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逃避行 三日目 朝


「敵が来ましたぞ」


敵影迫るとの報告を狼煙で受け、陣形を整えること2時間ほど。

狼煙のおかげで察知から対応までの余裕を大きく生み出すことが出来た。


敵がホイホイ分かりやすく進軍してくれたおかげともいえる。

だが兵の数は思っていたより少ない。

まあ昨日かなり削ったし、敵が減るならいうこと無い。



すでに木をクロスさせてつなげた拒馬を用いた馬防柵と落とし穴は設置済み。

さらには歩兵と弓兵が即席で作った浅い塹壕に入ってスタンバイしている。

本当なら塹壕から銃撃を行いたいところだが銃がないから弓だ。


塹壕は縦横に入り組んだ作りになっており、塹壕を通って逃げることも出来れば敵の通行の邪魔も同時に出来ると言うスグレモノである。

塹壕は土魔法とスコップと鶴嘴で掘った。

農具一通りカバンに入れといてよかった。


正直塹壕はいらないかなと思ったけど、敵にも魔法使いくらいいるだろう。

火魔法ぶっぱされた時に身を隠せるところがあるかないかで大違いである。

おまけに撤退後は馬や荷車が凄く通り辛いだろうという事でとりあえず作った。

時間的な余裕って素晴らしいわ。



敵は既に目視できるところにいるが、こちらの状態が良く分からないので戸惑っているようだ。

でももう少し進んでくれないと落石によるダメージは与えられない。と思ったら崖の上の方を調べさせているのか…


「ダメだな。落石部隊はとりあえず落とすだけ落として逃げさせろ」

「ハッ…」


崖からの落石はきちっと先に調べれば直撃されるなんてことは無くなる。

さすがに2回も引っかかってくれないか。


落石部隊による攻撃?が始まった。

と言っても誰もいないところにそこそこ大きな石がゴロゴロ…ドスン!と落ちてきただけだ。


まあしょうがない。

通路を少し塞げただけで上出来だ。


「きちんと逃げ出せたかな」

「そうですな。問題なさそうです」


あちらの様子を伺うと、『もう罠は無いぞ』とか、『いざ突撃!』とか大きな声で叫んでいる。

言うて騎馬はもう無いみたいだし、歩兵だけのようだ。まあそっちの方が厄介ではあるんだけど。


「来るぞ。弓隊用意」

「弓隊用意……撃ちかたはじめ!」


曲射で一斉に打ち始める。

350ほどの弓隊が一気に火を噴き始める。

撒き散らかされた矢は敵前衛に刺さるも、盾を上に掲げてドンドンと進んでくる。

ここで鉄砲でもあればあの突進は止められるが、そうじゃなきゃ止まりそうもない。


ドンドンと近寄ってくる歩兵。こちらは塹壕からなので曲射しかできない。

もうすぐそこまで来た…と思った瞬間にドドドドと音を立てて落とし穴が発動する。


落ちた敵に容赦なく降り注ぐ弓、こりゃいけるとおもったが、あちらから弓と魔法で遠距離攻撃を仕掛けてきた。塹壕の中だし馬防柵はあってもこっちの矢が届くんだからあっちの矢も届く。


「あー、やべえな。軽く下がりながら撃つぞ」

「この位なら耐えられます!」

「そうだけど…無理することもないだろ」


俺の勝利条件はここを死守することではなく、出来るだけ多くの人を避難させることにある。

騎士団員、警備隊員や有志の者とは言え死んでもいいという話ではないのだ。


「3射したら次の列に下がれ」

「3射したら下がれ!3射だぞ!」


下がりながら撃つ。敵の矢も時々塹壕内に入ってくるが、次の列からは盾も置いてあるのだ。撃つものと盾を持つものに分かれて撃ち続ける。

もう矢は何千本つかっただろうか。

とりあえずここに用意した5000本じゃやっぱり足りなくなってきただろうな。


「よし、下がれ!ここを放棄する。A班は先に退避!」

「A班退却!退却だ!」


塹壕を通り、思い切り退却し始める。

A班は民間人の有志がほとんどである。民間人じゃないのは班を率いる隊長のみ。


「敵は引くぞ!逃がすな!」

「クソ!すぐばれたな!」


見えにくいはずなのにやっぱりバレてる。

どこかで見ているやつがいるようだ。


「B、C班も続けて退却。早くしろ!」

「退避!総員退避!」


思い切って退却。

敵は馬防柵を除けて塹壕内部やその上からドンドンと進んでくる。


「残念、ここまでだ。D班!着火用意!」

「ハッ!」


D班は警備隊の中でも火魔法を使える者を10名選んだ。

勿論火魔法で直接攻撃するわけではない。

撃つのは地面だ。


「目印を良く狙えよ…撃て!」


地面にはあらかじめ細工した魔石を埋めてある。

ダンジョンに行ったり野良のモンスターを倒すとポロポロ落とす魔石。

普通は換金して燃料なんかにする物だが、ある方法で細工をすると着火すれば爆発を引き起こすことが出来る。いわゆる地雷を作れるのだ。


地雷は大きな音と衝撃を与える。

小さな魔石しかないので威力はそこそこだが、音と衝撃でびっくりさせられるから足は止まる。


「よし、次!」

「応!」


そして止まった所に投げられるのは油だ。

獣油だか菜種油だかオリーブオイルだか、兎に角油をツボにいっぱい詰めて投げる。

油を投げたら次は当然。


「いまだ!火矢撃て!火魔法も」

「「「応!!!」」」


油と火矢はセットである。

主に横山三国志を読んで学んだ知識だ。


魔石の爆発から油を撒き散らかされた塹壕の周囲はメラメラと燃え上がり、敵の進軍を阻む。

塹壕内部には乾燥した草や藁何かを仕込んであったからなお燃えている。


『げえっ!これは○明の罠だ』って声が聞こえてきそうだ。

まあでも思ったほど燃えない。

やっぱ灯油とかガソリンじゃなくて、そこらにある油だしな。

…まあ無いよりはましだ。


「よし、今のうちに引くぞ」


また最後に木をいっぱいなぎ倒し、逃げ帰る。

まあ、あのくらいじゃ大した被害はないだろうけど今日中に追い付くのはかなり厳しいだろう。

よし、逃げ切っただろ!

食用油を撒いて火をつけてもダメなんじゃないの?と思いますが、調べてみてもやっぱりダメみたいです。気化しやすいガソリンじゃないと厳しいようです。灯油でも冬だとかなり厳しいでしょう。


でも「げえっ!」をやりたかったのでそのまま書いています。

一応加熱されてるところに撒いたから…って事でいいかなと思いますが実際のところ爆発しても衝撃はあるけど地面はそれほど加熱されてはいないでしょう。


まあでもそこはクロロホルムを吸わせてもすぐに失神したりしないのと同じ事です。

フィクションだからセーフって事で

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― 新着の感想 ―
[一言] 地雷が作れるならセットで針金とか釘とか埋めて置かないと
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