表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
2-2-1 学園七不思議編 Ⅱ 【紅い月と時間旅行】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/210

第141話 『“特別なこと”というのは』

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

「で、どこに行けばいいんだ!? 中庭か!?」


 学園の敷地内にある噴水といえば、中庭の大きなものだけ。前にミル姉さんが盛大にぶっ壊したやつだ。翌日にはすっかり元通りになっていたけど。


「ルルル先輩も、『現物を観察するのが調査の基本だ』とは言ってた気がするけど……。もう何度も見たことがあるものだしなぁ」

「どこからどう見ても普通の噴水だし。そんな凄い感じはしないよね?」


 噴水を調べて簡単に分かるものなら、とっくに先輩が謎を解き明かしてるはずだ。そうじゃないということは、もっと別のアプローチが必要ということである。


「実際に過去に飛んだ人の話は聞けないでしょうし、文献だとかを調べた方がいいのかも……」

「そんなら図書館だな! 見てろよ! いまこそ俺の直感が光る時がきたぁ!!」


 猪突猛進に部屋を飛び出し、図書館へ向かうヒューゴ。

 まだどうするかを話し合っている最中だというのに……。


「ヒューゴさん……」

「なんか……残念を通り越して哀れだね……」


 あまりの必死さに、全員が溜め息を吐く。


 その熱意を試験前に発揮していればなぁ。こんな、藁をも掴むようなことをしなくて済んでいただろうに。得てして、当人だけが気が付いていないんだよな。


「わ、私もヒューゴさんについて行きますね……!」

「お願いハナさん。ヒューゴだけじゃ、何を調べるのかも分からないだろうし」


 ……ヒューゴは戦力として考えない方がいいだろうなぁ。


 ヒューゴを追ってハナさんも図書館へと向かい、残ったのはアリエスと自分の二人。こっちはせめて目標を絞って行動したいところだけど――


「それじゃあ私達は……【真実の羽根】に行こっか」

「う゛っ」


 半ば予想していたけど、やっぱり避けられないよなぁ。ぶっちゃけ、図書室よりもこっちの方が確実に何かは得られるだろうし。アリエスがそこを見逃す筈がない。


「う゛ってなによ。ルルル先輩だって、その噴水について調べてたんでしょ? 何事も、まずは動かないと始まらない。そこはヒューゴを見習わないと」

「あ、あぁ……」


 まごまごしているうちに、アリエスに押し切られるようにして【真実の羽根】へと向かうことになった。……あいつらと鉢合わせしたくないんだけどなぁ。






「なんだ、誰もいないじゃない。それじゃあ私達は私達の調べ物をしましょ」


 部屋の棚をざっと見ただけでも、大量の本で埋め尽くされている。学園に通う生徒の情報、は流石に個人情報だからと持っていったのだろう。一部分だけがぽっかりと不自然に空いている。


 二手に分かれて、上から順番に探してみると――


「七不思議に関しては……あったあった」


 きっちりとした性格ゆえか、しっかり分類されていたので、驚くほどあっさりと見つかった。その中から、“過去に戻る噴水”に関しての先輩のメモ帳を見つけ出す。


「探していたのは、これ?」

「思いっきり表紙に書いてたし、簡単に見つかったな……」


 自分たち以外に触れる人もいないからだろうけど。そんなことはさておき、中身をさっそく確認しよう。中は先輩によって書かれた綺麗な文字が並んでいた。


『これは私が一年の頃に学園の先輩方から聞いた話をまとめたもの』


 どうやら学園に来てすぐに取り掛かったものらしい。

 流石に一年の立場では依頼を出すのも憚られたんだろう。


 中庭の噴水についても、しっかりと特徴を押さえた、細微なイラストで描かれていた。……ほんとなんでもできるな、あの人。あんな探偵まがいなことをやっていたけれども、どんな道に進んでも上手く働けていたんじゃないだろうか。


 肝心な七不思議の中身はといえば――


「数十年に一度、噴水の水が光り輝く夜があるらしい。その時に飛び込むと、泉の精と話ができて、どの過去に飛ぶのか選べるんだとか」

「い、泉の精かぁ……」


 読めば読むほど眉唾感が強くなってくるな。結局は生徒の間で盛り上がった噂話、適当に設定を盛り込めばそんな話になるだろうな、という感じ。誰かが誰かから伝え聞いたものじゃ、どうまとめたってこの程度が限界だろう。


「最後にそれがあったのが二十年前って……まだ学園ができていないよね? もうそこから嘘だったってこと?」

「……いや、続きがある」


『誰かが適当な噂を流しただけなのかもしれない。でも世界中にも、その地域に根付いた伝承や昔話という形で似たような話はあるみたい。これについても、おいおい調べていかないと……』


 まぁ確かに七不思議というよりは、伝承・伝説といった方がしっくりと来る。そもそもの規模が違うし。


 昔話でいえば、湖や泉はそういったものの宝庫だったな。少なくとも、俺の前世ではだけれど。泉の女神が木こりの斧を拾い上げたり、若返りの泉って話もどこかで聞いたような気がする。


