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星々を渡った人と犬と猫の話

作者: 高田園子

 人間のアンソニーと犬のジョーン、そして猫のマーガレットは300年以上を支え合って生きてきた一族のそれぞれの末裔である。

 ソニー家がいつから彼らと付き合い出したかは諸説あるが、ソニー家の最も古い映像記録にも二匹そっくりな犬と猫が写っていることから、少なくとも地球時代からではあるらしい。


 ここ何世代か、ソニー家は個人所有の船でふらふらと人類圏から彷徨(さまよ)いだしては訳のわからんものを見つけて帰ってくる生活を続けていた。惑星や軌道コロニーではなく、船で生まれ育つものも増えていた。

 ジョーとマギーの一族も当たり前のように船に乗り込み、同じように子をなし、育て、死んでいった。


 何世代か前の時に、ソニー家の人間がばたばた死んだ事件が契機となった。非人類文明由来と思われる遺跡の発見に大喜びした彼らは、その回収の際にうっかり放射線を長く浴びすぎたのだ。マギーが時たましたり顔で指摘するとおり、ソニー家の人間は夢中になると細部が雑になることで知られていた。


 一通り大騒ぎして葬式を済ませ、再生炉から出てきた久しぶりのご馳走に舌鼓をならした後、ソニー家は船を回す手が足りなくなった事に気がついた。映像記録には当時の家長が名誉船長を勤めるマギーの先祖に「どうしよう」と真顔で尋ねる姿が残っている。そして心配そうに近寄るジョーの先祖の姿が。


 当時の家長がジョーの先祖をじっと見つめた後に「閃いた」のは公式な記録として残ってる。そして、ジョー家の遺伝子に手を入れ知性化を始めたのだ。マギー家については「なにか言いたそうな顔をしていたから」と続けて遺伝子に手を入れている。ソニー家の人間は夢中になると細部が実に雑になるのだ。


 こうして、人類圏が久しぶりに戻ってきたソニー家の船を見てみると、非人類文明由来の技術を持って、犬と猫を知性化して対等の友人として扱う謎の集団に変化していた。

 こりゃいかん、と当時の政治家と治安関係者が判断したことについては「仕方ないんじゃないかな」というのが歴史家の評価である。


 結果、当時の人類圏はソニー家の所業を批判し、非人類文明由来の技術放棄をせまり、遺跡の提出を命令した。現場で混乱があり、ジョー家の者が人類圏側要員に不当に扱われ暴力を振るわれた。

 船の評議会は紛糾した。ジョー家をからかうことが生き甲斐と目されていたマギー家の演説が決め手となった。

 こうして、彼らは人類圏に敵対した。星々を襲撃し、財貨を奪い、力を蓄え勢力を増してゆく。


 人間のアンソニーと犬のジョーン、猫のマーガレットは300年以上を支え合って生きてきた一族のそれぞれの末裔である。

 対等な兄弟であり、相談相手であり、銀河の共同統治者だ。


 人々は彼らを皇帝と呼ぶ。

以前SNSのX(旧Twitter)に投稿した話をなろうにも掲載。

https://x.com/noko_takada/status/1096543989874843648

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― 新着の感想 ―
楽しい短編でした。 どこか雰囲気が「人類補完機構」を思わせますね。
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