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領民が増えたよ!やったねカイトちゃん!

アーク歴1498年 什の月 中旬


ヴェルケーロ領



大魔王様に報告し、お褒めの言葉をいただいた。

そして恩賞を頂いてから大魔王城から帰って来た。

まあぶっちゃけ避難民の世話を押し付けられただけの気がしないでもないが…



避難民を誘導して敵を撃退し、トンネルを超えた後は特に問題も無くヴェルケーロにたどり着き、飯を食って風呂に入った。

その次の日には師匠と一緒に飛竜に乗せてもらって登城したわけだが、帰りは残念ながら馬だ。



馬の旅はなかなか時間がかかったが、貰える領地の事は良く見えた。

やっぱり地上からじゃあんまり見えないし、自分の物になると思ってみるのと何となく通り過ぎるのとでは大きく違う。


新しくもらえる領地は山地ばっかりのヴェルケーロと隣接しており、山々からの湧水が奇麗な川となって流れる平地だ。なかなかいい感じだな。



アカはあれからずーっと寝たままだ。

いつ起きるのやら。


それにしても5000人全部受け入れか。

1000人くらい来てくれたらめっちゃ生産性上がる。

人口2倍とは言わなくても1.5倍くらいにはなるなってテンション上がってたが、一気にそんなに増えちゃうのか。元が1500ちょいだから人口は一気に…4倍か。やべえな。


新しく貰った領地の人口を考えても、ぶっちゃけ新規住民の方がはるかに多いのだ。

うーん、色々揉めそうだなあ。


マークスに諸事情を説明してからこれからの事を相談する。

昼飯にパスタを食いながらだ。


「新しい領地に移民全部突っ込んじゃ駄目だよね?場所の取り合いで喧嘩になりそう」

「ダメですな。広い狭いよりですが、そもそも移民を集団で受け入れると独自のコミュニティを形成しますぞ。そのうち反乱や乗っ取りの下地になりますな。丁度良い旗印もいます」

「ああ…そうか、そういう事もあるんだな」


このパスタは美味い。

干した鷹の爪を使ったペペロンチーノモドキだ。


俺としてはニンニクとトマトのスパゲッティを食べたいが今は真冬。

トマトはアンデス原産で割と寒くても大丈夫だが、ここの寒さはさすがにきついようで真冬には凍死してしまう。夏の暑さは大丈夫なんだけど。

俺のいた地域だと真夏の暑さに耐えきれずに枯れてしまうからなあ。



…しかし参ったなこりゃ。

人がドバーッと一気に増えた。

そうしたら乗っ取りの可能性があるって、そんなことまで考えないといけないのか。



まあ人間の集団が5000人だ。んで俺らは魔族。

あっちが気にしなくてもこっちは気にするし、その逆も然り。

厄介だとまでは言わないが、ちょっとめんどくせえなと思ってんのはお互い様だろう。


領民に上下を付けるつもりはないが、元からいた住民の方が人数も少ない。

生活習慣の違いからどうしても揉めることもあるだろうし、嫌になったら独立も考えるだろう。

うーむ。


「お、カイト殿、こちらにおられたか」

「おうシュゲイム殿か。奥さんのつわりはどうかな?」

「今日は体調がよさそうです。吐き気も少ないようで」

「なら良かった」


マークスと食堂で飯を食いながら話していたら騎士団長のシュゲイム殿が来た。

彼は避難民がたどり着いてからエルトリッヒの第一王女と正式な結婚式をこっち(ヴェルケーロ)で挙げて、俺が大魔王様の所から帰ってきたらなんと第一王女様はもうつわりが始まっていた。


あっれ?計算合わなくない??

ん??と思うがまあそんなもんなのか?


