伝わってくる。




そんなカフェ・マリーに、荷物持ちの世継ぎを従えてアリスが現れた。



店内が一瞬緊張する。



ルイの存在がそうさせる。

やはり、彼はルミナスの世継ぎで、特別な存在なのだ。


店員が慌てて駆け寄る。


「ルイ様、お持ちします!」

「いいよ、姉のモノだから俺が持つ」

「しかし…」

「いいのよ。少しぐらい姉の為に働いたってね、でしょ、ルイ?」

「ええ、その通りです。アリス姉様」


緊張がまだ続く。 

だが、ルイはフランクな物言いで姉と共に例の部屋へと向かった。


「すまないんだけど、トーフのハンバーグ肉多めで、ご飯も多めがいいな、あ、何も混ぜない白いのでね」

「畏まりました、アリス様は?」

「私は中で決めるわ」

「はい」


2人が例の部屋に入ると、ようやく、店内からため息が漏れた。

ざわめきが始まる。


「ルイ様、素敵ね?」

「ほんと、これからが楽しみだわ!」

「お相手はいらっしゃるのかしら…」

「あら、まだお若いもの、早いわよ」

「けど、ほら、お母様のエリフィーヌ様は民間からの輿入れだったじゃない?」

「けどね、私達には無縁の話よ?」

「そ、そうね…」

「トーフのハンバーグ、だったわね?試してみようかしら?」

「ルイ様のお気に入りなんですものね?」

「そうよ、試しましょう?」


などと、思いつくままの気ままな会話が交わされている。




で、例の部屋は…。




「あら、ルイ!」

「あ、サーシャ伯母様、ダグラルさんもだ」


ルイは懐かしい伯母達の側にいる見慣れない男性に不思議な顔をした。

サーシャが苦笑いになる。


「ルイ、そんなに不審がらないでよ」

「え?そんなに怖い顔してた?」

「してたわよ、気をつけなさいね?」


伯母の忠告に素直に頷く世継ぎ。

サーシャは一緒に連れてきたスティーヴを2人に紹介した。


「この子はね、スティーヴ・ズレイクよ。スティーヴ、えっと、」


スティーヴはサーシャの言葉を遮って、返事をする。


「サーシャさん、どなたかはもちろん存じております。ルイ殿下、お目にかかれて光栄です」


その丁寧な礼に、ルイはこう答えた。


「俺もだよ。君の事はね随分と前から聞いていたよ。なんたって、俺の憧れの人物なんだよ、君は」


その思ってもみなかったルイの言葉にスティーヴは驚いた。


「また、どうして?」

「君は16歳でガナッシュへ飛び出して、伯母様達と一緒に航海に出たんだろう?いいなぁ…、俺も機会があれば…」


と少年は共通の夢を持っているもの同士の繋がりを感じていたのだ。


けれども、「ルイ?」とアリスが釘を刺す。


「あまり皆を困らせないでね?いい?」

「分かってますよ、姉様。希望ですから、希望…」


サーシャが呆れた顔で姫に物申す。


「アリス、あなたは過保護ね?陛下はルイの年には、魔物征伐でルミナスを飛び回っていたわよ?ルイだって、そのくらいやれないと、そうじゃない?」

「伯母様、魔物は昔に比べると少なくなっているの。ルイをそんな危険な目にあわせる訳には…」


そこに、ここの経営者が入ってきた。

どうやら話は聞こえていたらしい。


「アリス、貴女とセーラはルイを甘やかし過ぎよ?フィーの甘やかしが貴女達に伝染したのかしら?だいたい、ルイの魔量があれば魔物なんて大したことないって、そうジャック兄様が言ってたんでしょ?それに、よ。貴女達の母親はルイがお腹にいる時に、魔物に向かって行ったのよ?」


そう矢継ぎ早に言葉を放つ。


「それは、覚えているけど…」

「陛下のお許しが出たら、船旅でもなんでも経験すればいいのよ。でしょ?サー姉様?」

「そうね、そのくらい経験しないと、駄目ね」


ルイは笑いを堪えてしまう。

この伯母達が揃うと、姉の面子は丸つぶれとなる。


「もう!」


サーシャはアリスの為に話を逸らした。


「ねぇ、スティーヴ、アリスも知ってるわね」

「当然です。姫、初めてお目に掛かります。スティーヴ・ズレイクです」

「初めまして、スティーヴさん」


アリスは先日噂に上った男性であるスティーヴを絵描きの習性で観察した。

スラリと背が高く、船に乗っているために日焼けした肌が健康そうに見える。白髪の髪は肩で切り揃えられて、サラサラと揺れる。

アリスを見る赤紅の瞳が優しく輝いている。


あ、と思う。


海の見える丘で彼が立っている姿、描きたいかも…。


そんな事が頭に浮かんだ。

他人を描きたいなんて思ったこともなかったのに、だ。




スティーヴさん、か…。







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