表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
2-2-4 激熱対抗戦編 Ⅲ 【抱えた過去】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/225

第167話 『戦いてェから戦ってんだ!』

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

 自然区の大森林の中、木々が薙ぎ倒されポッカリと空いた空間での空中戦。ハナさんの魔法によって、追っ手を叩き落とそうと揺れる枝々。軽々と上下に躱しながら、一方的に追い続けていたミル姉さん。そんな彼女の動きが悪くなったのが、ほんの数秒前のこと。


 今では完全に()()()()()()()()()()


「テメェの仕業だな……アリエス・レネイトォ……!」

「私みたいなのからは、目を離しちゃ駄目ってこと……!」


 双方笑顔で話しているが、どう見たってそんな状況じゃあない。ふと目についたのは、まるで不自然に辺りに散らばっていた機石装置(リガート)の数々。


「ハナちゃんの魔法を避けるのに、上下に動いてくれたおかげで――簡単に沢山の糸が絡んでくれたわ」

「糸……?」


 自分とムラサキが木々の間で戦っている間に、アリエスが仕掛けていたのは糸?


 注意深く見ても、ただミル姉さんが浮かんでいるようにしか見えない。が、魔力探知の魔法を使うと――。辺りに、細い細い魔力の糸が張り巡らされているのが見えた。そしてそのうちの数十本――いや、何十本がミル姉さんの身体に絡まっている。


「なるほどなァ……器用に隙間を縫って飛んでたってわけかい」


「……あんまりこういうのは自分の(しょう)に合ってないんだけどね。他人から借りたアイデア、みたいなものだし――」


 これだけ手の込んだ罠……なんとなく、誰のことを言っているのか分かった。こういった小狡い方法で仕掛けるといったら、同学科のエレン・ガゼットが印象に強い。まぁ、少し前に絡まれたからなんだけども。


 それに――糸。糸の使い方といえば……ヤーン先輩だ。

 今、この瞬間に自由を奪われているのは、ルルル先輩でもアリエスでもなく、ミル姉さんただ一人。グルグル巻き、とまではいかなくとも十分な効果を発揮していた。


「こんなもんで……!」

「一本一本は簡単に千切れるほど弱いものでも……。幾重もの束になれば、簡単には切れないほどの強靭さを持つ!」


 ギリギリという音が、少し離れたここまで聞こえてくる気がした。

 やばい……少しずつ動きが――


「やっぱり駄目か……。まぁそうなるよね。それじゃあとっておきの――っ!?」

「――ずっと縛り付けていられると思うほうが――どうかしてんだよォ!!」


 ――と思った次の瞬間には、弾けるように左腕が動く。


「アリエスさんっ!!」

「……捕まえたぞ」


 腕を捕まれ、逃げられない。

 ロアーまでもが、その場に固定されて。


「てめぇらも道連れになっとけ。嫌なら止めることだな」


 今の一瞬でミル姉さんの身体に取り付けられた、小型の機石装置(リガート)。機石に足だけ生やしたような、そんなシンプルなものだったが――。それがなんだか、怪しい魔法光を放っている。


「――――っ!」


 幾つもの魔法の糸に絡め取られて、身動きが取れないミル姉さんと。そんな彼女に掴まれて、逃げられないでいるアリエス。振りほどこうとしても、びくともしないらしい。


「無駄無駄無駄ァ――! さぁ、どうすんだ!!」 


 機石銃から至近距離で何発も撃ち込まれて、それでもミル姉さんはものともしない。何をしても効果がない。――やがて、アリエスは『はぁー』とため息を吐いて。


「……ハナちゃん。着地はしっかりとね!」

「え――」


 とんと押され、ハナさんの身体が機石バイク(ロアー)から滑り落ちる。


 ――おい、おいおいおい! 俺もヒューゴも遠い場所だぞ。誰が受け止めんだ……!! と、思った次の瞬間には魔法でなんとか着地を済ませて。


 それを確認して、アリエスの声は不敵に満ちていた。


「……ミル姉さんさえ動けなくなれば合格間違いないもの。多少の傷みなんて、安いものでしょっ! それに……一度起動したら止まらないしね。あはは……」


 ……これまでにも何度か見た光だ。また爆発すんのかよっ!!


 至近距離で何発も魔力弾を撃ち込んでも、ミル姉さんがその手を離す様子はない。ハナさんは避難させたからといって――このままじゃ、アリエスが爆発に巻き込まれてしまう……!


「……ハッ。こんなもんで動けなくなるとも限らねぇがなァ」

「イチかバチかは嫌いじゃないの。だって――大概は良い結果で終わるもの」


 にっかりと笑うその表情に、仄かな色をした水色の魔法光が激しく当たって。次の瞬間には、ミル姉さんを中心にして大爆発が起きていた。空気がビリビリと震え、木の枝という枝が大きく揺れる。


「アリエスっ――!」


 こちらの方に吹っ飛んでくるっ!


「くっ……!」


 ……今度こそは手が届く! 木にぶつかり、遠くへ飛ばされなかったのが功を奏した。ボロボロになって落ちてくるアリエスを前に、なんとか走り出すことができた。


 まだ腕に痺れが残っている。それでも、手を伸ばせ……!


 二歩、三歩と走り、なんとか受け止めて。その重さを、両の腕でしっかりと支える。ぐったりとはしている。意識はあるのか。ドクン、ドクンと不安で心臓が脈打っていた。


「おい……! 死んじゃいねぇよな……!?」

「……ハァ……ハァ……――」


 息は……していた。安心に大きくため息を吐く。


 開始から何時間が経っているんだ? あとどれぐらいで終わる? ヴァレリア先輩はここに現れるのか? 今いる人数で、今の状態で、魔物から身を守るだけなら十分保つ筈。合格は決まったも同然。


 誰しもが終わったと思った――筈だった。


「さぁて……あらかた動けないようになったみてぇだなァ……」」

「まさか……! まだ戦えんのかよ……!!」


 ところどころから、煙が出ていた。

 今まで見たことのないぐらいに、ボロボロだった。

 それでも――左腕は健在。

 機石装置(リガート)から離れた位置にあったからか。


 ――まだ、驚異は去っていない。……去っていない。

 ……無茶だ。こんなのはもう――!


「どうして……こんなに無理をしてまで戦うんですかっ!?」

「ハナさん……?」


 誰もが絶句していた。その中で叫んだのは、またしてもハナさんだった。


「もう……みんなボロボロじゃないですか……! 止めてください……! これ以上続けて何になるんです!?」


 今は戦いの最中だ。『ナニを言ってんだ』と、ミル姉さんは笑う。

 いまや暴走機関車のように、煙を吹きながら。


「戦いてェから戦ってんだ! 戦わせてェから戦ってんだ!! 戦うことに意味があンだ! ボロボロになったその経験を、積み重ねることがっ! 戦いに身を置く奴の命を延ばしてくんだ!」


 どう考えても個人的な、無茶苦茶なスパルタ理論である。ミル姉さんの強さを見る限り、あながち否定できないのかもしれない。強くなるため。強者であるが故なのかもしれない。


 だけれど、それで死にかけても本末転倒。できることなら、これで終わりにしてほしい。ハナさんの叫びにも、同感だった。だが――終わらない。許されない。


「テメェも戦うまで終わらねぇぞォ! ハナ・トルタッ!」


 ハナさんが叫んだ。目の前で起こる理不尽に、不条理に。

 力だけが物を言う、そんな場所の中心で。


「もう――私の"仲間”を傷つけないでくださいっ!!!」

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ黒猫用挿絵『タイトルバナー』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