マリアに聞いてみたら妊娠ごく初期からつわりがある人も割といるようなので、その辺は個人差ってことでいいみたい。

師匠は相変わらずその辺の質問をしてもポンコツだった。

何の参考にもならんかったわ。


まあそれはいい。

今後の相談だ。

シュゲイムは実質的に王配の立場になるのだ。


「避難民だが、ウチの領で受け入れることになった。」

「それはどのくらいの割合でしょうか」

「すべてだ。俺も5000人も受け入れる余地はないと大魔王様に言ったんだがな。隣の領を一部加増してやるからそちらも使っていいぞと言われてしまってな…」

「隣の領ですか?」

「あー、シュゲイム殿も大魔王城からの帰り道に通った所だ。最後の街を過ぎた後、何もない鄙びたところだが道の両側は平地であっただろう?そして村がいくつかあった。あのあたりをくれるらしい。つまりはあの辺を開墾して新しく村を作れという事だなあ」


まあ、山じゃない分ヴェルケーロよりは気候はマシなはずだ。

と言っても平地でも雪は降るからな…山からの湧水から小川もある。

その辺りをうまく利用できればいい田んぼが出来そうだ。


避難民の中には種籾を持った者もいる。

これを使って米を作ろう。水田づくりだ。


勿論、一朝一夕で出来る物ではないが、5000人のうちの半分くらいは労働力としてあてにできる若い者たちだ。彼らとウチの領民を使って田んぼを…げっへっへ。


「仮設住宅は足りているかな?それと元の住民とはうまくいっているか?」

「とりあえず今の所、大きな揉め事は無いようです。まあ、食べ物も食料も用意してもらってそれで文句を言うような奴がいれば我々の方で処理しますよ」

「それはまあそう願いたい。…そうだな、法がいるな」

「そうですね。解りやすいのをお願いしたいところです」


()()の内容が気になる所だ。

この世界では命が非常に軽い。

殺人はもちろん、強姦も強盗も死刑だ。

窃盗も下手すりゃ死刑だし、収賄も死刑になることもある。

どうよこれ?窃盗くらい場合によっては許してもいいんじゃないか?


いや、むしろ日本では加害者の命が重すぎたのか?

過保護に守りすぎてるなと思うところは多々ある。

でもなあ…まあ難しい所か。


「量刑に付いてもきちんと定めたい。殺人したものは死刑か?では強盗や強姦はどうか?手を斬ればよいか?モノを斬るか?それとも首を斬るか?では窃盗は?収賄は?…難しいな。そちらの法はどうだった?」

「騎士団の中には法について学んだ者もいます。警備隊の者も詳しいでしょう」

「そのメンバーを貸してほしい。新たな法を作るための話し合いが必要になるだろう」

「…領主の一存で決めればよい事なのでは?」

「そんな事をしていては無茶苦茶になる。法の下の平等、領主も騎士団長も姫も、王すらも法の下にあるものなのだ。そういう法を作らねばならん。その為に人間世界の法も参考にしたい。…おかしいですか?」

「いえ。カイト様は素晴らしい領主様です」


(こうべ)を垂れるシュゲイム殿。

王配なんだからそんな事しちゃダメなんじゃないの?


「私の事は一人の部下と思ってください。もとより、避難民の身分など有って無いようなものなのですから。」

「うーん。まあそうですか??」

「そうです。私も妻も貴方様の部下の一部にすぎません。」

「そう言ってくれると助かります…助かる。」


嬉しいこと言ってくれるじゃないの。

じゃあまあ、もう少し信用してこちらの事情も少しは話しておくか。


「俺は個人的な都合で久遠の塔を攻略しないといけない。それも単独でだ。今は勿論、そんなの夢のまた夢って所だが…まあ鋭意努力中という所だ。んで、俺がいない間はマークスが代官になる。彼は最も信頼する執事だ。」

「はい。我々にも良くしてくれます」


何でこんな話をしているかと言えば、もうすぐダンジョンに行こうと思っているからなのだ。

そろそろ行ってみるかって所で彼らが来たおかげでグダグダになったからなあ。

いやまあ、『お前らのせいで行けなくなったんだぞ』なんていう気はない。

むしろ人手が増えてこれから助かる事もたくさんあるだろう。

まあ同時にトラブルも増えそうだが。


「うん。んで、ロッソが警備隊の隊長をしている。今迄は顔見知りばっかりでほとんど仕事が無かったがな。これからの事を考えると大変だろうと思う。シュゲイム殿は二人の補佐をしてもらいたい。…勿論、最初は勝手がわからんとは思う。状況次第では新たな部署を作ったり、彼らの仕事を代わりにやって貰うようになる」

「ハッ」

「あと、大工や鍛冶屋なんかの特殊技能持ちは出来るだけ得意分野に配置してやりたい。何せ5000人もいる。何らかの仕事をしてもらわないと、全員が無駄飯ぐらいになられても困るからな」

