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はじめての冒険③

まともに山の中に入るのはこれが二度目、まあ一度目はほぼ強制イベントみたいなものだったけど。


それでも数週間ジージさんの元でつけた体力のおかげか以前よりも歩くことにそこまで苦労を感じなかった。とはいえ、朝方に降っていた雨のせいで地面がぬかるんで歩きにくい。



天気はすっかり晴れていて、いわゆるハイキング日和というか、風が心地よく、日差しも木がいい具合に遮ってくれている。


流石にマンドラゴラをゼロからやみくもに探すというわけではないらしい去年この辺りで見たとか、この辺ならありそうという場所にあたりをつけてはおり、そこをまずは目指している。

事前調査というにはあまりにも雑というかふんわりしているが、それでも完全ノープランよりは大分マシなのだろう。この人たちがマシだと感じているかはちょっとわからないが。


そして今のところ三人についていくだけの俺は、そのあたりをつけているらしい場所に真っ直ぐ向かっているのかどうかもわからない。ただどちらかというと道草は食っている気がする。


「お、金落ちてる」

「珍しい薬草じゃ!」

「綺麗な石ね。これって何とか…鉱石…だったかしら」


道草って言うか、通学路で色んなもの見つけながら帰る小学生みたいだな。ちゃんと見たわけでは無いが、ミラさんが拾った石はたしかにその辺の石とは違う感じの綺麗さだった。「貸してみ」とフォーゴットさんが手を出して受け取ると、ルーペでいろんな角度から見始めた。


「上等なモンじゃねえか。後で鍛冶屋の親父に売ろうぜ」


上機嫌でナンタラ鉱石をミラさんに返したところを見ると、どうやら本当に大した物らしい。ていうかそういうのもわかるもんなんだな。頼もしいというか、こう言うのもなんだけど便利だなこの人。


「今の、見ただけでわかるんですか?」


「売ってまともに値がつくかどうかはな」


まあ慣れだな、と何でもないように言う。慣れと言うか積み重ねた経験の賜物なんだろうな、と思った。



「もう少しで開けたところにでるから、そこでちょっと休憩しましょ」


たしかに少し先に木が少なく明るい部分が見える。以前よりは歩きなれているとはいえ、少し疲れてきたところだったし休憩はありがたい。

あそこまでいけば休憩と思うと、気持ちと足が少し軽くなったような気がした。


「アレ?」


明るくて広い、視界の開けた芝生と、木々が鬱蒼とした山道の境目で先を行く三人が足を止めた。何かあったのだろうか、隙間から覗き込む。

すると白くて大きい犬のような獣が何体寝ているのが見えた。


これはあまり声を出してはいけない奴だろう。

フォーゴットさんが動くな、と手で制して自分だけそろそろと近づいて行った。見えているかはどうかわからないが、首を縦に振って返事をする。

一人分スペースが空いたことで広場の様子がはっきりと見えた。やはり大きな犬、というか多分狼が横たわって眠っていた。数は4体ほどだろうか。


ただその様子には違和感があった。寝ているにしては少し妙なんだよな。そうだ、おそらく野生の狼があんな足を投げ出すような体勢で眠るのだろうか。


もう少しよく見てみると、口の辺りに根っこごと掘り返されたような草が落ちていた。


「あの、あれってもしかして…」


できるだけ声のトーンを落として、難しい顔をしているミラさんに話しかける。

「多分そうよね、アレ。なんていうか状況的に…」

「マンドラゴラとボルウルフが相打ちになったみてーだな」


様子を見終わったらしいフォーゴットさんが何故か後ろから話に加わった。後ろを急にとるな。めちゃビビったわ。

「びっ…くりさせないでよ」

ほらみろ、ミラさんも驚いてるじゃないか。


「それぐらいの声じゃ起きねーよ。それよか、思ったより掘り返されたままになってるし、拾えるだけ拾っていこうぜ」


三個はすでに拾ってきたようだ。多ければ多いほど報酬も多くなるらしい。

「い、一個。調合用についでに取っておいてもいいかの」

やはりマンドラゴラは薬の材料になるらしい。

どこかそわそわした様子のエリーシャは「好きにしろ」と言われると喜んで拾いに行った。


報酬が増えるなら俺も二つぐらい拾って、それで服や装備を新調したいし、ジージさんに何か買って行ってもいいかもしれない。


そう思って落ちているマンドラゴラを手にした時だった。手に何だか生暖かい息がかかった。

いやまさか、こんなタイミングで起きるなんて。

でもそういうまさかを引き当てるのが俺って奴だったよな。


ぎこちないゼンマイ仕掛けのおもちゃの様に狼を見ると、今まで投げ出されていた足に力が入って立ち上がろうとしている。これはまずい。


「逃げるぞ!走れ!!」


号令の後に銃声が聞こえた。運動会の100m走みたいだな、と少し思ったけれどそれ以上に本気で走らなければいけない。先頭早いです、後方頑張ってください。

いや言われんでも頑張ってるわ。あのアナウンス本当聞く側からするとやかましいんだな。


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