冒険者登録
「さっきのどうやってやったの?」
現在辰とミリスは雑談を話しつつ町のなかを歩いていた
「簡単なことだよさっきのは詠唱を聞こえないくらい小さい声で言っただけ」
「え? でも炎なら炎の、水なら水が見える筈よ?」
「俺のスキルは【風操】だから風を操って動かすだけのスキルで別にあの攻撃がスキルって訳じゃないからだと思う」
「なるほどね」
辰は図書館で見ていた魔法の種類の本について思い出しながら推測を話す
「そういえば、さっきの魔石って何だったの?」
「風の魔石よ……お母さんが私にくれた思い出の」
ミリスは昔を思い出し懐かしそうな、でも思い出したくない何かがあるような複雑な顔をしていた
「だから、ありがとうね辰」
「うん、ためになれたなら何よりだよ」
そこで辰は自分が一文なしで夜を明かせる場所を探していることを思い出した
「ミリス、この辺りにお金が無くても泊めてくれる所とかない?」
「冒険者ギルドなら冒険者に貸してる部屋がある筈よ。私もそこに行く予定だったし」
「冒険者ギルドねぇ」
辰はこの世界で初めて聞く単語に内心ワクワクしつつもその詳細を尋ねた
「冒険者ってどんな感じなの?」
「知らないの? 冒険は魔物とかの討伐、ダンジョンの攻略とかの依頼を達成してお金を貰う仕事のことよ」
そこで分かれ道に着くとミリスは振り返り辰の方を見て尋ねた
「ねぇ、辰はどうするの?」
「俺? どうして?」
「一応助けて貰った恩もあるし、冒険者になるんだったら一緒になった方が安全だし」
「俺は冒険者になるつもりだけど」
ミリスは「そう」とだけ言うと右に向かって歩き出した
「なにしてんのよ、冒険者になるんでしょ、こっちが冒険者ギルドのある場所よ」
「ちょっ、歩くの早い」
「こんな夜中にずっとしてると、また変なのに絡れるんだから」
辰は急に歩く速度が早くなったミリスに早歩きで付いていった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カランカラン
冒険者ギルドに入ると入店を知らせるベルのような物が鳴り、中にいた受付のおばさんが愛想よく挨拶をした
「こんな時間によく来たねぇ」
「はい、私と辰、二人分の冒険者登録と
宿泊をお願いします」
「はいよ」
受付のおばさんはそう言うと後ろの引き出しから地球のスマホと同じくらいの大きさのプレートを取り出し説明を始めた
「これが冒険者プレート、使い方はこのプレートに血を垂らすと字が浮かび上がる優れものだよ。そんで冒険者ランクは依頼の難易度とかの活躍を鑑みて上がる冒険者の実力の指標みたいなのだよ」
説明を終えたおばさんは辰とミリスにプレートを二人分と小さなナイフを差し出した
「じゃあ、お二人さん早く登録してくれ」
「っ」
辰は若干の怖さを我慢しつつ指をナイフで切りプレートに垂らした
「おぉ〜」
血を垂らした所から広がるように文字が浮かび上がった。浮かび上がったのは冒険者プレートは名前と冒険者ランクだけが表示された簡素なものだった
「ミリスできた?」
「うぅ」
ミリスは片方の手に持ったナイフともう片方の手を見て固まっていた
「ミリス?」
「やって」
「ん?」
「怖いからやって」
手にナイフでキズをつけるのが怖いらしいミリスは涙目で辰のほうに顔を向けて頼んだ
「怖いんだ?」
「なによ! 別に怖くたっていいでしょ!」
「分かった分かった、やって上げるから目をつむっとけよ」
目をつむっているミリスの指にナイフでキズをつけプクッと出た血をプレートに垂らす
「ほら、できたぞ」
「ありがと」
「はい、おばさんできましたよ」
「うん、確かに。これで冒険者登録は完了だよ」
プレートを見て冒険者登録を終えたのを確認すると次に宿泊についての説明を始めた
「ギルドの部屋はランクが高い人が優先されるけど……よかったね、丁度二人分空きがあるよ」
「その……泊まるのにお金は?」
辰は自分が一文なしでは「泊まることができないのでは?」と考え、尋ねた
「お金? お金は必要ないよ。その代わりに依頼量のいくらかを貰ってるからね」
「へぇ〜」
「じゃあ、その部屋に案内をお願いします」
「はいはい」
受付のおばさんは、受付から出てくると「ついておいで」と言い、木でできた階段を登っていった
「こっちとその横の部屋がお二人さんの部屋だよ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「じゃあ、今日はもう遅いから早く休みな、
うちのギルドはね、ギルドの中でも寝心地がいいって評判なんだよ」
「そうなんですね」
「へぇ〜それは楽しみです」
おばさんは「おやすみ」と言い残すとミシミシと音を鳴らして階段を降りていった
「じゃあ、私達も休みましょうか」
「そうだね。じゃ、おやすみ〜」
「おやすみなさい」
辰とミリスはそう言い合い自分達の部屋に入っていった
「やっぱ、王宮とは比べるまでもないかぁ」
想像通りといえば、想像通りな部屋でベットが一つにボロっちい机の上に蝋燭が乗っているだけの部屋だった
「言ってた通りベットは寝心地いいや」
ベットに寝転がり寝心地を確かめた辰は、
満足いく寝心地だったのか目蓋を重そうにして呟いた
「はぁ〜これからどうなるんだろ」