「勿論です。こちらでも避難民のリストを作成中です。」

「助かる。シュゲイム殿たちは時間があったから町の中は色々見てくれたと思う。年寄りどもに聞いてみたところ今はまだチラつく程度だが、厳冬期の雪はかなり厳しいようだ。動けない間は機織や糸績のような家で出来る仕事がメインになるだろう。兵は屋根の雪かきや道路の雪を川に捨てる作業などもやらんといかんだろうな」


前世の豪雪地帯をイメージしながら話す。

現代だと除雪車が日夜走り回り、道路は凍結に気を付けなければならないが車が通れないというほどではない。


でも戦国時代や江戸時代だったらどうだろう。

豪雪地帯と言われるところでも平野ではどうにでもなるかもしれないが、山間部の一日何十センチ、下手すりゃ慎重くらい雪が降る所じゃどうしようもない。

兵を導入して屋根を守らないと、それこそ命が危ないのだ。


「そちらの兵にも雪かきやら狩りやらと色々手伝ってもらうと思う。勝手は違うだろうが慣れて欲しい。だが、我慢しろとは言わん。言いたいことは言っていい」

「ハッ」

「飯についてはどうかな。奥方はつわりで食べられないと聞くが、シュゲイム殿が食べてみたところ特におかしなところは無いだろうか?」

「私は大変おいしくいただいております。騎士団の面々も野菜が美味いと口々に言っていますな。魚が食べたいと愚痴を言う者もいますが…」

「魚なあ…。ここは山しかないからなぁ」


元いたエルルスローニ連邦はかなり大きな国家群だ。

そしてその中でもエルトリッヒ公国は山にも海にも接していた豊かな土地だった。

新鮮な魚も食べられたろう。羨ましい事だ。山を一つ越えれば何もないド田舎。

さあ、ド田舎へようこそ!野菜が美味い位しかとりえのないド田舎へ…くそ。やめとこ。


元いたリヒタール領にも海は無かったが、近くから魚の輸入はあった。

それに大きな川もあったから川魚は割と食べれたんだよね。

それに引き換えヴェルケーロには川魚がいないこともないが、それほど数も取れない。

海の魚なんてこっちの庶民は見たことないってレベルだ。


「はあ…お魚…。ああ、建設的な話をしよう。」

「そうですな」


同じように凹んでいたシュゲイム君。

彼もお魚大好きだったようだ。


「新しく貰った領地のいい所を選んでもらって水田を作りたい」

「すいでん?ですか??」

「ん…??田んぼだよ。お米を植える田んぼ」

「ああ、米畑の事ですね。田んぼと呼ぶのですか?」

「うん…うん?」


もしかして麦畑のように米を畑に植えていたのだろうか?


「麦みたいに畑に植えてるのか?」

「いえ、ドロドロの湿地を使っているようです。乾燥した畑だとうまく育たないことがあるようで」

「ああ、なるほど。俺の言う水田はそのドロドロの湿地を意図して作り上げるものだ。わざわざ土を盛って囲いを作って、そこに水を流し込んでドロドロの湿地を作るんだよ。そしてそこに苗を植えて…米喰いたくなってきた。ダメだ。来年まで我慢我慢。」


丼にして思い切り食べたい。何丼にしようか。ウナギ!?ウナギいっちゃう!?

あ、でも醤油が無いからウナギのタレが作れない。

でもそれ言ったら牛丼も天丼も醤油使うじゃん?あれ?まずは米じゃなくて醤油か!?

あ、カツ丼なら…ってカツ丼も煮汁は醤油使う!オワタ…

醤油づくりか…まずは味噌だ。

味噌は大豆と米麹と塩と…あとなんだっけ???


「ん、ゴホン。まずは今のうちに農家をしていた連中と大工を連れて新領に行こう。良い土地があるといいが。」

「そうですな。我々もお供します」

「ああ。よろしく頼む」

やや不謹慎なタイトルかも…まずければ変えます

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― 新着の感想 ―
[一言] 2世代目くらいから現地に溶け込んで3世代目になると移民前のアイデンティティーなぞ失う移民向けの民族も居るけどねぇ、日本人とかいう
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