第1話 ゲート×迷宮×契約
ときにライトノベル、通称ラノベを読む人ならよくあるだろう。チートスキルで無双するお話や余り物スキルのシナジーで無双するお話などのいわゆるテンプレというものを
しかし誰が想像するだろうか、そのテンプレが現実に起きることを。そして最難関ダンジョンの最下層の下の奈落のさらに下の深淵を超えた神域を住処にするような頭のおかしい奴が出てくるなんて………
これは現実と虚構が溶け合った現代で無双する結構ぶっ飛んだ主人公の話
≠≠≠
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴が学校中に響いた
それもそうだ。怪物に殺され、食われているのだから
そして、恐怖は伝染していきほぼ全ての生徒が恐怖に支配され、あるものは暴れ回り、あるものは壊れたように笑い、あるものは泣き崩れ、そしてそんな中に壊れた笑いではなく興味や関心の笑みそ浮かべる少年がいた
少年は混乱の中「もしかして」と、ボソッと一言
「ステータスオープン」
そして、少年は開いたステータス画面を見て確信した。「これは現実でありゲームでもある」と
少年はすぐに家に向かった
息を切らし、家に着くと呼吸を整えてから玄関を開けた。見た目が変わってないことに少年はほっとする
少年は制服から黒の長ズボンに赤の半袖というシンプルな服に着替えたら勉強机にノートを広げた
ノートに今日起きたことを書き、今後の予定を書いていた。そして少年は庭に出て何かを探した。少年は庭にある倉庫の扉を開けた。そしてそこには地下へと続く階段ができていた
「あった」と少年はつぶやき階段を降りていった
開けたところに少年は出た
そこは闘技場のような円形の場所だった
すると闘技場にどこからか無気質な声が響いた
《神威迷宮に入場しました。人類初の迷宮入場者となりました。レジェンドクエストが発生しました》
「っしゃ!」
少年はガッツポーズをした
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レジェンドクエスト【神狼選択】
説明:神獣は同族に蔑まれ、追放され、ひとりぼっちになり全てを破壊しつくそうと暴走しています。あなたは巻き込まれてしまい、神狼と対峙しました。神狼の暴走を防いでください
クリア条件:一定時間、神狼を食い止める
クリア報酬:全ステータス10倍、神狼の外套、神狼の双剣
失敗時のペナルティ:なし
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そして少年が読み切ってからしばらくした後、闘技場の反対側に赤く光る魔法陣が出現した
少年は魔法陣を踏むと同時に姿が掻き消えた
魔法陣の先は森の中だった
少年は笑っていた
そして少年はここにはいない人物に向かって言う
「今がその時だよね、父さん、母さん」
その言葉と共に少年は真っ白な純白と黒と紫の混ざったような紫紺系黒のオーラが少年から溢れ出す
「『我が力を封印せし古の鎖よ、混沌と化す現代で生き抜くために今一度力を解き放ちたまえ!』」
その言葉を言い終えた瞬間、それに共鳴するように無気質な声が響いた
《神威迷宮にて別世界の力の因子を確認。異分子の排除を―――管理者の干渉を確認。却下、対象の排除を―――管理者の干渉を確認。承認、クエストランクがレジェンドからグランドマスターへ昇級します》
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クリア条件:一定時間、神狼を食い止める
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クリア条件:神狼の撃破
クリア報酬:全ステータス10倍、神狼の外套、神狼の双剣
↓↓↓
クリア報酬:全ステータス20倍、神狼の外套、神狼の双剣、スキルブック×2、万能系樹
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そして少年は"視た"
――――黒狼の過去を
――――蔑まれ、いじめられ、それでも生き抜いて、その先に救いがあると信じて
――――そして、二人の強者に出会った
――――一人は【勇者】と崇められる生を司る女神に加護を与えられた少年
――――一人は【魔王】と恐れられる死を司る女神に加護を与えられた少女
――――黒狼はいつしか2人と共に行動するようになり、魔物を倒したり、のんびりしたりした
