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ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
2-2-2 激熱対抗戦編 Ⅰ 【準備期間】

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第151話 『死なない為に訓練すんだろ!』

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

「やっぱりよぉ、ここは連携だって連携!」


 落ち込み気味のハナさんとは対照的に、ヒューゴは有頂天だった。有頂天、まさにこの言葉が一番しっくりくる。新【真実の羽根】に書かれた評価でそれなりに悪くなかったから、なんだけども――別に優勝したわけでもないのに、いいのかそれで。


 ……ハナさんの件は伝えてないから、仕方ないことなのだけれど。


「そうと決まれば特訓に行こうぜっ!」

「行こうぜって、どこにだよ……」


 すっかりと持ち上げられてしまって。それなら期待に応えるしかないだろ、と先日からなにやら熱心にしていたヒューゴが、今日の朝イチにそんなことを言っていた。


「決まってるだろ! 先に行くから、お前らも早くこいよ!」


 走り出したヒューゴを追うようにして、グループ塔を出て、中庭を横切って。どこに向かうのかと聞いても、『一つしかないだろ!』とマトモな答えは返ってこない。浮かれているとホント周りが見えないというか、単純バカというか。


 もちろん、アリエスとハナさんは少し遅れて付いてきている。先頭を走るヒューゴと女性陣の間をキープしておかないと。


「あのバカ、少しは待ちなさいって……!」

「ど、どこに向かっているんでしょう? このままだと、ヒューゴさんがはぐれてしまいます……!」


 ……いや、この方向からして、だいたい予想はついてきた。

 北西にある自然区へと向かう道。その途中には――?


 嫌な予感が頭をよぎった。


「――おい、ヒューゴ」


 自分の判断が正しければ、ヒューゴがそろそろ速度を落とすだろう。――案の定そうなった。ヒューゴに追いついたのはいいが、目の前に誰か居る。


「あ゛ぁ……? 全員勢揃いで来るのは初めてじゃないか、お前らァ……」


「ひぇっ……」

「うわぁ……」


 自然区の手前に用意された、小型闘技場の上。倒れた石柱に腰掛けていた人物。特別訓練講師としているミル姉さんが、こちらを見つけてゆっくりと立ち上がっていた。


 ――暴れん坊。戦鬼。破壊者。いつだって戦う相手を探しているような狂戦士が、目をギラギラさせながらコチラを見ている。


 血の色を帯びたような真丸の紅い双眸と、(フカ)のようなギザギザの歯。

 髪は短めの金髪に、服は黒いゴスロリドレスのようなもの。


 こんなナリでも、学園の中ではトップクラスに強い。

 なんたって全身兵器の機石人形(グランディール)。伊達に講師に選ばれていない。


 強い相手と戦うのが一番の修行だと、そう言われることもあるけどさ。相手を考えろという話しで。自分もいくらかミル姉さんに鍛えられている節もあるし、そりゃあ効果があるのも理解している。でも――


