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エピソード6「ここから」

エピソード7「ありがとう」2話同時公開になります。

 スマホの地図アプリを頼りに登校する。学校名は東京都立水利高等学校。

 制服は男女でデザインが異なっていて、男の俺は学ラン、女のセルシルはブレザーを着ている。

「セルシル、おまえどこまで付いてくるつもりだ?」

「いっしょに~学校生活楽しむの~。それに~あるじ~も、私がそばにいた方が~万が一のとき安全でしょ~?」

「まあ、それはそうだが…」

 会話をしながら門をくぐり、叔母に説明されたとおり、その足で職員室に向かう。

 周りの生徒は俺たちの顔を見て驚いたり、ヒソヒソ話している。


 職員室で、登校した旨を伝えると、担任にの草壁先生に通された。草壁先生は、中肉中背の男性で、髪型は天然パーマで丸いフレームのメガネを着用している。

「良く戻ってきてくれた。いや、しかし驚いたなあ!記憶がないとは」

 草壁先生は俺の肩に手を置く。すでに叔母から記憶喪失などの話は一通り伝わっているようだ。

「ところで…叔母さま…でしょうか?」

「いえ~転校生です~」

 尋ねられたセルシルは両手の人差し指を交差させてバツマークを示す。

「なにするつもり―――」

記憶改変(メモリー・チェンジ)!」

 止める間もなく、セルシルが魔術を唱える。

「うん?あっ、ああ、、、たしか君はてんこうせ、、、転校生!だな。さあ、潤と一緒に教室へ案内しよう」

 セルシルが魔術を発動すると、草壁は一瞬固まったかと思えば、次の瞬間には、セルシルを転校生として認識する。

「ちょちょちょ、おっ、おい!精神干渉系は使っちゃだめって、自分で説明してただろ」

「この世界では~禁術か~そうでないか~規定されてませんから~。つまり〜やりたい放題ですね~」

「先が思いやられる…」

「キランキランで~いっくよん~」

 セルシルは張り切って拳を高く突き上げた。


 教室に移動し、先に草壁先生と俺だけで教室に入る。

「潤が帰ってきた。みなサポートしてやってくれ」

 草壁先生がクラスメイトに伝える。クラスメイトの反応は予想した通り、驚いていたり、珍しいものでも見るような表情をしている。

 ただ、後方に座る男二人の反応が気になった。

 二人は俺の顔を見るなり、顔を伏せ、気まずそうに互いに目配せしてる。

「それとだな、急なんだが、今日はもう一人、転校生をみんなに紹介する」

 そんななか、セルシルが転校生として入室する。

 セルシルの輝く銀髪、比喩表現ではなく、実際オーラで輝かせている。男女関係なくみなセルシルに見惚れ、恍惚とした表情を浮かべている。

(おい、神経を興奮させるオーラをわざと撒き散らすのやめろ)

(抑えてても~出ちゃうもんなんですよね~オーラって)

「たく、色気みたいにいうなよ」

 二人の席を教えてもらい座る。

 ホームルームが終わり、授業が始まろうとしたその時、廊下につながる後ろ側の扉が開いた。入ってきたのは男女の二人。みんなの視線がそちらを向く。


 男は身長195センチ程度で筋骨隆々、大きな岩のような身体をしている。髪色は黒く、肩のあたりまでの長髪で、後ろに髪を流している。身体の大きさとは対象的に頭部は小さく、二重の目は鋭く口からは八重歯が覗く。学ランのボタンは留めておらず、学ランの下には、首元に大きなネックレスとダメージ加工がされた赤いシャツを着用している。シャツの胸部には「FIRE」と文字がでかでかとプリントされている。雰囲気は獣のように禍々しい。男は「さーせん、遅れました」と詫びる。


 女は身長170センチ程度で、腰から下が長い。髪は金髪で高い位置で巻髪ツインテールをしている。頭部は小さく、整った顔立ちで、二重の目には紫のキラキラしたカラコンが覗く。濃いアイラインとアイシャドウで目力を更に強めており、口にはマットな紫のリップが塗られている。細い首元には金のネックレスを三重にぶらさげている。シャツの上は女生徒の制服であるブレザーではなく、学ランを着用しており、スカートの丈と一緒で極めて短い。足元にはレオパード柄のルーズソックスを着用しており、靴はラインストーンでデコレーションされ全面キラキラと輝いている。標的を射る狩人のような鋭い雰囲気を感じる。


