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血管を巡る毒と見知らぬ人の優しさ

意識がはっきりと戻ったのは、翌朝になってからだった。最後にカエルの名前を呟いたのが、身体が限界を迎える前の、降伏の印だったことをぼんやりと思い出す。それが眠りだったのか、それとも単に意識を失っただけなのかは、定かではなかった。


ゆっくりと瞼を押し上げると、最初に感じたのは猛烈な痛みだった。私は藁が詰まっているかのような粗末なベッドに横たわっていた。そこはがらんとした小さな部屋だった。肌に擦れる毛布はゴワゴワと硬く、マットレスからは藁の先が突き出て、背中や脚を絶えずチクチクと刺した。身を起こそうとすると、腕に焼けるような痛みが走り、左胸へと広がっていく。私は苦痛に叫び声を上げ、再びベッドに倒れ込み、体を二つ折りにした。


「セリス」


囁くような声がした。顔を上げると、カーテンが引かれて戸口が現れ、その向こうからカエルが姿を見せた。彼の額にはバンダナが巻かれ、邪魔な前髪がまとめられている。手には小さな木製の盆を持ち、その上には温かいスープの入った器が乗っていた。食欲をそそる香りに、私の胃は必死にぐるぐると鳴った。だが、その直後、用心深さの波が押し寄せ、芽生えかけた楽観的な気持ちを打ち消した。この盆に乗っているものは、毒かもしれない。またしても私は甘かった。落ち着いて、あらゆる状況を注意深く見極めなければ。すべてに危険が潜んでいる。私が何も言わずにいると、カエルはベッドのそばにある小さなテーブルに盆を置き、うずくまる私の体を見つめた。


彼はそっと私の肩に手を置いた。「大丈夫か?」


「触らないで!」私は衝動的にそう吐き捨て、痛む腕を彼に向かって振り回した。だが、その無意味な仕草は痛みを増幅させただけだった。熱い涙がこぼれ落ちないように、私は固く目を閉じた。


「落ち着けよ」と彼は言い、手を引いた。「もっと傷を悪化させるだけだ。まだ毒が抜けきっていないんだから」


「毒!」私は叫び、弾かれたように顔を上げて彼を見つめた。それから視線を自分の腕に落とす。白い亜麻布に、黒く不吉な血の染みが広がっていた。これは、私の血?


カエルは腕を組んだ。「ああ、毒だ。山賊の連中が好んで使う手口さ。撃てば、相手は死ぬ。実に効率的だ。北の山でしか採れない珍しい薬草から作られる毒でな。皮肉なことに、唯一の解毒薬も同じ薬草から、別の製法で作られる。その毒は、体内を巡りながら内臓を凍らせていく。気持ちのいい死に方じゃないだろうな」


彼の言葉を理解しようと、私は瞬きをした。山賊たちが私に撃ち込んだのは、それだったのか。


「あなたが、私を助けてくれたの?」その問いは、自分の口から出たとは思えないほど、空々しく響いた。


「当然だろ」カエルは微笑み、盆を指差した。「さあ、朝食を食べろ。解毒薬の二度目の分が入っている。昨夜、一度目は君が意識を失っている間に飲ませた。ひどい味だから、食べ物に混ぜておいたんだ」


盆に目を落とすと、私の意志は揺らぎそうになった。おにぎり。綺麗に形作られたそれが三つ。私の大好物だ。一瞬、温かいものが胸をよぎったが、すぐに不信感という氷の壁が再び立ちはだかった。


「これが毒じゃないって、どうして確信できるの?」私は問い詰めた。「あなただって、山賊の仲間かもしれないじゃない!」


「どうしてそう思うんだ?」カエルは唇の端を上げて尋ねた。彼が気分を害さなかったことに、私は腹が立った。


「だって、昨夜言ったじゃない。あんな夜更けに外にいるのは、山賊か盗人だけだって」私は指を一本立てて言い返した。「あなたが外で何をしていたのか、気になるわ」


「俺が外にいたのは、窓から光の閃光が見えたからだ」カエルは私の仕草を真似て言った。「それで外に出てみたら、道の真ん中で女が倒れていた。俺が外に出た理由は、テンシャ、あんたがいたからだよ」


