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ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
1-3-3 アリエス編 Ⅱ 【レース開幕!】

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第94話 【ごめんね無理させて】

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

 ――洞窟の中はそこまで複雑じゃなかった。


 たまに大小様々の横穴が開いてたりして。間違って飛び込んだりしないよう、誘導用の明かりも灯っているし。迷って帰ってこれなくなる、という事態には、よっぽどのことがない限りならないと思う。


 あと気を付けないといけないのは、洞窟内での障害物。天井から床までまっすぐ伸びた柱は、左右に避けて。ツララみたいに伸びている鍾乳石に引っかからないよう、高度は上げすぎないように。


 思っていたよりも広い空間だし、速度も出せそうなんだけど――困ったことに、機石バイク(ロアー)の調子がそこまで良くなかった。


「頼むよ、頼むよー。いい子だから、もう少しだけ保って」


 あんだけ岩がゴロゴロと落ちて来る中を、無理矢理に通り抜けた代償がこれだった。私自身が怪我をしても、気合で我慢できるけど――この子はそうはいかない。


 内申では焦りながら。おっかなびっくり、出力を上げていく。


「どんどん奥へと行くけど……。どれだけ進めば出口に出るんだろ」


 最初は『独走状態だよねっ!? やりぃ!』ぐらいにしか思っていなかった。……けど、たった一人でこの閉塞感の続く空間を飛び続けていると、ほんの少しだけ心細い。


 機石装置(リガート)で中を照らしているのが功を奏しているのか。湖のときみたいな、信じられないぐらい危険な魔物が出てこないだけ、まだマシなのかな。






 ――そうして。どれくらいの時間を飛び続けたのか。実際はそうでもないのだろうけど、丸一日飛び続けているんじゃないかってぐらいの疲労感。自身の感覚がおかしくなりそうだった頃に、やっと外の明かりが見えた。


「やっと出れたぁ!!」


 出口は流石に崩れていなかった。当たり前だけど。


 まず一番に気になるのは、レースの状況。前方遠くを窺ってみるけど、そこに誰かいる様子もない。ということは、私が先頭なのだろうか。回り道のコースではどうなっているのだろう、と見てみると――


「――っ。 ココさんとトト先輩……!」


 緑色の髪と、鳥型のゴゥレムが二セット。凄い速度でこちらへと迫ってくる()()()()。二人の他にあと一つ、もっとよく見て確認したかったけれど、そんな暇は無い。


 ――飛べ、飛べ、飛べ! もっと、もっと早く!!


 これでもわりと出していた方なんだけど、更にほんの少しだけ出力を上げる。さっきまでは少し揺れているぐらいだったのが、ガタガタと音を鳴らしての振動に変わり始めた。


 ……お願い、もう少しだけ!


 トト先輩も、ココさんも、あの調子だと完全に本気になっていた。

 喧嘩しながらじゃ優勝できないと、そう判断したのかな。

 ……焦り。きっとそう。私も同じものを感じている。


「――見えたぁっ!」


 まだ距離は遠い。でも、小さいけど確かに。

 あれは、自分たちがスタートしてきた場所だった。


 ぐるっと一周、自然区の中を回ってきて、その終点が近づいている。

 後ろからはグイグイと追ってきているに違いない。逃げないと、全力で。


「ごめんね無理させて……。でも、もう少しだけ頑張って――!」


 無理なのは十分に分かっている。部品の方が耐えられなくなる程の魔力の放出。いまこの場にじっちゃん先生がいたら、ゲンコツの一つでも落ちてくるに違いない。


 ……ごめん。ごめんね。まだ、私の無茶に付き合ってもらうから。

 この大会が終わったら、うんと大切に整備するから。だから――


 だから、この瞬間だけは、決して諦めないで。


「私は……負けるわけにはいかない!」


 腰のベルトに取り付けているホルダーから、工具を二本取り出す。いつも整備に使っている、部品と部品の間を繋ぐ魔力を遮らないように調整された、機石魔法師(マシーナリー)専用の工具。


 一見ヘラの様にも見えるけど、持ち手から先端にかけて特別な鉱石が付いていて、持ち主の魔力を伝えることができる。先の方が軽く曲がっているそれを――車体を覆う外殻と外殻の隙間にねじ込んだ。


 ……大丈夫、ここから先は直線一本。障害物も全く無い。


 内部を守る必要はもうないのだから、ここから先は防護用の外殻なんて重しにしかならない。


 ――工具にも過剰に魔力を流し込む。


 部品を繋いでいた魔力を()()()()()()()、そのまま一思いに引き剥がした。まずは後方から。そこから一枚ずつ丁寧に、なおかつスピーディに。左右に一枚ずつ残して、それ以外の全ての外殻を順番に剥がしていく。