 女と目が合う。

 二人はそのままそれぞれの席に着席した。


 授業が始まる。潤が使っていた教科書などすべて机の中にあり、内容は「組み込む(インストール)」した。

 セルシルの周りには、休み時間毎に人だかりができ、「どこに住んでいたの?」だの「ハーフ?」だの「彼氏は?」だの、様々な質問を受けている。セルシルがそれらの質問に対して、「異世界出身~」「エルフとのハーフだよん~」「一心同体のあるじ~がいるよん~」などありのまま返答しているが、「セルシルちゃん変わってる!」と冗談と思われて、本気にはされていない。ウケはかなり良いようだ。


 『神門潤さん、至急生徒会室までお越しください』

 休み時間の喧騒をかき消すかのように突如校内放送が鳴る。


(なんだかわからんが、ひとまず行ってくる)

(あるじ〜何かあったら駆けつけるからね〜)

 俺は呼び出されたことに戸惑ったが、隣の生徒に生徒会室の場所を尋ね、単身で向かう。

 生徒会室は校舎の中央の位置にあり、まるでクリニックかのような外装をしている。

「神門潤です」

「はい」

 生徒会室の外から呼びかけると返事があり、男が姿を見せる。


 身長は180センチ程度、髪は直毛でセンター分け。肌は白く、一重で切れ長の三白眼が眼鏡の奥から覗く。身体の線は太くないが、首を見るに、筋肉質で、切り傷のような大きな痣がある。メガネを押し上げる指が細くて長く綺麗な印象を抱く。左腕には「副会長」の腕章をつけている。


「どうぞ」

 副会長に生徒会室へ招き入れられる。

 部屋の中もクリニックのように白く、目に優しい。

 テーブルの向こうに女が微笑んでいる。

「神門さん、こんにちは」


 女は飾りっ気がなく、メイクもほとんどしていない。ステンレスのシンプルなメガネをつけている。シャツのボタンはすべて留めており、スカートの丈も膝丈の長さで、一切制服を着崩していない。肌は透き通って見えるほど白い。髪はシルバーをベースに、毛先に白のツートンカラーが施された髪をポニーテルにしている。洗練された美しさがあり、惹き込まれる。腕には「生徒会長」の腕章をつけている。


「あっ、こんにちは」

「どうぞ、お座りください」

 椅子に座り、テーブルを挟んで生徒会長と向かい合う。副会長は、生徒会長の隣に立ち、両者こちらを見つめている。

 俺はどことなく緊張した。


 休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。

「チャイムは無視してくださって構いません。あなたが授業に遅れることはすでに先生方の了承をいただいてます」

「へっ、へぇ…」

「私は生徒会長の高菱といいます。こちらは」

「島田だ」

「ごめんなさい」

 自己紹介も早々に、高菱が謝る。

「学校側は静観を貫いていましたが、あなたが飛び降りたとニュースになり、生徒会は校内調査を始めることにしました。結果、複数の生徒から『あなたがいじめられていた』と報告があがってきています」

「いじめ…」

「そう。配慮が足らないと言われるかもしれないけど、当事者のあなたに直接確かめたかったの」

「すみません…飛び降りる前のことは何も覚えていなくて」

 島田が二人の生徒の写真をテーブルに載せて提示する。

「加害者として名前が挙がっているのが、君のクラスメイトである山田と鈴木だ―――」

「あっ」

「なにか思い出したか?」

 高菱と島田は身を乗り出す。

「いえ…この二人、今日俺を見たとき、なんだか気まずそうに視線を逸らせたんですよね…それが少し気になっていたので」

「やはりな」

「あなたは…なにも覚えてないのですね?」

「はい…まったく」

「目撃者からは、山田と鈴木が君の物を隠したり、壊したりしていたことや、日常的な暴力行為があったことなどが報告されている。別の報告では、肌が見える部分を避けて暴力されていたというものもあった。もしそれが事実なら、卑劣な手口だ」