「んー……?」

「……どうした?」


「噴水じゃないけど、確かに似たような話なら聞いたことあるかも。といっても、昔話みたいなものだけど」


 ……この世界にもやっぱりあるんだな、そういうの。自分の生い立ちが生い立ちなので、そういうった話は全く聞かされてこなかったわけだけど。


「私が子供の頃に聞いたのは、“赤い色をした泉に飛び込んだ男の人の話”だったかな。人生で沢山嫌なことがあって身投げをするつもりが、何もかもが起きる前の時間に戻ってきて成功する話」


 赤……赤か……。

 赤潮? けれどありゃあ海だからなぁ。


 血? いや、流石にそんな物騒な話じゃないとは思うけど……。そういや、大昔には“若さを永遠に保つため”と人の血を浴びていた女貴族がいたな。でも身投げするような男とはかけ離れてるし、それとは関係ないだろう、きっと。


「――ともかく。『“過去に戻れる”類の話がある』という事実は、確かに存在しているってことだ。それ以上でもそれ以下でもないけど」


 メモ帳の最後のページには、こう書かれていた。


『でも残念。きっと私が学園に通っている間に条件が整うことはなさそうね。この記録を見た誰かが、いつか解き明かしてくれるといいんだけど』


「…………」


 きっと自分たちがその思いを受け継ぐんだと。

 心の中で誓いながら、メモ帳をもとに戻した。


「なんで数十年に一度なんだろ」

「……前に学園長にしてもらったアーティファクトの話を憶えてるか?」


 アリエスがスカイレース大会で優勝して、大きな宝石をもう一つ欲しいとなった時の話である。流石に学園長のコレクションの中でも、該当するものが無いということで出されたのが――アーティファクト。“奇跡”を生み出す魔法の道具。


「映ったものを増やす不思議な鏡のことだよね。あれが確か、魔力が溜まるのが一年に一度って言ってたっけ。それが今回の噴水だと、数十年かかるってこと?」


 噴水自体もどれぐらい前に出来たものかは分かってないし。そうなると、そんなに昔から魔力を溜めようが無いわけで。土地だとかそういうものにも適応されるのなら……可能性もあるかもしれないけど。


「……まだそれがアーティファクトだと決まったわけじゃないけどな」






 ――で、合流した自分たちは結局噴水の前へ。


 少し白っぽい石で出来た、大型の噴水。別に女性の石像だとかそういうのは無い。強いていうなら、中央部の柱にある細工がアクセントというところだろうか。縦長の長方形が幾つも並び、間々には黒い石がこれまた小さい長方形で嵌め込まれている。


 ……例えるなら、ピアノの鍵盤に近いか?


 とはいえ、こんなことを思うのも自分ぐらいで。他の三人は縁に腰掛けて、噴水の水に手を浸してみたり、周りのフチを撫でてみたり。いろいろとおかしな部分はないかと調べながら、情報の整理に勤しんでいた。


「ダメだなー。そんな簡単には見つからないってことか。やっぱり学園の七不思議、手強い相手だぜ……」


 そりゃあ、図書室で学園七不思議について調べたところでマトモな情報なんて出てこないだろう。もっと遠回りな探し方とか、必要あるんじゃないだろうか。


「全く関係なさそうな部分が、意外なところで繋がったりするからな。とりあえず、ざっと情報を並べてみよう。図書室組は七不思議以外ではどんなことを調べたんだ?」


「それが……あの……」

「……?」


 申し訳なさそうにするハナさん。別にハナさんはヒューゴの舵取りを任せてたんだし、調べ物に関してはそこまで気にする必要はないと思うんだけど……。


「ヒューゴさん、途中で寝てました」

「……ま、期待してなかったけどね」


「神様でもいて、パパッと時間を巻き戻してくれねぇかなぁ」

「そんな都合のいい話があるかよ」


 案の定、というやつだった。

 こういう時は絶対に期待を裏切らないな、こいつ。


「それでですね、私……。きっとローザ先生なら、学園の昔のことを知ってると思って聞いてみたんですけど……」

「お……?」


 そういえばその手があったか。学園には何も生徒しかいないわけじゃない。生徒の何倍も生きている教師ならば、きっといろいろな知識を持っていることだろう。それが図書館の主であるローザ女史ならば尚の事。


 少しつまらない結果だけれど、一発で解決するんじゃないか……?

 ――と思っていたけれど、そう簡単にはいかないらしい。


「『この学園はそんなに前からは存在して無いし、うちの噴水にそんな伝説は無い』と言ってました……。ただ――」


 そう言ってハナさんが取り出したのは、ローザ先生に渡されたというメモ書き。探し物をするにあたって、何かしらのアドバイスをしてくれたようだった。


「“一定周期”ということには、必ず意味があるんだ、と。“特別なこと”というのは、“特別なこと”が相互的に関係しあって起きることが殆どなんだ、って。私にはよく分からなかったんですけど……」


「特別なこと、ねぇ……。……あ――」


 そういえば最近聞いたばかりじゃないか。


 ――数十年おきに起こるという、それはそれは特別な現象。

 みんなに協力を仰いだそもそもの理由。元凶とも言って良い。


「……“赤い月”って、あと何日後の話だ?」

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ黒猫用挿絵『タイトルバナー』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