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アーク歴1498年 玖の月


エルトリッヒ王国 城内



飲みすぎて明日動けなくなっても困るとの事で、飲み会はそこそこの所でおしまいになった。

俺は途中から王や宰相殿、それから避難民を誘導するための騎士たちと打ち合わせを行った。

避難民を率いるのは第三騎士団の副長であるザッハール殿。

まだ若く、将来性もあるため選ばれたと。本人は決戦に参加して討ち死にを願っていたらしいが…王に王妃と第二王女を頼むと懇願されて折れたのだそうだ。


アリシャ姫たちの通ったルートは山越えは山越えでも、大昔に作られたトンネルを使って一番ヤバイ山脈をショートカットしたものだったらしい。

そんなもんあるって俺は聞いてないんだけど?と思うけど、人間側が魔族領に侵攻するために極秘に掘っていたらしいのだ。


そんなの大魔王様も言ってなかった。

知ってて言ってないか、知らないのかは分からないけど…とりあえずそんな危ないものは通った後は埋めておきたい。

そう言うと王様も何の問題も無いから埋めてくれと。

ってなわけで後は皆にあいさつしてサクッと部屋で寝ることに。


ちなみにこの宴の間中アカはグーグーと寝ていた。

宴におんぶで連れて行っても、途中で下ろしても、王様や騎士さんたち、メイドさんたちがツンツンしても起きなかったのだ。うーむ。コイツも疲れたのかな。


まあ、疲れたのは俺も同じだ。

昼寝したというのに、朝までグーグーと寝てしまったのだ。




「カイト殿、朝ですぞ。もう出発ですぞ。起きてくだされ」

「ん、おう。起きる起きる…ふわあ。おいアカ、おきろー!おきろおきろー!」


ん?あれ?こいつなんか大きくなってね?


「おきたぞ…まだねむいぞ…ぐー…ぐー…」

「ダメじゃん。まあいいか」


昨日に引き続き、アカは抱っこで行くことに。重い。

軽く着替えを済ませ、案内のトルネル隊長さんに付いて行く。この人もいつの間にやら俺達専属になって、その上で共に避難民を誘導する係になったみたいだ。


門の所に行くと避難民が集まっていた。

みんな王様たちとの別れを惜しみ、挨拶をしている。


残るのは第二騎士団と40歳以上の希望者、後は負傷などで動けない者のみだそうだ。

民衆は残って降伏すればいいんじゃないかと思ったが、この世界では敗戦国の民は奴隷になるのがほぼ確定だそうで、特に若い女は酷い目に合うらしい。


…まあ酷い話だとは思うが、これは地球の中世でも大体同じ事だ。

近代でも似たような事をやってた軍隊もあるし、現代だって表にあんまり出てこないだけでありふれた話である。人間なんてこんなモンよって事やなあ。


とまあ、俺一人ヘンに納得しているが、若い男と女、それに子供だけとはいえ人数は3000人と聞いていたのにいつの間にやら5000人ほどになった。

うーん、話が違うじゃねえか。

でも別れを惜しんで泣く兵とその家族、旅立つ若者と残る親世代を見ると文句も言えない。


俺に出来ることはと言えば子供を乗せて運べるワゴンを作るくらいなのだ。

挨拶している皆を尻目に、保育園にある園児たちを5~6人乗せて運ぶワゴン。

あれと同じような小さな4輪のワゴンを5台ほど作った。


木製でタイヤにゴムが無いから舗装されてない道では揺れるだろうし、極端に狭い道や崖は通れないが…それ以外なら子供をこれに乗せれば運べる。

荷物置きにしてもいいし、問題は運ぶ人が疲れるくらいだ。

まあ逃がすのは若者が多いのだ。何とかなるだろ。


むしろ俺はとりあえずアカを抱っこしたままはきついから早速作ったうちの一つに乗せる。

そしてその辺の2歳くらいのガキンチョをポイポイと入れて、さあ出発だ。


自然とワゴンに一緒に乗せた子供の親と話すようになる。

魔族の人だと聞いて怖かったけど、俺は見た目がエルフみたいだから何の問題もなかったと。


そうかそうか。

でも俺ってホントは鬼族のスーパーエリートで部下はみんなごっつい奴ばっかりなんだけどな。


俺みたいなひょろい奴ばっかりだと思ってて引っ越したら、隣がヤ○ザも裸足で逃げ出すようなガチムチの鬼やプロレスラーが子供に見えるような巨人族の住人いっぱいだって知ったらこの人たちどうするんだろう。

うーん。まあ姫様とかもいるし、俺の知ったこっちゃないか。


どうせ一気に5000人となるとウチの領地じゃとても受け入れきれない。

大魔王領にあちこち分かれて住むことになるんだろうか。もったいないなあ。


人的資源はいくらあっても困らない。

…まあ実際には食料から治安から結構困ることはあるが、少ないよりは多いに越したことはないのだ。

リヒタール領で人数おおよそ30万人ってところだった。

内訳は魔族が1割、獣人が1割、人間1割で残りがそれぞれのハーフやら3世、4世って所だった。


ただまあもともと1000人くらいしかいないところに5000の余所者を突っ込んだら2000%くらいの確率で揉める。揉め事を起こす確率が100%でその回数が20回くらいはあるだろうからテキトーに2000%だ。

むしろ大きな揉め事が20回で済めばいいって程だ。


今回の話なんかだと悪いことばっかりしてたら移民たちが住むところなくなるからシュゲイムたちが自分らで厳しく取り締まるだろうし、それが出来ないようならぶっ潰すだけだ。

という訳で大変なことは多いだろうけど悪い話じゃないと思う。


でも5000人も人口が増えれば俺のステータス的にはかなり美味しい。はず。

人数が増えれば増えるほどお金も回せるし、農業も工業も商業もはかどる。

産めよ増やせよ地に満ちよ、なのだ。



「ぐがー。すぴー。」

「とかげさんおきないね」

「ほんとだね。かわいいね!」


それにしてもアカは起きない。一緒に乗っている子供たちもアカをペチペチするけど全く起きない。

一緒に歩く親御さんは申し訳なさそうにしているがまあ別にいい。どうってことないだろうし。



歩く歩く。

子供がぐずったり、疲れたと言ったりはするが、大人はさすがにホイホイと歩いている。

さすがに歩きなれている人が多いのだろう。それに命がかかっている事だしな…


この話を書いて暫くしてロシアのウクライナ侵攻が始まりました。

中世なら兎も角、まさか今の時代にやんないだろと思っていたような蛮行が次々と行われているようです。

所詮、人間なんてこんなモンよ、と思うか。

それともロシアを放置するしかない日本を含む周辺国に情けなさを感じるか。

かと言ってじゃあ兵隊になって攻めて来い、守って来いと言われても…って所です。難しいですね

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