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武器適正試験③

討伐する予定のグランリザードというデカいトカゲは平野を進んだ先の湿地帯にいるらしい。


いつもの山の中と違って坂は少ないし、人通りが多いからか道路の様に舗装されていてとても歩きやすい。今回は途中から別ルートになるが、舗装されている道路をそのまま進んでいくと港町に行きつくらしい。


「港町ってことは、海があるんですか?」


「海ですって!?」


「いいな、海」


「海はいいけど、今回は行きませ~ん!」


海と聞いて沸き立つ俺達を落ち着かせる。それでもええ~と不満そうな声は完全には消えなかった。

俺もそんなに海とは縁が無いけれど、この二人は山に囲まれて育ったせいで話にしか聞いたことがないようだった。

俺も海は何回か遊びにいったことはあるけれど、どうにも天気との相性が悪くて、絵にかいたような青い空青い海にはお目にかかったことが無い。大体少し曇って灰色に近かったと話すと、コーデリアは露骨にテンションを下げてがっかりしていた。



「気を落とさないで。海はまた今度、そっち方向の依頼もあるかもしれないし」


「うう~ん、依頼は無いかもなあ。向こうは向こうでギルドがあるから、こっちにまで頼む人ってあんまりいないのよね」


レオンのフォローも空しく、現実は甘くないということを教えてくれる。

確かに今までの依頼もほとんど山方面だったし、ちゃんと見たわけじゃないけれど山で採れる何とかを採ってきてほしいとかそういうのが多かったような気がする。



「そういえばレオン君だっけ、魔法が使えるって言ってたけど、どんなのが得意か聞いてもいい?」


「え?えーと…」


急に話を振られたことに驚いたのか、それとも言いにくいことなのか、言葉を濁した。そこから少し間をおいて、言葉を一個一個選ぶように答えていた。


「あまり派手なのは得意じゃなくて…。あ、でも転移魔法は得意…です」


「転移魔法!?めちゃくちゃ便利じゃない!」


転移魔法って言うとあれか、どこでも思ったところに自由に行けるみたいなアレなのか。

確かにめちゃくちゃ便利そうだ。ニーナさんの勢いに押されているのか、レオンは少しやりづらそうな顔をした。


「ちょっと、便利とかそういう風に言うのやめてくれない?」


「あ、ごめんね。でもよかったらどの程度まで扱えるとか聞いておきたいなって」


「そういうことなら構わないわ。言ってやりなさいレオン!」


どういう力関係なんだこの二人は。別に上下関係とかではなさそうだけど、単に性格の問題なのか。そうなんだろうな。

レオンは少し嫌そう…とまではいかないが、何で?みたいな表情を浮かべている。


「一応、この四人なら、ここからオガルの街に戻ることはできると思います」


「すご…」


「じゃあ、もし何かあったらお願いしちゃうわね」


保険はいくらあってもいいからね、とニコニコしながら言っている。実際そうなのかもしれないが、一人にかける負担が重いのではないかと少し不安になる。何事もなければいいとは言うが、そういうことを思うほど何か起こりそうな気がしてならない。