「やめて!」私は声を荒らげた。「本名で呼ばれる方が、まだましよ」


「そうか」と彼は言った。「俺はテンシャの方が好きだがな。まあ、あんたの性格とは、あまり合っていない気もするが」


首筋がカッと熱くなり、私は黙り込んだ。


「それに、俺が山賊だとして、あんたから何を奪うっていうんだ?」カエルは続けた。「なぜあんたが襲われたのか、俺にはさっぱり分からない。ただうるさくて、邪魔だったからってだけじゃなければな。まあ、あんたのような状況にいれば、誰だってパニックになるのは当然だが」


「彼らが何を欲しがっていたのか、私にも分からない」私は不意に口を挟んだ。「ただ、これを奪おうとしていたことだけは確かよ」。私は無事な方の手で服の中に手を入れ、水晶の鍵を取り出した。カエルが手を差し出し、瞬きをする。私はためらいながらも鍵を彼の手のひらに乗せると、彼はそれを注意深く調べた。


「奴らが欲しがっていたのは、これか?」と彼は言った。「理解できないな。ただの鍵に見えるが」


「そう思うわ」と私は答えた。「でも問題は、私がこんなものを持っていた覚えがないことなの。目が覚めたら、ただ手に握られていただけ」


カエルは何も言わずに部屋を出て行った。


「ちょっと!」私は叫んだ。「どこへ行くの?」


「すぐに戻る。ちょっと確かめたいことがあるだけだ」彼はカーテンの向こうに消えながら言い返した。「朝食は全部食べろよ!」。私は誰もいない戸口を睨みつけ、それからおにぎりを一つ掴んで口に押し込んだ。


「毒なら、もうどうにでもなれ」私は自分にそう言い聞かせ、一つ目を飲み込むと、次の一個に手を伸ばした。


三つ目のおにぎりを食べ終えた頃、カエルが戻ってきた。彼の手には、新しい銀の鎖に通された鍵が揺れていた。


「これなら、なくさないだろ」彼は私の後ろに立つと、優しく髪をかき分け、留め金をかけた。最後の一口を飲み込み、私は彼に礼を言った。ペンダントになった鍵は、素敵なネックレスに見えた。


「どういたしまして」カエルは言い、私の隣のベッドの上を指差した。「座ってもいいか?」。私は頷き、脚を動かして場所を空けた。


彼は私の目をじっと見つめて尋ねた。「少しは気分が良くなったか?」


「ええ、おかげさまで」私は静かに言った。「助けてくれて、本当にありがとう」


「気にするな」カエルは微笑んだ。「それが俺の仕事みたいなものだから」


「本当?」私は目を丸くして尋ねた。


「はは、いや」彼は笑いながら首を振った。「今まで、誰かを助けたいなんて思ったことは一度もなかった。本当は、ただのしがない店主さ。俺が売っているペンダントとかが、この辺りの娘たちに人気でね。まあ、いざとなれば、戦うこともできるってくらいだ」


「謙虚なのね」と私は言った。「私を襲ったあの男は、どうしたの?」


「あれは事故みたいなものだが、腕を折ってしまったかもしれないな!」カエルは叫ぶように言った。私は思わず冷や汗をかいた。彼は謙虚すぎたけれど、それが意図的なものではないことは何となくわかった。


「さて、今度は俺がいくつか質問させてもらう」カエルの口調が真剣なものに変わった。「君は、どうしてここに来た?」


「分からない。何というか、ただ気づいたらここにいたの」


「ここに来たことは?」


「いいえ…。この場所の名前すら、聞いたことがない」


「君は、どこから来たんだ?」


「もう言ったでしょ。アメリカ合衆国よ」


カエルは口を噤み、唇を引き結んだ。「しかし…」


「本当のことを言ってるの!」私は目に涙を浮かべ、泣きそうになった。「本当よ!もう、これ以上何か起こる前に、家に帰りたいだけなの!だって、ここが私の家じゃないことも、これが夢じゃないことも、もう分かっているから!」


カエルはベッドから立ち上がると、本棚へ向かい、革装の分厚い本を一冊取り出した。彼は再び私の隣に座ると、目的のページが見つかるまで頁をめくった。そして、開かれた本を私の膝の上に置いた時、私は息を呑んだ。


見開きのページには、色褪せた地図が広がっていた。そこには聞いたこともない都市の名前、見たこともない大陸や島々が描かれていた。しかし、何よりも私の目を引いたのは、右下に記された名前と日付だった。


「マサリ-5154」

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