おまけ 必殺っ!炎の料理人!
毎日、朝の8時台に投稿予定
たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です
住民の家でこの上なく不快になる話を聞いて、宿へと戻る道中。
「川で魚獲ってきたぜ! あとで見て驚くなよ?」
「美味しい果物や木の実もありましたよー」
いいタイミングで、別行動をしていた食料調達班と合流した。
「わ、なんか別れた時よりも、装備が豪華になってない……?」
ヒューゴの肩には、小さな木のカゴが担がれている。
……あぁ、ハナさんが作ったのか。
「食料は十分みたいだな」
カゴがしきりに揺れているのを見る限り、よほど活きの良いのを獲ってきたんだろう。……どうやって獲ったのかは聞かないことにする。
「そちらはどうでしたか?」
「んん……。それなりかなぁ……?」
ハナさんの問いに、アリエスが言葉を濁す。
流石に『ハナさんまで村の住人から嫌悪の目で見られている』だなんて言えないだろう。別にそこで不安にさせる必要もないだろうし。最悪の場合は――自分が正体を表してでも黙らせてやる。
「――さて、日が暮れると動けないし、飯にしてあとは休まないか?」
「さんせーい!」
「おばちゃん、食材持ってきたぜ! 調理場貸してくれよ!」
料理が出ないのなら、自分たちで用意する。それなら文句は言われないだろう。これで空腹のまま、夜を越す心配は無くなった。そう思っていたのだけれど――
「……すまないね。カマドの機石の調子が悪くて、貸そうにも使えないんだ」
「はぁ……」
……またかよ。今度は使わせたくないからってカマドを壊したのか?
どうやら、とことん嫌がらせをしたいらしいな。
「どうしましょう……?」
「教会に持ってくか? いや、アリューゼさんの家でも……」
ひそひそとハナさんと相談していると、弾かれたようにアリエスが動いた。
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
「え――」
調理場のカマドの前にしゃがみ込むと、あちこちと手を突っ込んで調べ始める。数分後に機石を取り出して、何やらカチャカチャとしたかと思うと――なんと、もう修理は終わったらしい。
「なーんだ。中の機石が古くなってただけじゃない」
「――っ」
パンパンと手袋に付いたススを払い落とし、絶句する女将を前に自慢げにそう言うアリエス。
向こうは知らないから驚くのも無理はないが、ウチのアリエスは学園でも(たぶん)優秀な部類に入る機石魔道師だ。一家庭で使われているような、日常生活用の機石の修理など、お茶の子さいさいだった。……初めて見たけど。
「それじゃあ、あとは料理するだけね」
「――で、誰がするんだ」
ちなみに、俺は料理なんてできない。そりゃあナイフは扱えるから、肉も魚も捌くことはできるが、それ以降の調理についてはサッパリである。
宿屋の主人たちには頼れない。となると、他の三人のうちの誰かに頼むことになるんだけど……。
「あー、私は魚を捌くのとかは無理かなー、あはは……」
『細かく解体したくなっちゃうから』とか言っていた。猟奇的か。
「私は……お肉もお魚も食べられないので……」
菜食主義ってやつか。兎の亜人ということで、食べ物の好みも偏ってくるのか?
となると、残りは一人――
「俺の出番だな! よっしゃ、任せとけ!!」
「……不安だなぁ」
「――とっても美味しいです……!」
「お前……料理できんのかよ……」
学園の食堂で出てくる料理に比べると、味は多少落ちるけども――それでも、“料理”としてしっかりしたものが出てきたのは意外だった。魚の白身には均等に火が通っているし、表面はカリッと、中はふっくらとしている。
「当たり前だろ! 料理は火加減が命なんだぜ!」
「へー。なんでもかんでも最大火力じゃないんだ」
「当たり前じゃねえか。焦げるだろ、そんなことしたら」
ヒューゴの口から珍しく正論が飛び出した。
「むぐむぐ……。火力もそうだけど……。味のバランスも丁度いいよね」
「ハナさんの採ってきた食材のおかげだな」
彼女の採ってきた食材に香辛料も含まれていたし、ピリリとした辛味が魚の旨味を引き立たせていた。ナッツのような木の実も、オイルと調味料であえていて、食感と共にいいアクセントになっている。
「んぐぐ……意外に美味しい」
半分バカにしたような口調だったけども、アリエスも料理の腕を最初から認めているようで。小さく呟くその様子は、驚きの中にほんの少しだけ悔しさが混じっているようだった。
「なんで今まで料理しなかったんだ……?」
――思い返せばどの街へ訪れたときも、宿屋や酒場の料理で済ませたり、携帯していた食料で済ませていた。ヒューゴがここまで料理ができるなら、厨房さえ借りられれば毎度満足のいく料理を堪能できたわけで。
……まぁ、頼りきりなのも悪いんだろうけど。それでも、文句は言っていられないと我慢して食事を済ませたことは一度や二度ではない。
「食堂で、あんな美味ぇ料理が出てくるからよ……」
そこで『自分の料理の腕なんて、まだまだだ。人に振る舞うにはまだ早い』と感じたらしい。……いや、十分過ぎるだろ。
「今度からちょくちょく頼むかもな……」
「マジでか……」
最初の方は珍しく『そんなことねぇって……』と謙遜していたけども、アリエスやハナさんも賛同したあたりで、いつもの勝ち気が戻ってきたらしい。
「っ、任せとけ! 火を使った料理なら、いつでも作ってやるぜ!」
――文字通り、炎の料理人という称号がぴったりだった。
ここに来て新しい発見だな、これは。
「まだまだ知らないこともあるもんだねぇ」
「そうですねぇ……」
そうしみじみと、他人への理解みたいなものを噛み締めながら。そして料理に舌鼓を打ちながら。四人で今後の予定を話し合ったのだった。




