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逃避行二日目 夜

昼前に追撃を喰らい、戦闘時間は30分ほどだった。


そしてその後片付けに2時間、小細工に追加で1時間くらいかかって避難民の後尾に追い付いた。

もうすぐ夕方になるところだ。

おかげで昼飯は食えてない。腹減った。


さすがに夜襲はしてこないと思うが念のために偵察には出ておいてもらおう。

…というわけで夕食時には各隊長が集まってまた話し合いの場である。


「…というわけで、そこそこのダメージを与えて足の速い騎馬はかなり奪えました。その証拠の一部が皆さんの召し上がってるものです」

「美味しいですな!」

「うん。おいしい」


昨日に引き続き色々ごった煮の雑炊には具材がいっぱいだ。

だが、昨日より明らかに肉類が多い。しかも割と大きい塊で…切るのが面倒だったんだな。

調理してる人も一日歩いて疲れてるからね。しょうがない。


んで、それを美味しいと言って食べるお姫様。

割と元気そうで安心した。

主要メンバーが熱出したりしたらどうしようもなくなるからな。

まあ飯がいっぱい食えれば問題ないだろう。



今まで2日必死に歩いて、トンネルまではあと1日で着くかという所まで来た。

トンネルに入ってしまえば後は入り口を落石なんかで塞げば問題ないと思うが、果たして明日凌げるかどうか。


「そ、それでは逃げ切れそうなのですかな!?」

「そうっすね。まあ明日次第ですけどね。もう少し進行速度が速くなればいいんですけどね」

「先導する騎士団が遅いという事でしょうかな」

「そうじゃなくて皆さんの荷物が多すぎって事ですね。前が歩くの遅いとドンドン渋滞になるんですよ。デカい荷車の人いるでしょ?アレとか邪魔でしょうがないよね?」

「そうですなあ。ハハハ…」


質問してきたデブ商人に『お前らのせいで進むのが遅いんだよ』って言ったのに騎士団のせいにしようとしてきやがった。嫌味が通じないから顔面に向かってストレートを投げる。


「あの、夜襲の恐れはありませんか?」

「勿論あります。警備隊と騎士団の皆さんが見回りをしてくれていますが、あると思って動いた方が良いでしょう。今日はかがり火を絶やさずに、交代で何回も見回るようにして下さい。」

「「ハッ!」」

「俺は矢を作ります。食後、まだ明るい時間に手分けして石を探してもらえますか?出来ればとがった奴を…」

「分かりました。」


最悪割って尖らせればいいが、手間が増えるしガチャガチャ煩いから安眠妨害になるだろう。

みんな疲れてるだろうし出来れば静かにしたい。


「お願いします。先ほどは使った矢も回収しましたが、明日は矢は使い捨てでもいいと思います。時間がもったいないですからね。その分多めに作りましょう。あとは民間人の方の協力を頼みたいのですが、若い男性に弓矢を配布するのでちょっと夕食後に練習しておいてください。勿論女性も希望者には配布します」

