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えぴそーど 12

数日後の、サーシャとダグラルが泊っている宿屋の部屋。

報告をしに部屋を訪れた彼は、それよりも先に見つけてしまった。


「あ!!」


スティーヴが大きな声を上げた。

「なに?」とサーシャが尋ねる。

スティーヴは壁を見たのだ。


「サーシャさん、これ、あれですよね、ガナッシュのカフェ・マリーに飾られてた人の絵、ですよね?」


「あー、」まったくダグラルったら、と思ってしまう。


「いい絵だなぁ、いいなぁ、やっぱり、いいよなぁ…」

「だから言ったでしょう?ダグラル。壁に掛けたらスティーヴが五月蝿いって」

「けど、ね。良い絵なんだよ?眺めていたいだろう?」

「もう…」


2人の軽い喧嘩などいつもの事と、スティーヴは気にもしないで尋ねる。


「どうやったら、手に入るんですか?」


サーシャが軽く頭を左右に振った。

作者の事は伏せなくてはいけない、とマリーに言われている。

その方が余計なトラブルが起こらないからだ。


「いい、スティーヴ。あの絵の作者はカフェ・マリーにしか絵を売らないんですって。そして、カフェ・マリーは絵を転売しないの」

「じゃ、どうして、ここにあるんですか?」

「頂いたの。それだけよ」

「頂いた?頂いたって、それって、知り合いなんですか?」


スティーヴの質問は鋭い。

サーシャは無理やり話を打ち切る。


「もうこの話はお仕舞いね。それよりも、どうだったの?」

「ああ、家の話ですよね…」


彼の様子が一気に沈んだ。


スティーヴは元々ルミナスの貴族の次男坊である。

ズレイク子爵、このルミナスで税務を担当している子爵の次男。


それがである。


幼い頃に読んだサーシャの本に感動して、魔法学院を卒業後にガナッシュにやってきたのだ。

本人は親の許可を得たといっていたのだが、それは一方的に置手紙をしての家出であった。


しばらくは働く彼を見ていたサーシャとダグラルだったのだが、彼の素直さと誠実な働き振りに触れ段々と信用するようになり、今では息子のように思っている。

できれば、このまま一緒にいたい、という気持ちもある。


けどね…、と思うのだ。

いくらスティーヴの父からも頼まれるようになったとはいえ、それは一生ではない。

ちゃんと親と話して、収まるところに収まるのが1番だと感じる。


「そうだね、お父上はなんて言われたのかな?」とダグラルが優しく聞いた。


「父はですね、私のやりたいようにすれば良いといってくれました。けど…」

「うん?」

「母が、1年はこちらで父の手伝いをしなさいと、言うんです。それから考えても良いんじゃないかって」

「そうね、5年はガナッシュに居た訳だから、その間にルミナスも変わったものね。うん。良いお母様じゃない?私もそう思うわ」

「けど、私は航海に出ていろんな所を見て回りたいんです」

「けどね、スティーヴ。親のいう事は聞いておいたほうがいいのよ」

「そうですか?」

「ええ、今は変に思えたり嫌に感じたりするけれども、やっぱり親なんだもの。貴方の幸せを祈っているのよ?」

「はい…、けど…」


ダグラルがポン!とスティーヴの頭を軽く叩いた。


「スティーヴ、俺たちは逃げも隠れもしない。いつだって戻ってきていいんだよ?けど、ちゃんと親孝行してからにするんだね」

「あ、ダグラルさん、スティーヴって…言いました?」

「もう坊主じゃないからな。俺たちはガナッシュに戻るけど、縁が切れるわけじゃない、そうだろう?」

「はい、そうですね…、そうですよね?」

「そうよ、」


そう3人が決めた。

そして、約束通りスティーヴは両親をサーシャとダグラルに引き合わせ、今後1年間をルミナスで過ごした後に彼が自分で今後を決めることになった。




サーシャとダグラルのルミナス滞在は3週間程。

その間は色々な舞踏会に呼ばれ、食事会に呼ばれ、果ては観劇に演奏会にと忙しい。

ルミナスでもサーシャの本は売れているし、ダグラルの出す地図は必要とされている。

彼等2人は有名人なのだ。





一通りのことが終ったある日、サーシャがスティーヴを誘った。


「じゃ、いい所に連れて行ってあげるわ」


そう言ってスティーヴを連れて、カフェ・マリーに向かったのだ。






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