――――しかし、人がそれを許さなかった。幸せな時間は終わりを告げ、少年と少女は黒狼と一緒に精霊界へ逃げた
――――しかし、そこでも執着して追ってきた者がいた。少年と少女は黒狼に別れを告げ、精霊王に黒狼を預け、追手に立ち向かう
――――その後黒狼が見たのは、少女を守り相討ちとなり、亡骸となった少年の姿、少年の死を泣き叫びながら悲しむ少女の姿
――――黒狼は怒りに呑まれ、全てを破壊する破壊をもたらす厄災となり、少女を残して、ひとつの世界に終焉をもたらした
――――そして少女は黒狼のしたことに責任を感じ、己の人生に幕を閉じた
――――取り残された黒狼は邪神となり、ひとり悲しく世界を渡っては破壊の限りを尽くすようになった
あまりにも悲しい出来事に少年の溢れ出すオーラはさらに膨れ上がった
『ワォォォォォォォォォォォォォン』
黒狼は遠吠えをし、少年に向かって突撃した
少年は動かずに言った
「『囚われなくていい、もう自由になっていいんだ』」
その言葉に黒狼は急ブレーキをし、興味深そうに少年の匂いを嗅いだ
『主から懐かしき気配と匂いがするのはなぜじゃ』
「それは僕の父さんと母さんが知ってるんじゃない?」
『主、名はなんと言う』
「彼方、如月彼方」
『キサラギ、主の父の名はなんという』
「父さんは龍我、母さんは久遠」
『リューガ、クオン。そうじゃったのか……』
「君は?」
『妾はライカ、じゃが今はもう使っておらん故、新しい名をくれんかのう』
「いいよ」
彼方は暫く考え込んだ
「よし、今日から君の名前はルナだ。よろしく、ルナ」
『よろしくなのじゃ。む?力が漲って来るのじゃ』
「あれ、もしかして名前の由来にちなんでパワーアップしちゃう系?」
『名前の由来とはなんじゃ?』
「ルナっていうのはローマ神話でのセレーネの名前で、月の女神と夜の女神として崇拝されてたんだけど」
『・・・・・』
ライカ改め、ルナは絶句していた
元来、ルナが元いた世界では神の名をそのまま使うなど愚の骨頂とも言える行為であった。なぜなら神の名を騙るのは神に敵対するも同然だったからだ
さて、そんなことは知らない彼方と放心状態のルナに対して無気質な声が響いた
《グランドマスタークエスト、隠しクリア条件をクリア。ボーナス報酬がクリア報酬に追加されます。隠しクリア条件が開示されました。また、次の睡眠時に神狼の種族を邪神狼から二段階ランクダウンさせ、天狼へと退化させます。さらに契約主の進化系樹と同期させます。以上でグランドマスタークエストは終了となります。お疲れ様でした》
『彼方よ、隠しクリア条件とやらが妾は気になるのじゃ』
「いいよ。ちょうど僕も気になってたからね」
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隠しクリア条件
第一条件:神狼を無傷で屈服させる――クリア
第二条件:自身が無傷でクエスト終了する――クリア
第三条件:神狼の記憶を視る――クリア
第四条件:一度も戦闘をせずにクリアする――クリア
第五条件:記憶の解放句を唱える――クリア
第六条件:以上の条件をヒントなしで一度のみでクリアする――クリア
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『うへぇ、なのじゃ』
「だな。これは鬼畜すぎるだろ。運営ミスってね?ってか、契約ってなに?」
『そうか、彼方はならぬのじゃな。契約というのはじゃな―――やってみた方がいいのじゃ』
「わかった。なにか使う?」
『いや、必要ないのじゃ。《人化》』
《人化》という言葉と共にルナは光りだして人へと変身した
「えっ、ちょっ、っ!!」
セミロングの黒髪に真紅に輝く瞳を持った人の姿へなったのだが何故か全裸だった。
しかもそのまま彼方に対してキスをした
「!?!?!?!?!?!?!?」
困惑しているのも束の間、ルナはキスをやめて言った
「契約は終わったのじゃ」
「えっ、、、、と」
「本来手の甲でいいのじゃが、な」
「え?」
彼方の顔は湯気がたつほど真っ赤に染まっていた
「からかいすぎたかのう、、、、、」
「え、あ、え」
「ファーストキスだったのじゃぞ(ボソッ)」
「――――」
「か、彼方?」
――――バタン
彼方は「ふしゅー」と効果音がなりそうな状態で倒れてしまった
そして、彼方の右手の甲にはしっかりと月と星の紋章が浮き出ていた
余談:彼方が起きたのは翌日のお昼だったとさ