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アステリア エシュラリオン  作者: にゃん(紫幻回廊)
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悪徳審議官

http://xnyan.web.fc2.com/に掲載していたものです。

 フォールヴェは村の審議官の前に引き出された。


「私の罪は何でございますか」


 怯えた風もなく、微笑んでたずねるフォールヴェに、審議官は口ひげをひねりながら、尊大に言い放つ。


「イカサマ占いで民を惑わし、金品を巻き上げたことによるものじゃ」

「証人はおりますね?」

「もちろんだ。証人をこれへ」


 フォールヴェが思ったとおり、会ったこともない男達がゾロゾロ出てきた。更に予想を裏切らず、全く身に覚えのないことを口々に訴えた。


「うちの娘は、さる大店の若旦那と好き合っておりましたのを、そのイカサマ野郎の言いがかりで別れさせられて、あやうく首を吊るところでした」

「喜捨が少なかったと言って、井戸が涸れたのは私が触れたからだとか言いふらされたんだ」

「呪われてると言われたくなければ、金を出せと言いやがった」


 誰も、こぶしを振り上げたり、床を踏みしめたりするたびに、ふくらんだポケットから鈴のような音がする。もらった金貨が入っているのだろう。

 背筋を伸ばしたまま黙っているフォールヴェに、審議官はかえって腹が立ったようだ。


「聞いてるのか!」

「拝聴いたしております。どうぞ、先をお続けくださいますように」


 相変わらずフォールヴェは落ち着き払っている。あまりにも予想通りの展開だったので、驚きようがなかったのだ。反論する気にすらならない。

 審議官は馬鹿にされたと思ったようで、赤い顔をして小刻みに震えている。失敗したな、とは思ったが、いまさらしかたがない。この調子で通すしかないと思い、フォールヴェも腹が据わった。


「以上のようにおまえの罪状は明らかである! 審議し、きっと重く罰するゆえ、それまで留置所におれ! 引っ立てよ!」


 官吏がその腕をつかむ前にフォールヴェはすい、と立ち上がり、官吏に礼儀正しく頭を下げた。


「ご案内ください」


 そのさまも癇に障ったらしく、審議官はフォールヴェが見えなくなるまで喚いていた。

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