悪徳審議官
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フォールヴェは村の審議官の前に引き出された。
「私の罪は何でございますか」
怯えた風もなく、微笑んでたずねるフォールヴェに、審議官は口ひげをひねりながら、尊大に言い放つ。
「イカサマ占いで民を惑わし、金品を巻き上げたことによるものじゃ」
「証人はおりますね?」
「もちろんだ。証人をこれへ」
フォールヴェが思ったとおり、会ったこともない男達がゾロゾロ出てきた。更に予想を裏切らず、全く身に覚えのないことを口々に訴えた。
「うちの娘は、さる大店の若旦那と好き合っておりましたのを、そのイカサマ野郎の言いがかりで別れさせられて、あやうく首を吊るところでした」
「喜捨が少なかったと言って、井戸が涸れたのは私が触れたからだとか言いふらされたんだ」
「呪われてると言われたくなければ、金を出せと言いやがった」
誰も、こぶしを振り上げたり、床を踏みしめたりするたびに、ふくらんだポケットから鈴のような音がする。もらった金貨が入っているのだろう。
背筋を伸ばしたまま黙っているフォールヴェに、審議官はかえって腹が立ったようだ。
「聞いてるのか!」
「拝聴いたしております。どうぞ、先をお続けくださいますように」
相変わらずフォールヴェは落ち着き払っている。あまりにも予想通りの展開だったので、驚きようがなかったのだ。反論する気にすらならない。
審議官は馬鹿にされたと思ったようで、赤い顔をして小刻みに震えている。失敗したな、とは思ったが、いまさらしかたがない。この調子で通すしかないと思い、フォールヴェも腹が据わった。
「以上のようにおまえの罪状は明らかである! 審議し、きっと重く罰するゆえ、それまで留置所におれ! 引っ立てよ!」
官吏がその腕をつかむ前にフォールヴェはすい、と立ち上がり、官吏に礼儀正しく頭を下げた。
「ご案内ください」
そのさまも癇に障ったらしく、審議官はフォールヴェが見えなくなるまで喚いていた。