お世話になります
その後は午前中の詰め込み教育は何だったのかと思うぐらいスピーディーに終わり、色んな書類の控えやこの辺りの地図を受け取って外に出た。
まだ日が高く、日が暮れるには時間があるようだ。それにしても住む場所をどうしたものかと頭を悩ませてると、ミラさんが遠慮がちに話しかけてきた。
「あ…あのね、エンヤくん。もし住むとこで悩んでたらなんだけど、心当たりがあって―」
文字通り住むところで悩んでいる俺はだいぶ食い気味で「お願いします!」と頭を下げていた。街の外れにミラさんがお世話になった人が住んでいるそうで、その人ならもしかしたら住むところを提供してもらえるかもしれない、とのことだった。
そういうわけで案内されたのは住宅街を抜けた閑静な場所にある、昔話に出て来ておじいさんとおばあさんが仲睦まじく暮らしていそうな平屋だった。玄関の扉をノックしたが家の中にはいないようだ。でかけてるのかと辺りを見回すと、俺達の後ろに小さいおじいさんが杖をついて立っていた。
「じじ様!お久しぶりです!」
「ミラや、よぉく来たのお」
じじ様と呼ばれた老人は孫が久しぶりに遊びに来たように、ミラさんは久しぶりに田舎の祖父に会った孫のように抱き合った。エリーシャも何回か会ったことがあるのだろうか、彼女もはしゃぎながら二人の輪に入ろうとしていた。
元気にしていたかなどといった定番の話題をさっくり終わらせると本題の交渉に入った。
「あのですね、じじ様。頼みたいことがあって…」
「そこの来訪者の坊主のことかの」
「えっと、そう、そうです」
話が通じ過ぎたことに驚いているのだろうか。確かに名乗ってもいないし、俺はただ三人の輪の中に入れず佇んでいただけなんだが?俺、何かしました?そんな怪訝な雰囲気を感じ取ったのだろうか、老人はほっほっほと笑って続けた。
「長く生きておるからの、ま、勘じゃ勘」
ただならぬ強キャラを思わせる老人は、名前はジージというらしい。
そして嘘か本当かわからないが、若いころに山と見間違うほど大きい魔物を一人で打ち倒したり、200年封印されていた魔獣との戦いで放った魔法で湖が出来たり、ドラゴン同士の喧嘩を鎮め平和をもたらしたり、伝説の剣を引き抜いたりしたらしい。
エリーシャが興奮気味に話していたが、正直話を盛りすぎではないか思いながら聞いていた。
「でも、じじ様が凄い人なのは本当よ。私も銃を教えてもらったし」
「私も薬の調合や魔法の相談に乗ってもらってるのじゃ」
「ほっほ。若い娘っこらに褒められると気分がいいのお」
なんとなく話が読めてきたぞ。オールマイティに何もできない俺だけど、多分オールマイティに何でもできるジージさんに教われば、おそらく何か一つぐらい得意な武器や技能が習得できるかもしれない。得意な武器が無いなら作るしかない、ギルドに入ったからには避けては通れない問題だろう。
「来訪者よ、名前を聞いてなかったの。何という」
「エンヤです」
「エンヤか。ミラの頼みじゃ、ワシがお前の身を引き受けよう」
「あ、ありがとうございます!」
俺が深々と頭を下げるとジージさんは愉快そうに笑った。ミラさんも安心したような顔をしている。ひとまず住み込みで修行という名目ではあるが住むところの確保はできた。
「ところで何を教えればいいのかの」
首をかしげて尋ねられたが、正直何も考えていなかった。武器ってそもそも何があるんだ。全部得意じゃないなら全部と言えばいいのか?いやまずは一個に絞るほうが絶対いい。
「今まで、そういう戦いをしたことが無いんですが、何がいいんでしょうか」
皆一斉に唸りながら考え、ほぼ一斉に答えた。
「剣かしら」「剣じゃろか」「剣かのお」
やっぱスタンダードなのって剣なんですね。俺も剣かなって思ってました。
「剣でお願いします」
こうして俺は(噂は信じがたいものばかりだが)超ハイパーすごい有能おじいちゃんことジージさんの元で修行をすることになった。果たして俺に何かしらの才能は花開くのか?学歴は?年収は?恋人は??一体俺の異世界生活、これからどうなっちゃうの~???
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