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追放前日

「ん〜〜…よく寝た〜」


今日は昨日とは違いダニルの張り裂けんほどの大声を聞かずに自分のペースで起きられた辰は、改めてゆっくり寝ることの大切さをしみじみと、感じながら大きく伸びをしていた


「それにしても昨日は散々だった」


辰は昨日の事を思い出しつつ、使っていいと言われていたクローゼットから服を出して着替えていた


コンッ


「ん?」


辰がズボンを畳んでいると、ポケットに入っていた指輪が転がり出た


「思えば、この指輪を見つけたときからが始まりだったなぁ。」


辰はこの指輪を見つけてからの事を思い出し、改めてこの指輪に疑問を感じた


「そういえば、この指輪結局何なんだ?」


指輪に何かしら書かれていたり、隠されたりしていないかをじっくりと観察していた辰だったが、すぐに何も書かれていない事が分かると、とりあえず指輪をつけてみることにした


「おっ、ピッタリじゃんか……あれ?」


辰はその指輪をつけた瞬間に何かが変わるのを感じた

しかしそれは嫌悪感を感じるものではなく、むしろ自分の中で霧が晴れクリアになったかのようなスッキリとしたものだった


「何だったんだ今のは? まぁいいか、それじゃお腹も空いたし食堂にいくか……あれ!? 指輪が抜けない!?」


辰の指にピッタリとハマった指輪は、まるで体の一部のようにびくともしなくなった


「どうしよう……」


コンッコンッ


「お〜い辰、一緒に朝食食べにいこうぜ〜」


「お、おう……ちょっと待っといてくれ」


辰は葉を待たせるわけにも行かないのでさっさと畳んでいた服を洗濯用の箱に入れると、葉のところへと向かった


「いやぁ、待たせてごめんな、指輪が取れなくなっちゃって」


「いや別にいいけど、その指輪ってどんなのなんだ?」


「ほら、この指に付いてる木でできた緑の宝石が付いてるやつだ」


「はぁ? 指輪なんか付いてないじゃん」


「え?」


葉本当に何も見えないらしく、何度指輪の付いてる指を見せても、全く訳が分からない。

といった様子で辰を疑った


「本当に指輪なんか付いてるのか? まだ寝ぼけてるんじゃないのか?」


「寝ぼけてる訳でもないし、嘘をいってもない。本当に俺には見えてるけど……」


「ん〜……辰には見えて僕には見えないとなると、やっぱり魔導具とかアーティファクトの類のやつじゃないのか?」


葉は図書館で読んだ魔導具とアーティファクトの説明を思い出しつつ、推測を話した


「なるほど……それなら取れない事も説明がつくしな」


「まぁでも推測だし、ここで考えててもしょうがないだろ。ダニルさんとかアルクさんに聞けば僕より詳しいだろうし」


「確かに、まぁ会ったら聞いておくか」


「それより朝食だ朝食、あの食事が毎日食べれるなんて、それだけでも異世界転移した価値があるぜ」


辰と葉は朝食に思いを馳せながら食堂に向かって歩みを進めた






〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁ〜、食べた、食べた」


「やっぱ流石王宮だけあって料理は地球のより美味いな」


今日の朝食は魔物のアルシェの蒸し焼きと薬草のカルミルのサンドイッチだった、それがまた好評で余裕を持って作られていたのサンドイッチを全て食べつくしてしまうほどだった


「みなさ〜ん訓練の時間ですよ」


ん? と昨日とは違い別の人が来たことに若干の違和感をクラスメイトたちは感じつつも今日の訓練に向かうのだった





「では、みなさん今日も訓練に励んでくださいね」


他の人達が張り切って訓練に励んでいる中、一人辰は自信に満ち溢れているような様子で訓練に臨んでいた


「今日もこの時間が来てしまったが、昨日までの俺と一緒にしてもらっては困るぜ」


辰は昨日の間に考えていたスキルの使い方を思い出しつつさっそく実践してみることにした


(風を操るということはイメージが大切なんだ、こういう感じて!)


「【風操】」


シュッ


「おぉ!」


ゲームのスキルで見たことのある風の刃を想像して使ってみると、木には確かに小さなキズがついていた


「まさか、最初から上手くいくとはな。

よし、このまま訓練していってせめて葉には追いつこう!」






「なぜなんだ……なぜこれ以上の威力をだせないんだ」


日が暮れかけている時間まで訓練し続けていたのにあの時以上の威力が出せずなかなか進展がなかったときに辰を呼ぶ声があった


「辰ちょっと来てくれ」


「ダニルさんじゃないですか。どうしたんです?」


「今から向かう所がある付いてきてくれ、理由はすまんが話すことはできん」


ダニルはいつもの明るい雰囲気が感じられない重く苦しい声でそう言った


「なんでですか? 理由くらい話してくださいよ」


「……すまん辰、許してくれ」


そこで辰の意識は途切れた






〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ほぅ、そこの者が一般人と変わらぬ素質しか持たぬ役立たずの救世人か」


目が覚めた辰が最初に見たのは明らかに一般人の"それ"とは異なった雰囲気を纏った中年の男だった


「は? 役立たずなのは認めるけどそこまで言う必要ないだろ」


「なっ! 王の御前であるぞ身の程を弁えているのか!」


辰がつい敬語を忘れて話すと、側仕えと思われる性格の悪そうな男が辰に怒声をあげた


「静まれカーニスよ」


「……御意」


流石に側仕え程度が王の名指しの命令に逆らう事はなく、大人しくなったカーニスに睨むような視線を向けていた辰であったが次の瞬間、強制的に王に視線が向いた


「では今日お前を呼んだ理由を話すとしよう……辰、お前にはこの王国を出ていってもらう」


「え?」


「つまり()()ということだ」


辰はやっと思考が追いついたのか慌てて追放されるのを防ごうとする


「なぜ! 俺は確かに役立たずだしら足手まといかもしれないけど追放まですることはいだろ!」


「そこなのだ、もうすでに救世人はこの王国の顔だ。その中に役立たずのお前がいると救世人の格が下がってしまうからな」


「でも!」


「でもではない、もうすでに決議された事だ。明日にはこの王国を去れ」



「どうか! そこをどうか!」


もう話は終わったと王は言い、辰を退出させるように騎士に命令した





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「とういうことだよアルク! 予定では明日のはずだろ!」


予定とは違う動きにダニルはアルクに掴みかからんばかりの勢いでアルクに問うた


「私にも分かりません、ですが考えられることとしては恐らく教会から何かしらの干渉があったのかと」


「辰はどうなるんだよ!」


「すでに対応はしています。予定とは違う形ですが、辰の後をつけるように護衛をつけましたので」


「いや心配だ俺も行く」


ダニルは「我慢ならん」と言うように辰についていこうとしたが、それをしてしまったら恐らくマークされているであろう自分達にも何か影響が来るだろう、とアルクは説得した


「だか……」


「心配なのは私も同じです、ですがこの立場を利用して辰をマークすることも出来る筈です。今は辰の無事を祈るのが最も辰のためになります」


「辰……死ぬなよ」


ダニルとアルクは居ても立っても居られないのを抑え辰の無事を信じて祈ることにした

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