「分かりました。お願いします」


弓も移動中にいっぱい作った。

弓本体の木はもちろん樹魔法で。弦の部分も持っている分だけではなく移動中見つけた蔓草や麻を用いることで大量に作れた。


これじゃあ樹魔法じゃなくて草魔法じゃねえかと思うが、魔法で強化された蔓は思ったより切れない。

騎士団の自称力持ちが思い切り引っ張っても弓も弦も無事だったのだ。もうこれでいいや。





と、いうわけで適当なところで食事は終わり。

かがり火が灯される中、騎士団員に混じって警備隊と有志諸君が弓の稽古をしている。


そして俺達は昨夜に引き続き3人で作戦会議だ。


「先頭集団に損害はあったか?」

「騎士団は魔物による怪我人が出ました。骨折していましたが、回復魔法持ちに治癒させて無事復帰できました。」

「警備隊員は偵察行動中に転倒による怪我人が出ました。戦闘行動は難しいと思いますが、移動に問題はありません。」

「後で治してやるから連れてきて」

「しかし…」

「良いよ別に。それより戦力が欲しい。あ、そっちの取って」

「有難うございます…どうぞ」


話しながら矢を作り、弓を作る。

俺のテントは積み上げられた石や木材、蔓でイッパイだ。

早く仕事をしてしまわないと寝るところがない。


でもこれだけ作ってるのにMP切れの兆候はない。

樹魔法の効率が良いのか、それともレベルが順調に上がってきているおかげなのか。


「それにしても、樹魔法とは便利なものですな」

「そうだよなあ。俺もクソみたいな魔法だと思ってたけど、使い道は多いな。農業にくらいしか使えないと思ったんだけどなあ…」

「農業ですか?」

「うん。前の領地ではかなり頑張ってたんだ。でも今のところはまだ開発始めたところだからなあ」


リヒタール領に追い付くには何年かかることやら。

つーかあっちは今どうなってるんだろ。俺がいなくなっても別に普通に回ってるとは思うが。


残してきた住民たちはどうなのか、手伝ってくれてたオバちゃんや孤児たちに脇芽の取り方を熱心に指導していた脇芽ジイさんはどうなったのか。

まあ心配だけど適当にやってるだろうし、俺が心配してもどうにもならんか。


「二人は農業はしたことあるか?なかなかいいもんだぞ」

「私はありません」


さすが騎士団長。

いい所の出なんだろうな。


「ウチは実家が農家でした。もう手伝いをしろと大変で。果実を取るときは首が痛くなるし、稲刈りの時には腰が痛くなるし…」

「なに?何だって?」

「ええと、果実を「いやその後だ」えーと、稲刈りの時には腰が痛くなるのですよ」

「稲が…あるのか…」


衝撃的なお知らせである。

別になくてもいいと思いつつ、ついつい探し求めていた米がこんな所にあったとは!


「種籾ある?コメの品種は?避難民に農家のやついる?香りは?粘り気は?炊く時どう炊いてた?ご飯のおかずの定番ってそっちじゃ何だった?」

「ちょ、ちょっと落ち着いてください」

「これが落ち着いて…いや、落ち着こう。そうだな、落ち着け俺。ふぅー。」


気が荒ぶったおかげで積んである木切れまで変形してしまった。

またまっすぐに直さないと。


「米があるのか。夢が広がるなあ」

「その、失礼ですが閣下はそれほど米が好きなのですか?」

「うん。まあ大体そうだ。無事にみんなで帰ったらいっぱい田んぼを作ろうな!」

「はい!」「ハッ…」


トルネル隊長はいい返事でザッハール殿は微妙な返事だった。まあ好きな人が好きなことやればいいさ。


「それで…本題に戻っていいでしょうか」

「ああ、ゴメンゴメン。そうだな、予定だと明日例のトンネルに入れるんだっけ?」

「その予定です。先行部隊は既にトンネルを発見しております。」

「そうか。トンネル内部はどう?煮炊きしたり寝たりできそう?」

「そこまで大きくないようです。大人の背丈よりは高いようですが、荷車などは通らない可能性があります」

「あの商人のオッサン辺りがうるさそうだな」

「アレですか…ハハハ」


会議の時にもいちいちうるさいオッサンがいるのだ。

でっぷり肥えて、いかにも悪いことしてますって脂肪をたっぷり身に纏ったオッサンが。


「何なのあの親父?誰か偉い人の血縁か何かか?」

「大臣の弟だったと思います。」

「ああ、そりゃクソみたいにデカい態度するわけだ」


コネ万歳みたいな奴じゃないか。

それで畏まってりゃ使える奴だけどデカい顔する奴は大体使えない奴だ。やっぱ要注意なんだなあ。


「多分だけど俺の方の援軍も明日くらいには着く。今日は騎馬隊相手だったけど、考えようによっちゃ歩兵の方が大変だぞ。」

「ハッ」

「それで防衛計画だけど…」


この後3人で明日の配置から罠関連まで色々と話し合った。


明日でいよいよ全部終わる。

そうすりゃ領地に帰ってゴロゴロしまくろう。



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― 新着の感想 ―
[一言] 林を作れる程度に木を生やせれば騎馬による追撃避けにはなるのにね
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