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依頼報酬、そして出会い

「おっ、もう戻ったのかい珍しい薬草だったのによく見つけたねぇ」


受付のおばさんが辰達が戻ったことに気が

つくとすぐに依頼書を取り出し準備を始めた


「はい、これが依頼のアスズです」


「確かに受け取ったよ」


ミリスからアスズを受け取ったおばさんは

依頼書に印を書き込み、別の掲示板へと張り替えた


「これで依頼完了だよ、そんでこっちが報酬の一万ルクだね」


「はい、確かに受け取りました」


金貨を一枚受け取りカバンに入れたミリスは

カバンに入っている素材を見て「ついでに」

とおばさんに尋ねた


「おばさん、この素材ってどれくらいで買い取れますか?」


「ん? おぉ〜珍しいね、マンドルートの

変異種じゃないかい」


机の上にずらりと並べられた素材を見て物珍しそうな目で見ていたおばさんは直に紙を

取り出し確認し始めた


「ん〜と、これが二千ルクでそれが五つあるから」


「そんなにするんですか?」


「まぁ変異種は珍しいし、よく効く薬が作れるから、よく売れるんだよ」


辰からの質問に答え終えると、値段の確認も同時に終わったらしく、素材を受け取った

おばさんは引き出しから金貨を取り出し

ミリスに手渡した


「はい、これも金貨一枚で一万ルクだよ」


「ありがとうございます」


「そんじゃ、これからも頑張りなよ」


「どうもです」


おばさんは最後に応援の一言を言いそのまま業務に戻っていった


「マンドルートの素材と依頼料が一緒って…」


「……よ、よかったじゃない」


「これミリスで釣りみたいにした方が儲かるんじゃないのか?」


「絶対にいやよ! 金輪際あんな目に遭うのはごめんよ」


「冗談冗談」


辰とミリスが雑談を交わしていると、段々と外で何かあったのか騒がしくなった


「ん? さっきから外が騒がしいけどなにかあったのかな?」


「おや、知らないのかい」


「なにか知ってるんですか?」


辰が外の事を気にしていると、受付からおばさんが声をかけてきた


「今日は、冒険者ランク金のチームが迷宮

から帰って来る日だからねぇ。あのチームは冒険者達からの人気が凄いから」


「あぁ、なるほど」


辰はチームを一種のスターの様な物だと考えて納得し、気になった迷宮について尋ねた


「おばさん、迷宮ってどんなのなんです?」


「迷宮かい? 迷宮ってのは底に近い層に

いる魔物を狩って素材を集めるための場所

だよ」


「へぇ〜」


「辰、迷宮に興味あるの?」


「いや、気になっただけ」


「ふ〜ん、まぁいいけど」


ミリスは辰の物言いになにか引っかかるところがあるのか歯切れの悪い返事を返した


「そういえば、迷宮も気になるけどさ

お腹すかない?」


空いてきたお腹をさすりつつ、ミリスは昼食の提案をしてきた


「依頼料もたっぷり貰ったし、せっかくだから豪華な昼食でも食べましょうよ」


「そうだな、初めての依頼料だしパァーと使っちゃうか」


「私のおかげで二万ルクも稼げたんだからね、感謝してほしいわ」


「おや、あんたらこれから昼飯かい?」


少し声が大きさかったのか昼食の話を聞きつけたおばさんが話しかけてきた


「はい、昨日からなにも食べてなかったので依頼料で昼食を食べに行くところです」


「それなら、このカンシェって飯屋がおすすめだよ」


地図を指差し場所を説明してもらった辰は、場所を忘れないように気をつけつつ感謝を伝えギルドを後にした






「これかな?」


おばさんからの説明通りの道を通り着いた店は想像していた物とは大きく違い、暗くジメッとした雰囲気が漂っているような外観だった


「本当にこれなの? 見た目的にもご飯屋とは思えないけど……」


「合ってるはず……あっ看板あるじゃん」


辰が見つけた看板は何かに引っ掻かれた様なキズがあちこちについているとてもご飯屋とは思えない様子の看板だった


「……やめない?」


「いや……あのおばさんが教えてくれたご飯屋だぞ流石に大丈夫だとは思うけど」


「看板があんなのよ」


「そういうデザインかも……」


「本当にそう思うの?」


「……」


黙り込んでしまった辰を見たミリスが、「もう他の所に行きましょ?」と言い、踵を返そうとしたその時だった


ギィィ


立て付けが悪そうな音を鳴らしながら扉が開き中から男性が一人出てきた


「おや、お客さんかい? 珍しいねあの人

以外に人が来るのは」


中から出てきたのはキズだらけの看板からは想像もできない温厚な顔つきの男性だった


「はい、ギルドの受付のおばさんからの紹介で」


「あぁ、あの人からの紹介かい。そんなら適当な扱いするわけにもいかないね、とりあえず店の中入りな」


「はい、では」


辰が言葉通りに店の中に入ろうとしたとき、ミリスが服を掴み辰を引き止め小声で話しかけてきた


「本当に大丈夫? 入った途端に襲われたりするんじゃ……」


「そこのお嬢ちゃん、人を第一印象だけで判断するのは良くないね」


「!?」


ミリスは少し離れた所からは、聞こえないはずの声量で話していた筈だったのに、聞き取り反応を返した事に戦慄を感じ、抵抗することを断念した


「ほら、待たせてるんだし行くぞ」







その店内は外と切り離されていると、感じるほど外観からは想像できない、温かい優しい雰囲気が漂っている内装だった


「おぉ〜」


さっきまでの事が嘘のように毒気が抜けた声を出しているミリスをよそに、男性は椅子を勧めた


「いらっしゃい、じゃあとりあえず、そこの椅子に座っといてね」


「あの、注文とかって」


「注文は言ってくれれば、だいたいの物を出せるけど、何か注文はある?」


「おすすめとかあります?」


「今日はミューゼの蒸し焼きがおすすめだけど、それでいいかい?」


「はい、それを二人分でお願いします」


「はいよ、ちょっと待っといてね」


注文の確認を終えた男性は奥の厨房に入っていき料理を作り始めた


「なぁ、ミリス」


「どうしたの?」


不意に話しかけられて少し驚いたのかビクッとしながらもミリスは返事を返した


「なんか、変な感じしない?」


「変? どこが?」


ミリスは店内を見回し何もないことを確認すると「なにを言っているのか分からない」という様子で疑問を返した


「その……雰囲気というかオーラというか…」


「どうしたの? 確かにこの店は外と内でだいぶ雰囲気は違うけど……」


「違う、何か……何かが近づいてる?」


「ん? 確かに何か聞こえる」


ビュービュー


「風? それもだいぶ強い」


シュッ


「「!?」」


軽い何かが扉に当たったような音がしたと

感じた瞬間扉がズレて外の光景が見えるようになった


「女性?」


それはまるで風を纏っている様な、白髪で

翠の瞳を持つ少女のようで大人の様な雰囲気をしている不思議な人だった


「やっと見つけたぞ、探すのに妾がどれほど苦労したと思っておるのじゃ」

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