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退屈な女  作者: 青山えむ
3/8

佐々木

 麻衣と俺はどんどん仲が深まった。

 残業が長引いたある日、チャンスだと思った。七時を過ぎ、すっかり暗くなっていた。


「晩ごはん食べに行かない? 嫁には外で食ってくるって言っちゃったし」


「うん、行く」


 会社の近くにあるうどんチェーン店にした。ここなら「仕事帰りに来ました」感がある。麻衣も承知していた。


 うどんと丼のレギュラーセットを食べた。

 麻衣はミニセットを頼んでいた。


 二人とも完食し、少し胃を休める。


「このあと、どうする?」


 俺は麻衣を見つめて聞く。


「どうって……佐々木さんはどうしたいの?」


「二人きりになれるところに行きたい」


 麻衣は目を丸くして視線を外した。麻衣も同じ気持ちのはずだ。こういう展開は慣れてなさそうだからこの反応は想定内だが実際に見ると新鮮だった。


「うん……行こう」


 麻衣は俺の目を見て答える。


「うん、行こう」


 大型スーパーの駐車場に麻衣の車を停めて俺の車でモーテルに向かった。

 あのときは本当に、麻衣が好きだったんだ。


 そのあとも隙を見つけてはモーテルに行った。体を重ねるごとに麻衣が俺に依存してくるのが分かった。麻衣の気持ちがだんだん重くなってきた。


 あんなに知的で新しいことに敏感だった麻衣が、そうじゃなくなっていった。会話をしていても明らかにレベルが下がっていた。


 過去にそういう女はいたが、麻衣は男慣れしていない分タチが悪く思えた。

 最初は堅そうな女に見えた。そのほうが落としがいがあるというか、俺のほうが燃えていた。最初は俺も必死だったなと自分を鼻で笑う。


 当時、気に入らない上司がいた。それらしい言葉は並べるが仕事は一切出来ない上司だった。麻衣は優秀で周りから一目置かれている存在だった。俺は麻衣を利用して無能な上司を陥れた。

 降格まではいかなかったがあれから無能な上司はおとなしくなり、肩身が狭そうに見える。すっきりしたのでそこでやめた。

 麻衣は俺のためになにかが出来たことが嬉しそうだった。単純だな。こんなにちょろい女だったのか。

 

 だんだん麻衣に冷めていくのが分かった。


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