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武器適正試験 前々日

武器適正試験、通称ブキケン、あるいはブシ。


ジージさんとの修行もそれに合わせて厳しくなっていった。あんまり運動部にいたことはないけれど、大きな大会前の部活動のようだなと思った。


来たばかりの頃よりは多少ジージさんの動きも見えるようになってきたし、たまに木刀の先が当たったりするようになった。たまに当たるまでにこっちはめちゃくちゃ叩かれてるけど。

以前は丸腰相手のチンピラに五分五分と言われた腕は、丸腰相手だったら九割勝てるという評価になっていた。



適性試験のクラスはアルファベットで一番下がCで一番上がSという分け方がされていて、一番最初のCがあればひとまず一人前の冒険者として認められる。つまり俺はまずCクラスを目指すところから始まる。



「そういえばミラさんやフォーゴットさんのクラスはいくつぐらいなんですか?」


「あ?何が?」


「私は銃だけ一応Aかな」


ギリギリね、と遠慮するようにミラさんは答えた。

ブシの二日前の今日、様子を見にジージさんの元を訪れていた。


それにしてもフォーゴットさんは聞いた傍から忘れているのか、そもそも話を聞いていなかったのか、失礼な態度で聞き返してきた。

ジージさんがフォーゴットさんを見るなり喧嘩腰になるのはこういうところもあるんだと思う。


「武器適正のランクなんですけど」


「だから何が?…あー、何の武器のだ?」


こちらも思わず不機嫌で答えたが、相手が先に何か話がかみ合わないと気づいたらしく、聞き方を変えてきた。

何の武器って、そんな種類があるのか?というかそんなに多くの種類の武器適正持ってるものなのか?


「え~っと…、一番高い奴だと何ですか…?」


そもそも俺も武器と言われてもあまり出てこない。思いつくのは剣とか弓とか、あと実際持っているのを見た銃と斧ぐらいか。そんなことを考えながら次の言葉を待った。


「短剣がA…あと投擲もとってた気がするな」


うろ覚えかよ。いや二つも得意なのあるのかよ。とーてきって何だよ忘れるなよ可愛そうだろ。


「前に斧を持ってどこか行ってましたよね?斧のクラスはいくつなんですか?」


「たしかB」


「あんなに似合ってたのにのう」


確かにちょっと装備を整えてる蛮族みたいだとエリーシャが言っていた。見た目適正だったら余裕でAクラス、もしくはその上の上ぐらいまでいけると思う。


「似合うで済んだら適性試験はいらねーんだよ」


それはもう本当にご尤もです。はい、と返事をする。


剣の適性試験は通常、審査員と呼ばれる、その武器のAクラスやBクラスの時間が空いている冒険者と一対一で戦って、審査員から合格を貰えばいい。


そんなわけで対人の実戦に定評があるらしいフォーゴットさんにも指導をしてもらうことになった。



「剣なんて当てなくても近づいて振ってビビらせときゃ勝てるだろ」


「な、なるほ…ど!!???」


目の前を何かが横切った。フォーゴットさんが持っていた小枝だった。

手に持っている本人は、「な?」と得意げに笑っている。ちなみに講習用に持っている小枝は少し前はもう少し太い木の棒だったし、その前は俺と同じ木刀だったが、教えられているはずの俺の身の危険が危ないということでどんどんナーフされていったものだ。


「とりあえず最初は振りきっとけ。人も獣もビビらせたもん勝ちだからな」

「はい!」


稽古と称した一対一では文字通りにやりたい放題、踏んだり蹴ったりレギュレーション違反の大盤振る舞いをして、その度にエリーシャやミラさんが笛を吹いて止めていた。


そんな彼だったが、アドバイスの内容は比較的まともなように感じる。面倒くさそうにあしらわれると思っていたが、人に教えることに抵抗が無いようだ。


「あと困ったら相手の武器パクってボコれ」


教えられたことを実行するこっちのほうは抵抗があるんだが。


「人のを盗るってそれは…」


「そういうのはお前の様な盗賊しかせんわ」


そう言ってジージさんは後方から杖でふくらはぎを叩く。結構痛そうな音がして、叩かれてないこちらの顔まで歪んでしまう。

しかし聞き捨てならない言葉が聞こえた気がした。


「盗賊なんですか?」


やっぱり?と言いかけたがそこは我慢した。フォーゴットさんは舌打ちして杖を持っているジージさんを睨みつけながら答えた。


「昔って言うか、元な。元」


そう答えながらも、両者にらみ合いじりじりと間合いを取って臨戦態勢になっている。俺の稽古のことすっかり忘れてるなと確信して、二人の邪魔にならないよう、それよりも自分に被害がないような位置に移動して深呼吸した。



「それでは、はじめ!」


「何がはじめじゃ!」


ぺしっという音でエリーシャに肩のあたりを叩かれる。結構痛いな。ミラさんは審判用の笛を吹きながら二人の間に入って止めていた。


「必要以上に炊きつけちゃダメじゃよ」


「はい…」


頭を下げて反省の意を示す。向こうの二人も不満気な声を出してはいるが、一応従うつもりのようだ。それにしても元盗賊か。失礼な気もするけれど、全然意外性が無いというか、ですよねって感じだ。第一印象はあながち間違いじゃなかったんだな。



「エリーシャは、フォーゴットさんが元とう…じゃなくて、昔どうだったとかって聞いて…」


「ああ、盗賊団の生まれで、色々あって解散したあと、少年院にお世話になったと本人が言っとったな」


ふと気になったことを聞いてみたら、俺が確認しようと思っていた以上の情報が出てきた。


「生まれがそうなら仕方ないし更生もしたとはいえ、あまり大っぴらに話すものでもないがの」


街中ではあまり言うてやるな、と軽く釘を刺される。

盗賊はゲームとかでよくあるそういう職業というか、カテゴリーだと思っていたが捕まるのか。現代の感覚だと暴力団とかヤクザみたいなニュアンスなのだろうか。


「じゃあ、聞かなかったことにします」


「まあいいじゃろ。フォーゴットには、忘れてるだけで自分で言ってたといえば通用するしの」


「そんなもんですか…?」


そんな自分の過去の話をしたかどうか忘れるものだろうか。でもたまにあの人俺が来訪者ってこと忘れてたりするからな…。エリーシャの言う通り大丈夫なのかもしれない。



「じゃあミラさんも知ってるんですね」



「まあの、私らよりもずっと付き合いが長いし、丸くなったと言っとったしの」



それもそうだ。でもミラさんみたいな人が、元盗賊…現役バリバリと言っても通用しそうな人とそれを知って一緒にいるのはなんとなく意外なような気がした。

同じクラスでもグループが違うというか、そもそも学校も違いそうだが。大人にも色々あるというし、この世界ではそういうのはあまり当てにならないのかもしれない。



この日は結局、そんな話をしていた辺りでミラさんたちが帰って行った。


そして試験前日はおさらいを、と思っていたが当日に力を発揮できるように一日かけてゆっくりしろと言われた。インドア派のおうち時間のリラックススキルをいかんなく発揮するとしよう。

近くをゆっくり散歩した後、流れる雲を眺めながらお茶を飲んで、しっかり湯船につかって早めに布団に入って就寝した。



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