想像以上の無能っぷり
今回は筆が進んだので少し長めです。
「よし!全員のスキルの確認も終わったしこれから訓練を行う!全員俺を見とけよ!」
ダニルはそう言うとを手本を見せるため近くにあった木に向かってスキルを使った
「いくぞ!【増力】!」
バシィィィン!!!
さっきまで蹴ったり叩いたりしてもびくともしないような大木が一瞬で折れ、見るも無惨な姿に様変わりしてしまった
「あ〜あ、つい本気でやっちまった。こりゃまた叱られちまう」
素手で大木を倒した後だというのに疲れた様子も見せず、ただ後処理が面倒そうな顔を見せた
「スキルはそのスキルの名前を唱えることで発動する!涼!こっちに来てやってみてくれ!」
ダニルは涼を呼び、皆の前で試してみるように言った
「よし、涼お前のスキルはたしか、水刃、射電と翻訳だったよな?」
「はい」
「水刃は、手が向いている方向に水の刃をとばすスキルで、射電も手の向いている方向に電気をとばすスキルだ。」
涼はそれを聞くとまるで想像通りだったのか口がニヤニヤしていて今か今かとスキルを使うのをソワソワしている様子だった
「そんじゃ涼、使ってみろ」
そうダニルに言われた涼は先程ダニルが折った木の近くの木に向けて自分のスキルを放った
「【水刃】」
涼の手にどこからか集まってきた水がひとりでに形作られていき、とうとう水の"刃"となり、木へと向かって突き進んでいった
シュッ
ダニルのときとは異なる静かな音だが示された結果は木を折るまではいかないものの木に大きなキズがあることからその威力は一目瞭然であった
「この威力…もう2級魔術師くらいの力があるんじゃないのか?…流石は救世人、普通とは一線を画す威力だな」
ダニルは子供がつかうにしてはあり得ない威力に、クラスメイトは始めて見るそれらしい魔法に驚愕を感じていた
「な、なんか変な感じする……」
「あぁ、始めて魔法を使ったときにある、魔力が減る感覚に違和感を感じてるんだと思うぞ」
なるほど、とここにいるクラスメイトが思っているときに、ついにダニルは皆が待ちに待ち望んでいた言葉をいった
「よし!こんな感じでやればスキルは使える!間違っても人には撃つなよ!」
その言葉を皮切りにぞれぞれが自身のスキルを試し始めた
「よし…まぁ一応やっとくか」
辰はダニルが言っていた「使いづらい」とういう事を思い出しつつも、もとりあえずスキルを使ってみようと木に向けてそのスキルを放った
「【風操】」
木にはキズ一つつかず、先程通りの木がそこにはあった
「はぁ〜」
(これからどうやってこのスキルを育てていこうか?……流石に何も発動しないとはおもわなかった)
とりあえず使いづらいだけだし、なにも起こらないことはないだろうと、何度かスキルを試してみたことにみた辰はあることに気づく
(あれ?そういえばさっきから何回も使ってるのに魔力切れが起きないな…)
「あっ、なんか分かってきた」
辰はこのスキルが発動してから、オートでやってくれるスキルと違い自分自身が風を動かして形をつくるスキルだと言うことに気が付き、さっきまで考えていた事など思考の隅にやってしまった
(なるほど、だから使いにくいと…………いや、ムリだろ…普通に考えて昨日まで平凡な生活してた奴がいきなり風の操作出来るわけねぇだろ!)
