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えぴそーど 11

翌日の宮殿にて。


先ほど全員の前でサーシャとダグラルの婚礼が行われた。

ダグラルが大きな体を小さくして緊張しているのが伝わった。

それを見てるサーシャの瞳にも涙が溢れていた。


「だから、早く、しなさいって、いったのよ…」とヴィクトリアがお小言を言った。

その懐かしい声は家族にとって安らぎの言葉であった。




今は家族が集まっての食事会が行われている。

王であるデューク・シレン・ルミナスを囲んで、セーラとマリウス夫妻、アリス、ルイ、サーシャとダグラル夫妻、アンリとグレイス夫妻に息子のエドワード、ジャックとマサのカップル、マリーとカルロス夫妻にデヴィットとケイト。そこにハイヒットの両親が参加した。

年老いた両親の体調はすこぶる良かった。

きっと久し振りに子供達や孫達と共に時を過ごせたからであろう。


王は義理の父母を気遣う。


「ハイヒット殿、今宵はここに泊まっていけばいい」 

「陛下、ありがとうございます」


とダニエルがゆっくりと返事をして、ヴィクトリアが頷いた。


和やかに時間が過ぎていく。

近況を報告するサーシャ、その話に優雅に相槌を打つグレイス。

ダグラルとジャックとマサは外洋の話をしている。 

子供達は同じ魔法学院に通っていたので共通の友人の話を楽しげにしている。

アンリはカルロスとの昔話をマリーに語ったりしてる。


不意にセーラがマリウスを突いた。目で合図を交わす。

 

「マリウス、いいでしょ?」

「ああ、セーラ。ご報告してもいいよ」


なんだか、お互いに照れている。


「なんだ?何があった?」

「あのね、お父様…」

「うん?」


父は不思議そうに2人を見る。

セーラが父を見つめる。

意を決して話し出す。


「お父様、ねぇ、お爺様と呼ばれる覚悟は出来ている?」


「え?」とアリスとルイが思わず声を出した。


「せ、セーラ、まさか?子か?」

「そうなの、お医者様に伺ったら、子供が出来たって、」

「義父上、真っ先に義父上に報告しようと、セーラと話してたんです」

「そ、そうか、孫か?俺とカナコに孫が出来るんだな?」

「はい!」

「セーラ、体を大切するんだぞ?初めての時は色々と不安だろうが、大丈夫だからな?」

「はい、お父様。ビクラードのお義母様に相談するし、マリウスも付いていてくれるから、大丈夫」

「そうだな、大丈夫だ」


子というものは素晴らしい、と王は思う。

思わず壁に掛けられている妻の肖像画を見詰めた。

いつまでも悲しんでいてはいけないんだな、そうだろう、カナコ?と彼は思う。


セーラはハイヒットの祖父母に話しかけている。


「お爺様、お婆様、曾孫が生まれるんだから、元気でいてね?」


「うん、うん、」とダニエルは頷く。

「まぁ、」とヴィクトリアが驚いてから「フィーが喜んでいるわ、セーラは親孝行ね?」と優しく語った。


母の名前を聞いたセーラの瞳が、潤んだと思った瞬間に涙が零れた。

マリウスが優しく肩を抱く。

仲が良い2人だ。きっと子供を大切に育ててくれる。


「セーラ、」


と王はあの優しい赤紅の瞳で娘を見詰めた。


「俺は良い爺様にならないとな」

「お願いね?たくさん遊んであげてね?」

「ああ、楽しみだ」


そこにいた皆に祝福されて、セーラもマリウスも喜びを隠さない。






いつもよりもシンミリが少ない今宵の王宮の風景であった。





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