 落ちた部品は……先輩たちならきっと、避けてくれるはず。


「――はぁ……まだ、もうひと踏ん張り……」


 ドクン、ドクンと。心臓の鼓動だけが、脳内にこだまする。

 他の余計な音が消えて、極限まで集中を高める。

 私の頭の中だけ、時間の流れが違うかのようだった


 ……もう最低限浮いて、前へと進む推進力だけ得られればいい。そのために必要なのは、魔力を流し込むためのハンドルと、動力を伝えるための機石と経路(バイパス)。力が分散しないためには、()()()()()()()()


 ――限界まで解体する。


「――――っ」


 工具を持ったまま、車体の前方へと手をのばす。


 大丈夫。自身の身体の一部のように触れてきたものだ。

 幾度となく分解して、幾度となく組み立ててきたものだ。


 どこをどういじれば、外すことができるのか。

 なんだったら、目を瞑っていてもできる。


「くっ――」


 ガクンッと車体の前半分の高度が落ちた。ロアーを浮かせている二つの機石のうち、前のものを外したのだから当然だ。落ちた機石は、そのままその場に置いていかれる。


 このままじゃ、ずるずると高度が下がって、最後には地面に落ちてしまう。

 今の状態を最大限に活かせる形に変えないと。


 ――急いで、核の機石に片手をそえる。


「大丈夫。大丈夫……。これも本で何度も見た。後ろからの力の角度さえ調整すれば、いけるはず。……そんなに難しいことじゃない」


  まずは、羽根で風を掴むことが第一。


 リガートってのは、内側はぎっしり詰まっているけど、外殻との間は空間だらけ。その外殻がなぜ落ちないのかっていうと――機石から発せられている魔力で、外れないように部品を(まと)わせているからで。


 これから、その魔力を調整していく。

 ――もちろん、機石に書き込んでいる魔法式を直接書き換えて。


 まずは、外した部分に通すはずだった魔力は、全て切断。左右の刃を後ろへ向けて地面と水平に展開。少しずつ角度を調整して、ふわりと揚力を得る位置を掴んだ。


 飛空艇の翼となんら変わらない。小さい頃に憧れた物語の少女の様に、私も空を飛ぶことを夢見ている。機石という新しい技術が現れたからといって、その夢が薄れる理由にはなりはしない。夢のカタチは変わらない。


 ――飛べぇっ!


 ごっそりと部品を外して、ギリギリまで軽量化は済んでいる。

 あとは後部の機石の出力だけで、前へと押し進んでいかせてみせる。


 翼の位置、角度を維持する魔力だけを残して、残りを後部の機石に全て集約させた。ロアーの速度がグンっと上がる。悲鳴のような音が耳に入った。


 ……無理なのは分かっている。でもね――


「私だって、機石魔法師(マシーナリー)の端くれなんだから!!【知識の樹】の一員なんだから!! これぐらいはやってみせる!! じゃないと――」


 左手で後部の出力の方向を変えながら、右手では機石の魔法式を書き換え続ける。


「応援してくれたみんなに、合わせる顔がないじゃないの!!」


 この子を完成させることができたのも、頼れる仲間がいたからだ。

 これだけの後押しがあったのだ。信頼されていると分かったのだ。

『負けちゃった』と笑って済ませることなんてできない。


「アンタのことは、誰よりも分かっているから――」


 トト先輩とココさんが、左右に並んだのが分かった。あれだけ距離があったのに、もう追いつかれてしまった。持ちうる魔力の全てを注いで、最高速度で飛んでいるのに。今は並んでいても、このままではすぐに抜かされてしまう。


 ゴールはもう、目と鼻の先なのに――


「だから――……っ!」


 ……馬鹿だなぁ。本当に私ってのは、馬鹿なやつだ。

 今度こそ、自分の力で勝ちを掴み取るって言ったのに……。


 結局、()()()()()()()()()()()()()()


「もう少しだけ、気張んなさいよぉ!!」


 後先考えない魔力の放出。跳ねる車体を、強引に制御する。


 この身体がゴールに届けばいい。それさえ叶うのならば、このまま意識を失っても構わない。私の背中には、何人もの期待を背負っているのだから。なにがあったとしても、ここで負けるわけにはいかないのだ。


 魔力を流し続ける身体にも限界が来ていた。全身が(きし)んでいくのが分かる。これまで感じたことのない程の痛みが、身体の芯を走り抜けていく。


 痛い。痛いけど……。


「この腕が千切れたって――!」


 ――これが最後の最後。魔力を急激に失ったことからくる症状により、徐々に薄れ始める意識の中で――それでも、最後の一絞りの魔力を核の機石へと叩きつけた。


 回路の端々で、一層強く光が(ほとばし)る。


 ほんの数秒――いや数瞬でもいい。ここで限界を超えないでどうする――!


 両腕の感覚が無くなりかけたその瞬間――車体の後ろ、視界の端で。

 まばゆい魔法光が目に入った気がした。

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

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