「四対一か? いいなァ、血が滾る。まぁ、血液なんて流れてねぇが」


「今日こそは勝たせてもらうぜ! ミル姉さん!」

「人数が増えたぐらいで勝つ気だなんて、舐められたもんだなァ、オイ……!」


 ミル姉さんの、この性格からして。そして、四人を相手にするという状況からして。向こうも手加減一切なしでくるに違いなかった。


「ちょっと……本当にやるつもりなの?」

「もうここまで来たんだ。だったらやるしかないだろ……」


 なんだか断れそうな雰囲気じゃないしなぁ……。

 逃げでもしたら、死ぬまで追ってきそうだ。


「集団戦ってのは、まだマトモに教えてなかったかもしれねぇなァ……。――あぁ、やろう! 今すぐやろう!! 全員上がってこォい!!」


「ハナさん……大丈夫か?」

「……私も、頑張ってみます」


 まさかまさかのミル姉さんを相手にしての戦闘訓練。いままでだって、四人で連携を取りながら戦ったことは何度もある。その時のようにやればいいだけだ。


「――……あれ?」


 あちこちに石柱の転がる闘技場に上がり、戦闘態勢に入っているミル姉さんを見て、ぼんやりと違和感を覚えた。……なんだろう、これは。


「装備が……殆ど無くなってる?」


 肘の刃だったら既に出しているはずだし、両腕から魔力を打ち出すために機石を装填する様子もない。もしかして手加減か? それならそれで、ありがたいのだけれど。


あの馬鹿野郎(学園長)に没収されたんだよォ……! タマの取り合いのねェ戦いなんて、退屈以外の何物でもないってのに! なぁ! そうだろうが!!」


「く、訓練で殺されるわけにもいかないしな……」


 わりと冗談抜きで、一定のラインを越えたら殺しにかかってくるからな。

 まだ死んでないからいいとはいえ、正直やめてほしいところではある。

 ……学園長、グッジョブ。たまにはいいことするな。


「死なない為に訓練すんだろ! 死ぬ気でやって、死なないようにすんだろがァ!」

「言ってることが無茶苦茶だぁ!?」


 そこで死んでしまえば元も子もない気がするけど……。

 いくら蘇生の方法があるからといってもあんまりだ。


「――まァ、武器が無かったとしても、だ。テメェらヒヨッコの集まりじゃ、私に勝つことなんて出来ねェが。格上との戦い方、身体が覚えるまでみっちりやるぞ。オラ、位置に付いたらさっさと始めろよォ!」


 そうして、ミル姉さんの咆哮(?)と共に訓練が始まる。

 ……とはいえ、まずいの一番に自分が飛び込むことからだけども。


 ――全力で。真剣勝負として、取り組む。

 全力で越えなければいけない壁であることは間違いないのだから。

 今まで戦った何よりも、誰よりも強いものとして置く。


「ふっ――」


 ナイフでの攻撃が通らなくてもいい。当たりさえすれば、そこから魔力を叩きつけるだけ。なんだけども――


「なっ……!?」

「開幕から振りが大きい……。反応できない程の速度でもねェ」


 器用に右手の爪でナイフを挟まれていた。

 力の流れを止められ、魔力で吹き飛ばすことができない。


「リグ・ミット、イン・ディジェクトォ!」

「――テメェも。そういう詠唱は相手に聞こえないタイミングでするもんだぜ。まともに受けるのが危険だと、馬鹿でも分かる」


 背後からのヒューゴの攻撃を難なく避けて。そのまま鎚の柄を踏みつけた。地面に激突した鎚の頭が爆発を起こし、闘技場の一部を砕いて陥没させる。


 ――まただ。まともに受けずに流した。


 表面上の荒々しさからは全く窺えない、この丁寧な戦い方。状況を素早く、適切に判断するこの圧倒的なまでの戦闘の経験値。死角からの攻撃も、全く見ずに受け流すほどの反射神経、そして体捌きの技術。


 一対多数の戦闘の立ち回りは、クロエと戦った時によく見ているけども――毎度目を疑いたくなる。今は装備をあらかた外しているけども、それでも決定打を与えるには程遠い。


「――今だっ! ハナさん!」

「はいっ!」


「はいじゃあないんだよ、はいじゃあよォ……!」


 ハナさんの妖精魔法によって、地面から植物の幹やツタが湧き出てくる。これで相手を拘束するのが、いつもの流れだったが――


「うおっ!?」

「くっ……!?」


 鎚を引き抜こうとしたところで解放され、よろけるヒューゴ。そこに自分も勢いよく投げ飛ばされる。足元から伸びていくツタも、軽やかに身を翻すミル姉さんを捕らえることができない。


 速度も、量も足りない。簡単に捌き切られてしまう。

 なにも無い所から生やそうとするにも限界があるか……。


「いちいち声かけあうのが連携だと思ってんじゃねぇだろうなァ!! 前衛が終わるの見て、はい後衛の出番です――だなんて、悠長なことしてんじゃねぇぞ!」


「つ、強ぇ……!」


 ――どうやら、戦闘はここからが本番らしい。

 それまで様子見だったミル姉さんが、一転攻勢に出始めたのだった。

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

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