「さて、次はニーナだっけ。あなたは何なのよ魔族って」


コーデリアはジト目で睨みながら、そうニーナさんに尋ねた。


「そうね~。改めて説明するってなると、そういう種族ですって言うしかないかな」


「だからどういう種族よ」


「そんなに人間やエルフと大差無いんだけどなあ。寿命も人間とそんなに変わらないし、魔法が絶対使えるとかそういうのじゃないし」


何かあったかなと目を閉じて思い出すように唸っている。

エルフと人間とを一緒くたにされている時点で、文化というか認識の違いが見えたような気がする。


「じゃあ、ニーナさんが人間と接してて、違うなって思ったことはなんですか?」


「人間もエルフも血吸わないんだなってことかな」


「血…?!」「す、吸うんですか?」「ヤバいじゃない」


一斉にニーナさんからほんのちょっとだけ距離を取ってしまった。ちょっとその、半歩ぐらい。

コーデリアはレオンを盾にするかのように下がっている。その様子を特に気にしている様子もなくけらけらと笑いながらニーナさんは続ける。


「そんな見境なく吸わないから安心して。他に何か聞きたいことはある?」


見境はあるけど吸うには吸うんだ…。

魔族って元の世界で言う吸血鬼とかみたいなものなのかな。そこまで悪魔に詳しいわけじゃないのが惜しまれるような、そうでもないような。


そして質問があるかと言われると、なんとなく一個は質問をひり出さないといけないような気分になる。


「魔族って珍しいんですか?」


癖で片手を頭ぐらいまで上げて聞いてみた。常識なのかもしれないが、こちとら異世界からやってきてまだ日が浅いんだ。初歩的なことを聞いてもいいだろう。


「この辺では珍しい方ね。やっぱり王都の近くは人間がほとんどだし。エルフもそうだと思うけど、王都からすごく離れたところで暮らしてる方が多いかな」


「そうなんですね」


「でも見かけるとつい話しかけたり、グループが出来上がっちゃうっていうか、その輪の中にいるからあんまり珍しいとかそういう風には思わないんだよね」


「なんとなくわかったような気がします。ありがとうございます」


本当になんとなくではあるけど、そういう感覚は身に覚えがあるような気がした。

同じ中学出身でグループ組んで話してると、実際人数が少なくてもあまり気にならないみたいなものかもしれない。


「何わかった気になってるのよ。ていうかアンタも大概珍しさでは結構なモンよ」


「そう言われても…」


エルフと魔族ときて、話題の矛先がやはりこちらにも向いたようだ。

そう言われてもこちらも外の世界から来ただけの一般人だと思っているので、変わっているとか言われてもピンとこない。ここは逆に質問してみよう。


「自分じゃわかんないんですけど、異世界から来たんだなって感じってあるんですか?」


自分では気づいてないだけで、もしかして凄いオーラとか発しているのかもしれない。そんなちょっとした期待も少しだけ込めて、返答を待った。


「まあ…、あんまり強そうとか凄そうとかは無いわね」


思った以上にハッキリ言われたな。あんまりとか言われてるからこれでも少しオブラートに包んでる方なのかもしれないけど。


「見た目は結構はっきりわかるんだけどね」


「見た目…?」


エルフみたいに耳がとんがってるとかそういうことなのか?俺も今まで出会ったここの人たちも大体同じ形だったような気がするが。っていうかニーナさんも似たような耳の形だしな。


「人間って言うか、ざっくり国ごとって感じなんだけどね。この辺の人間たちは大体目の色が青とか緑なのよね」


「なる…ほど…?」


「だから、その色の目ってだけでよそから来ました~ってアピールしているようなものなのよね」



そう言われれば確かに、普段の買い物でも「ここではこうやるんだよ」みたいなアドバイスを知らないおじさんおばさんから言われることが多かった気がした。そんなに困っているように見えたんだろうかと思っていたけど、外から来た人だとわかられていたなら腑に落ちる。

日本で日本人が困っているのよりも、外国人が困ってる方が、こっちからすると困ってるんだろうなあ…って感じするもんな。そこで助け舟を出す勇気があるかどうかはちょっと別だけど。



「みんな大体気になることは聞けたかな?そろそろ目的地…なんだけど」


目的地は湿地帯と聞いていた。よく見てみると周りの植物の種類がちょっと今までと違うような気がする。ふんわりした感想だけど、その辺の生い茂っている草から感じる生命力がそれほど感じられないというか。


「前来た時と、ちょっと…違うって言うか、…おかしいわね」


「え?」


様子がおかしい?前と比べてって言われても基準がそもそも無いんだが。レオンとコーデリアも同じように困惑したような目でニーナさんを見た。


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