おとめたちのなか
木を隠すなら森の中とはよく言ったもので、何かを隠したいならそれと同じか似たようなものに混ぜてしまえば誰にも見つからないんですって。
「これ……一緒に埋めてくださらない?」
オリエさんが微笑んだ。薔薇が咲き乱れる庭園には白いガーデンテーブルとチェアがあって、曲線を描いた薔薇のアーチにはてんとう虫が止まっていた。秋の薔薇は春よりもずっと色が深い。こっくりとした色彩の上を、冬の息吹が通り抜けていく。
庭園の真ん中に、少女の死体があった。
薔薇をまとったように眠る彼女にわたしは冷や汗を流した。オリエさんは手に斧を握っており、彼女の華奢な体には似合わなかった。
「ショウコさん?」
わたしはオリエさんに呼ばれてはっとして、彼女と目が合った。
「ぼーっとするなんて、セレナの女学生がすることではなくってよ」
オリエさんがクスリと笑った。わたしはその文句に聞き覚えがあった。
「生徒会長の口癖を真似てみたの。……もう聞けないけどね」
わたしとオリエさんは同時に地面の死体を見た。セレナ女学園の生徒会長というそれはそれは気高い死体は眉ひとつ動かさない。
「本当に、オリエさんがやったの?」
「ええ」
「どうして……」
「好き、だったの」
オリエさんが息を漏らした。太陽が傾いて、西日がわたしたちを空に晒していく。
「あなたにしか頼めないの。ショウコさん」
この気持ち、わかるでしょう? と彼女はわたしの目を貫く。彼女は、わたしの気持ちに気づいている。その気持ちが彼女に届いてないという事実も突きつけながら。猫のようにすり寄って、白い腕がわたしの首に絡みつく。血と花の香りがふわりとわたしの頬を撫でる。
「……嫌だと言ったら?」
「キライになっちゃうかも」
わたしは死体を埋めないことにした。
あたりはすっかり暗くなり、わたしたちを夜の闇に隠した。ガーデンチェアに座り、紅茶とミルクを用意する。スコーンには薔薇のジャムを添えて、マカロンは淡いピンク色に。とびきり時間をかけて作ったチョコレートは喉を通ると燃えるように甘かった。




