買った装備が呪われている②
途方に暮れること数分、出した結論は、「そうだ、とりあえずギルドへ行こう」だった。
最悪お金はかかるが依頼を出すこともできるし、もう誰でもいいから相談に乗ってほしかった。
ギルドという組織が消費者庁のようなものを兼ねているかどうかは知らないが、もうお客様相談室とサポートセンターとヘルプセンターにたらい回しだって良い。
めちゃくちゃ歩きづらいし熱がこもって暑い。これは最悪辿り着く前に死んでしまうのでは?なんで命を守る防具を着たことで死んでしまうん?
そんな暑さと息苦しさでどうにかなりそうな上、非常に悪い視界の中に見知った人たちを見つけた。俺にしてはめちゃくちゃラッキーだと思う。
「ミラさ~ん!エリーシャ、フォーゴットさ~~ん!!」
「…え?」
ガッシャガッシャと音を立てて三人に近づく。
一応補足しておくが、俺は精一杯はっきりと聞こえるように言ったつもりだった。だが俺は自分の今の姿を失念していた。
そのことに気付いた瞬間足に衝撃が走り、バランスを崩して尻もちをついた。鎧があってよかったようなそうでもないような。
「テメエ!!何しようとしてやがる!!」
上から喧嘩腰の怒声が聞こえる。チンピラの本域めっちゃ怖い。暴力反対。
「す…すみません…。フォーゴットさん…」
この世界で通用するかわからないが両手を上げて降参をアピールする。本当なにもしないんで。
むしろ今この瞬間こちらが何かされてる側だと思うんですが。
「もしかして…エンヤかの…」
「あ??」
「そうです!!俺です!エンヤです!」
ここぞとばかりにエリーシャからの助け舟に全力で乗らせてもらう。
全力で首を縦に振って俺アピールを試みる。いや俺アピールって何だ。ちょっと自分で言っといてよくわかんないです。
「まずはフォーゴット、エンヤくんにちゃんと謝って」
「おう、悪かったな」
ちゃんととは一体何なのだろうか。ミラさんはため息をついていたが、一応謝罪の言葉を引き出せたからかそれ以上は特に何も言わなかった。
「それでその鎧は何なのじゃ?」
真っ当なエリーシャの質問に答えるように、今朝からの経緯を話す。俺もこの鎧が何なのか正直聞きたいところだが、とにかく強制的に買わされて装備させられたことと、脱ごうとしても脱げないことを伝えた。
それはもう強調した。だってこの話のサビだもん。サビはなんぼ繰り返しても困りませんからね。
その後、止め具を探してみたり、三人がかりで兜を引っ張ってみたが、解決の糸口はつかめなかった。
「これは…呪われてるのかもしれんのう」
「呪いの鎧ってことですか」
言い出したエリーシャも噂でしか知らないが、やはりゲームでよくある呪いの装備シリーズみたいなものはあるらしい。
装備したら死ぬまで外れないとか、つけていると不幸になるとかなんとか。
まあ不幸になる云々は元から運が悪いから置いとくとして、外れないのは普通に困る。とにかく困る。
解決策があるかはわからないが、とりあえずギルドの窓口に相談はすることにした。すみませんこんなお客様相談センターみたいなことをさせてしまって。
「こちらでも市場でのトラブルの相談は承ってますので大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます」
「その鎧を売っていた方の特徴などは覚えていらっしゃいますか?」
「ええと、話がうまくて…男の人で…。背は俺より少し高くて」
正直あまり覚えていないが、着ていた服の色や外見の特徴を上げていく。うまく見つけて捕まえることができれば、市場への出入り禁止などペナルティが課されるとのことだ。
そうなれば少しは気は晴れるかもしれない。しかし今はそっちよりも優先したい問題があった。
「この鎧、呪われてるみたいなんですけど、どうにかなりませんか?」
窓口の人は申し訳なさそうに、こちらではどうすることもできませんと頭を下げた。それはそうだ。すると思い出したように一度奥に下がってファイルのようなものを取り出し、依頼の紙を一枚持って俺に渡してきた。
「随分前からある依頼で、誰も受けなくて残ってるものなのですが」
依頼の内容を読むと、元気そうな字で「呪いの品集めてます!一点からOK!」と書いてあった。どうやら呪術師からの依頼のようだ。字は人を表すと言うが、依頼の内容と呪術師とどうにも噛みあわない。
っていうかこれ、俺が依頼品になるってことなのか?
「呪いには呪いをぶつけろと言うしの」
まあ合理的じゃなと後ろで話を聞いていたらしいエリーシャが頷く。そんな雑なハンムラビ法典みたいなことある?だがしかし、この呪われた鎧とおさらば出来るのならば贅沢は言っていられない。
「ありがとうございます。とりあえず行ってみます!」
そう言って俺は依頼の紙を受け取って窓口に頭を下げた。
「頑張ってくださいね」と笑顔で送り出され、依頼主の情報を見ようと裏面を見ようとした。が、手に持っていた紙が無い。落とした?数歩しか歩いてないのに物を無くす天才か?
「随分辺鄙なとこに住んでんな」
「でもこの近くに洞窟もあるし、さっき頼まれたヒカリゴケもあるかも」
話声が聞こえた方向を見ると、さっき俺が持っていたはずの紙をフォーゴットさんが持ってミラさんと覗き込んでいる。移動マジックかなにかか?
怪訝な顔をしている俺、の表情自体は見えないので多分視線的な何かを感じ取ったらしく、紙を手渡してきた。
「大体場所はわかったし、お前に返すわ」
貸した覚えはないが、余計なことを言っても仕方ないので曖昧に返事をして受け取る。
俺の依頼の紙を見て場所が分かった言ってたということは、案内をしてくれるのだろうかと考えていると背中を叩かれて「置いていくぞ」と急かされた。どうやらそれで合っているらしい。
「待ってくださ…あ」
ここで突然ですがクイズです。慣れない鎧を着て、先を行く三人に追いつこうと少し駆け足になるとどうなるか?
正解は、結構派手目に転んで周囲の目を引くことになる、でした。思い出したように不幸付与するのをやめろ。