辰は半ばヤケになりつつ風操を連打して試行錯誤を繰り返しなんとか落ち葉を風で動かせる程度までになっていたとき
ポタッ
「アッッツ!!!」
「ごめん!間違ってそっち飛んでっちゃった!」
「葉!てめぇ俺がギリギリで気付いて避けてなかったら丸焦げになるとこだったぞ!」
「ごめん!本当にごめん!ついつい楽しくて…」
その光景を見ていたダニルは、辰が避けたときに転けて擦りむいたところのキズを見ると辰に"回復魔法"の詠唱を教えてくれた
「おい、おいスキルの使い方はあれほど気を付けろといったのに……まぁ、丁度いいし回復魔法を教えてやる。」
ダニルは皆に回復魔法の"詠唱"を教えるために全体に響く大きな声で伝えた
「これから回復魔法の詠唱を教える!俺のあとに続いて唱えろ!」
「『光よ、その陽光で癒やし給え』」
「【陽光の治癒】」
そう唱えたダニルの手から陽の光が溢れ出し対象者の辰を癒やした
「す…すげぇ」
「よし!治った、葉次からはこんなことが無いよう十分に気を付けてするように!」
「は〜い」
ダニルは葉を窘め終えると今見せた【陽光の治癒】について皆に説明を始めた
「今見せたのは、光属性の初級回復魔法だ!詠唱して最後に名前を唱えることで発動する!もちろん光属性に適性のあるやつは、キズの治りが違う!」
それを聞いたクラスメイト達は早速【陽光の治癒】を使っているらしくそこらじゅうから陽の光が漏れ出している
「ありがとう。ダニルさん」
「どうってことねぇよ。このくらい朝飯前だ」
辰はけがを治してくれたダニルに感謝を伝えつつ気になっていた事を聞いた
「風操が使いづらいスキルってことを言っていたけど、俺でも使えそうな風魔法ってあったりするんですか?」
「風魔法かぁ…こういうのは俺よりアルクの方が詳しいんだが……俺が知ってる限りでは【風の加速】は、なりたての魔術師とか騎士に重宝されてるぜ」
「【風の加速】か……それはどんな効果なんです?」
「【風の加速】は、名前通り、自身に風の様な加速を与える魔法だ。」
「使ってみたいので詠唱を教えてもらっていいですか?」
「詠唱は『風よ、我に風の様な加速を』だ」
「『風よ、我に風の様な加速を』【風の加速】」
そう言った辰から緑の光が溢れ出しそのあと何かに吸い込まれたように消えてしまった
「あの……これ発動してますか?」
「いや…見た限りではなにも…」
「こんな事って普通ありえますか?」
「ん〜……どっかで聞いたような……、このことはこっちで調べておくからな。スキルといえば教会だからな聖職者に聞けば分かるだろうしな」
「はい、ではお願いします」
ダニルは「任せとけ!」と自分の胸を叩き辰に調べることを約束した
「もう、終わりの時間ですよ〜戻ってきてくださ~い」
皆の練習を見ていたダニルの部下の人が終わりの時間を伝え戻ってくるように言ったのをダニルは見て「しまった!」とでも言いたげな顔で忘れていたことを思い出す
「アルクと会う約束してたの忘れてた!またネチネチとお説教されちまう!」
ダニルは急いで足を動かして「今日はゆっくり休めよ!」とだけ言い残して王宮に戻っていってしまった
「はぁ、散々な日だった」
そんな恨み言を呟いていたときに葉が話しかけてきて、一緒に帰えることになった辰は、葉が当ててきた流れ弾について話し始めた
「にしてもあの、雨?みたいなの凄かったな」
「あぁ、辰に当たったあの【炎雨】か」
葉は、当たったことを謝りつつ今日使っていたスキル【炎雨】のことを思い出す
「あれな、確かに強いんだけど、あそこ木がいっぱいあったから使ったら燃えちゃうし」
「へぇ〜、スキルにもいろいろあるんだな〜」
そんなことを話しているうちに、辰と葉のそれぞれの部屋に着き、別れの言葉を言い合いそれぞれの部屋に入る
「はぁ〜、なんでこうもうまくいかないかなぁ」
辰は、明日もなにかあるんだろうな。という予感を強烈に感じながらも、眠りについた
次回はダニル視点で辰が魔法を使えない理由と辰のこれからを書きます