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火花

 それは本当に、本当に、なつかしい笑顔でした。

 雪だるまは自分に何が起こったのか、わかりませんでした。そしてその理解が追いつくよりもはやく、頭の中をつぎつぎと火花がちっていきます!それはまるで、線香花火のようです。女の子の記憶が頭の中につぎからつぎへと、フラッシュバックしていきます!それは失われたはずの記憶たちです!ずっと大切にしていた、記憶たちです!


 火花は次第に大きくなります。火花が大きくなるにつれて、女の子の記憶はより鮮明にうつしだされます!わくわく笑顔も、黒い髪の毛も!


 それはまるで、打ち上げ花火のようでした。

 雪だるまは花火を見あげながら、呆然とします。同時に、懐かしい気持ちがあふれだします。そしてすべてを理解します。


「そっか。自分はこれから死ぬのか」


 そして死ぬ直前に、こんなにうつくしい花火を見せてくれた神様に、心のそこから感謝しました。そして自分の命が消えるのを、心の中で両手をあわせて、静かにまちました。


 そうしていますと、地上の方から、一筋の光がおりてきました。光はやがて、雪だるまの身体をとらえます。雪だるまの身体は、光の筋のなかを、急上昇していきます。みるみるうちに、雪だるまの身体は、自分がこれまで沈んできた土のなかを、逆行してのぼっていきます。


 そうしている間に、雪だるまの身体に不思議なことが起こりました。自分が沈んでいく途中に捨てていった感情や記憶が、ちょっとずつよみがえってくるのです。雪だるまはもう、女の子の姿を、触れられるくらい鮮明に思い描くことができるようになっていました。


 たまらなくなった雪だるまはついに、大声でさけびます。


「ちがうの!死にたいんじゃないの!もういちど、会いたいの!」


 雪だるまが地上に向かって叫びますと、しばらく間があってから、返事がかえってきます。


「だれにあいたいの?どうしてあいたいの?」


 それは、雪だるまの知らない、女の人の声でした。


「あの子に会いたいの!理由はだいすきだから!」

「わかった。その願い、あたしが叶えてあげる」


 慈愛に満ちた、あたたかい声でした。


「…ほんとうに?」

「ほんとうよ」

「すごい。あなたは神様なの?」

「うぅん、ちがうよ。あたしはただのアイドルだよ」

「アイドル?」

「そう。あたしは神様なんかじゃない!確かな温浴効果を約束する、温泉発掘アイドル、ひいらぎ☆那由多!」

「…はい?」

「それでは歌います!あたしの新曲、聞いてください!曲は、恋は掘削☆ボーリング。レッツアイドル!」


 そう言い終わるかどうかのところで、彼女の声にかぶさるように、大音量で曲が流れ始めました。

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