ウィンディアとの依頼
「まぁまぁ、一旦待つのじゃ、この話は妾を仲間にしてからでも遅くはなかろう」
「いやいや、選ばれたって言われたら気になるもんだろ」
「辰の言うとうりよ、まずは話を聞かせてほしいわ」
「色々と訳があってのぉ……お主らの言い分ももっともなことじゃが、ここは妾の顔を立ててほしいんじゃ」
辰は必死なウィンディアの頼みを聞き断る事が出来そうになくミリスの方に顔を向け力無く笑みを浮かべる
「なぁミリスとりあえずウィンディアの言うとうりにしてみないか? 一回依頼を受けてみてからでも遅くないだろ?」
「……わかったわよ、でも足手まといになるようなら仲間になるのは断らせてもらうわよ」
「感謝するぞお主ら! 安心せい、お主らを失望させる事は必ずないとここに誓うのじゃ!」
「応援はしとくよ」
「フンッ」
不機嫌な様子のミリスと楽しげなウィンディアと共に何処か疲れた様子の辰達は店を後にし冒険者ギルドへと向かった
「この依頼は、どうかしら?」
「う〜ん、内容は簡単だけど報酬がなぁ」
「じゃあこっち」
辰とミリスは掲示板の前でどの依頼を受けるべきか頭を悩ませていると、それを見ているウィンディアが「じれったいのじゃ!」と一枚の依頼用紙を取った
「って、これはタイオネルの討伐依頼じゃない、こんなの冒険者ランクが銀でも倒せるかどうかなのに」
「大丈夫じゃ、このような獣くらいどうってことないのじゃ」
「大丈夫じゃないから言ってるのよ……これなんていいじゃない? シリンの森でウリルの討伐依頼よ」
「このウリルってのは弱いのか?」
「えぇ、ただ群れで行動する習性があるから厄介なのよ」
「じゃあこれにするか」
「……わかったのじゃ」
不貞腐れた様子のウィンディアを連れ、受付に向かう
「おばさん今回はこの依頼を受けるわ」
「ウリルの討伐依頼ね、はいはい」
おばさんが慣れた手つきで用紙に書き込んでいく
「じゃあ三人とも冒険者プレートを出してちょうだい」
ミリスと辰は冒険者プレートを出しているが一人ウィンディアはきょとんとした顔をしている
「冒険者プレートとはなんじゃ?」
「「え?」」
ミリスと辰は呆れからか無意識に声を出し、ウィンディアの方を振り返った
「あんたそんな事も知らずに仲間になるとか言ってたの」
「違うのじゃ、前来た時にはそんな物なかったからてっきり」
「はいはい、わかったわ。おばさんこの人の冒険者登録お願い」
「あらあら、じゃあこれに血を垂らしてくれるかい」
「痛いのは嫌じゃ!」
「あんたねぇ、私達の仲間になりたいんでしょ」
「うっ、それはそうじゃが……」
結局渋々といった表情でナイフを使いプレートに血を垂らした
「はい、これで三人分と」
「おばさん二人が迷惑かけてすみません」
「いいのよこれくらい! 冒険者は元気が一番なんだからね」
おばさんは微笑ましい物を見れたからか優しい笑みを浮かべ辰達を送り出した
「それじゃ頑張ってきな!」
「とりあえず着いたはいいけど」
「な〜んにもいないわ」
「いないのじゃ〜」
辰達は森に来て早々ミリスとウィンディアが競い合う様に探し回ったはいいもの、これと言った収穫もなくようやく二人が落ち着いたところで見つけた切り株に腰をかけている
「何で生き物一匹も居ないんだよ」
「シリンの森は生き物が多くいて賑やかじゃったが」
「どうなってるのよ」
「いっそ、こちらから呼び寄せてみるか」
「どうするんだ?」
「ウリルは自分より強い者へと挑む習性があると聞く、それを利用するのじゃ」
「利用するってどうするの?」
「こうじゃ! 【風刃花火】」
「「え!?」」
ウィンディアは空に手を向け魔法を放つ、空には薄い緑色の刃が何本、何十本と飛び交いそして最後には花火の様に飛び散る
「あんたねぇ! 危ないでしょうが!」
「まあまあ、落ち着くのじゃ」
カサッカサッ
物音を立てながら、草の中から一匹の動物が勢いよく向かってくる
「ほら見よ、アレがウリルじゃ」
「ん?」
「まあ、今回はウリルが来たから許してあげるけど次からはやる前にちゃんと言いなさいよね」
「次からは心がけるのじゃ」
「なぁ、お前らウリルって群れで行動するんじゃなかったっけ? それにウリルの様子は挑戦に来たと言うより何かに怯えて逃げて来たみたいな……」
「確かに」
「言われてみればそうじゃな」
ガサガサ
先ほどのウリルとは比べものにもならない物音を立てて『ソレ』は姿を現した
「タ、タイオネルじゃない!?」
ついに現れたタイオネルは毛に覆われた体、獲物を容易く切り裂く爪、鋭く尖った牙、獲物を捕らえ見逃さない目、そのすべてが捕食者に相応しいものだ
「こいつが!?」
「ほぅ、大物が釣れたようじゃ」
辰とミリスは恐怖のウィンディアは挑戦的な、それぞれの視線をタイオネルへと向けている