『死ね』

『許さない』


 島田の説明を聞いている間、潤の叫びが頭の中でこだまする。

 俺は意識せず拳を握る。

「いじめ…なんて言っていますが、生徒会としては、器物損壊や傷害罪に当たる行為と認識し、警察へ情報提供しようと考えているところです。ただ…私は、あなたの気持ちを大切にしたい。あなたはどう思う?」

 高菱は俺の目をまっすぐ見つめる。

「記憶がないので、正直なんとも…です。でも、目撃者の報告が事実なのであれば、警察に通報すべきだなと俺も感じました」

「ありがとう」

 高菱がそう言って頭を下げるより先に、島田が頭を下げる。

「必ず、君も、この学校の生徒も、守る」

 島田は口調こそぶっきらぼうで、気持ちは表情から分かりづらい。ただ、笑うと口角がやや上がり、眼鏡の奥に覗く目は優しい。

「いえいえ、ところで、俺も尋ねたいことがありまして…」

 俺は気になっていた、教室で見た岩のような身体の男と短ランの女について尋ねる。

「ああー、押忍(おす)ね?すごい迫力でしょ?昔はあんなに可愛かったのに…」

 高菱は笑顔になったかと思うと途端に悲しげな表情になり遠くを見つめる。

「ごめんね。男の方は、神宮寺押忍(じんぐうじおす)くんっていってね…あの見た目でしょ?本人にその気はないんだけど、入学してすぐはよく喧嘩を売られたりして、警察沙汰になることが何度もあったわ…でも、今は誰も喧嘩を売って来なくなったみたい。見た目通り強いし、元々は…ね?」

 高菱が島田に目配せし、島田は顔をしかめる。

「ただのアホですよ」

 島田が一際ぶっきらぼうに吐き捨てたのを聞いて、高菱は「フフ」と笑う。

「女の方は、小鳥遊明日美(たかなしあすみ)。気をつけてね」

 高菱は席を立ち、窓辺に寄る。

「なにをですか…?」

「インフルエンサーと呼ばれて、近頃はネットで特集を組まれたり、化粧品のモデルになったりもしている。SNSでライブ配信をすれば多額の投げ銭もあって、かなりの収入があるみたい。今やテレビにも出てる。我が校にもファンはたくさんいるしね―――」

「小鳥遊の存在は、いうなれば異質だ。本人が意図しなくても、周りの生徒は彼女に影響を受ける。それがいつの間にか、台風の目になることもある」

 島田が説明する間、高菱は頷き相槌を打つ。

「それに、これはすでに噂になってることだから伝えておくけれど、小鳥遊には裏組織と繋がりがあるという報告も挙がっているの。そのことも生徒会は現在調査中です」

「なんであのアホは、小鳥遊なんかと―――」

 島田が舌打ちする。

「だから…気をつけてくださいね」

 高菱はウインクをする。

「またなにか分かったことがあれば、報告してください」

「へっ、へえ」

 俺はたじろぎ、ひとまず、生徒会室を退室した。


 遅刻して授業に参加したが、先生からなにもお咎めはなかった。

 化学基礎の授業では、元素や分子構造について学ぶ。

「火が燃えるには、可燃物と酸素、熱の3つが必要…酸素と結びつくことで炎が発生…知らないことだらけだ。面白い」

「あっ、アイスが~いっぱああぁい~」

 隣の席で、セルシルは机に突っ伏して居眠りしている。

「こいつはなにをしに付いて来たんだ」

 呆れて、セルシルの机を音がならないように蹴る。

「あっ、アイスがああああ〜」

 そんなことをしていると、前の男の机から、俺の足元に消しゴムが転がってきた。俺は消しゴムを拾い、前の男の肩に手を載せる。前の男は振り返り、俺が消しゴムを拾ったと分かると、頭を下げて受け取る。

 その瞬間、生徒会長から教えられた二人の男、山田と鈴木と目が合う。二人は眉間にシワを寄せ、視線を逸らした。

初執筆作品です。

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