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お別れ会

後半は場面、人物共に変わります

国王に謁見した後、お客さん用の部屋に通されてそこで休憩に入った。

晩飯の時にはまた来てほしいと。


逃がす若い連中との顔合わせを兼ねてるらしいから是非との事だ。

正直ちょっと疲れてそのまま寝てしまいたいというのはあるが、まあそうもいかんか。


今日は大魔王城に行って、それからとんぼ返りで帰ったら次はエルトリッヒのお城へ。

ぶっ通しで飛んで謁見して…気が付けば時刻は夕方だ。

さすがに疲れた…。


保存食をおやつに食べて、水分を摂って…お腹が膨らんだようなそうでも無いようなって所で眠気が来たからゴロゴロとしている。

アカ?アカなら隣で寝てるぜ。

どうもおやつを齧ったら眠くなったみたいだ。

コイツ寝ぼけて急にブレス吐いたりしないんだろうな…空飛んでる時もくすぐったいからでポコポコとブレスだすし、正直まだ不信感でいっぱいだ。


全体に見得をはらず、質素な装飾品が多いお城だが、このお客さん用の部屋は結構豪華だ。

少なくとも日本の高級ホテルなんかより広いしベッドもデカいしテーブルや椅子も高そう。

こんな所燃やしまくるといくらくらいかかるのか。


…でもテレビも無きゃ有料のエロチャンネルもないから退屈なんだよなーと半分寝そうになりながらボンヤリしていると、コンコンコンっとノックが鳴った。


「はい?」

「失礼いたします、カイト様夕食の準備が出来ましたのでお越しいただきませんか」

「あーはい。行きます。…アカ起きろ。ご飯だって」

「さっきたべた…ふが…」

「しょうがないな」


アカはおねむなのでおんぶして連れていく。

ぐぬ、結構重い。

柴犬サイズじゃなくてチワワだとか家猫くらいの大きさになって欲しいな。


隊長さんに付いて行くと、食堂だった。

お城の豪華絢爛な、という感じではなくて兵たちが食べるような食堂だ。

大きな大学の学食と同じような感じかな。


そこに着いた時にはもう王様の話が始まってた。

やべえ遅刻か?と思ったがそうでも無いみたい。ワザと少し遅らせたみたいだな。


「こちらがアリシャ達がたどり着いたヴェルケーロ地方の領主である、カイト・リヒタール殿だ。」

「どうも、カイトです。こいつは騎龍のアカです。」

「カイト殿は今回の山越えを補佐していただけることになった。また、避難先の領主殿でもある。彼の言う事に従うように…ルートについてはアリシャと第一騎士団長の使ったルートを再度確認しておくように…以上だ。後は堅苦しいことは言わん。今夜が別れになるだろう。後を託す者、託される者それぞれに別れを済ませるようにせよ…出発は明日の早朝だ」

「「「ハッ!!!」」」


王の挨拶の後は宴だった。


騎士も兵士も魔法使いも関係なく、皆が別れを惜しみ、食べて飲んだ。

中にはこれまでの戦いの激しさを物語るように包帯でグルグル巻きの人もいたし、起きるのがやっとの怪我人もいた。


でもみんな笑顔だった。

別れの涙があるかと思ったがいい笑顔だったのだ。


「カイト殿、これは我が妻と下の娘になる。最早、我と運命を共にするしかないかと思ったが…どうかこの二名をお願いしたい。」

「…はい」

「サンスエール・エルトリッヒと申します。この度はご迷惑をおかけします。ほら、ご挨拶なさい」

「リリー。よろしく…」

「カイト・リヒタールです。微力を尽くします。」


この二人は夫であり父である国王と別れることを選んだのだ。

こんな時に俺は何と声をかければよいだろうか。


王妃様とお姫様との会話はすぐに終わってしまった。

大体、俺と話すより王様と話してた方が良いだろう。

家族の最後の別れになるわけだし…


まあその一方で俺に話しかけてくる人は大勢いた。

寝てるアカをおっかなびっくり撫でたり、向こうの暮らしについて質問されたり。


アリシャ姫の事を聞かれてついぽろっと騎士団長と仲良ししてたと言ってしまうとそこからは会場が大荒れになって…いい笑顔だった人が号泣したり、一気に感情をなくして何もしゃべらなくなったりした。


不味い事したなとは思うが、どうせあっちに着いたらあのラブラブな姿を見ることになるのだ。

たどり着くまでに時間がかかればお腹ポッコリしてるかもしれん。

今から覚悟して置いてもらおう。







アーク歴1498年 玖の月


エルトリッヒ公国 城門前

 

オーブラン・リケルム将軍



「だから早く総攻撃をかけ、あの忌々しい竜ごと討ち取ってしまえばよいのだ!」

「そうだ!奴のおかげでどれだけの兵に被害が出たと思っているのだ!」


各国代表が集まる場で激怒しているのはエルルスローニ連邦、タラモル国の国王ことエンドルリッヒ・ド・タラモル殿とグラオル国の国王であるランリラ・グラオル殿だ。


この声の大きい二人は連合軍の代表格であり、タラモル国王は先ほど陣地にドラゴンのブレスを吹きかけられて大被害を出している。

本人の被害は頭髪くらいのものだが…


「しかしですな、あの竜はどう見ても暴れ狂っておりましたぞ。戦場の空気に中てられただけで、エルトリッヒの軍勢とは関係ない可能性もあります。城内にもいくつか火球を打ち込んだようですしなあ」

「然り」


アギサレム国の代表であるゲルナルド将軍が発言すると、それに同意する声も上がる。

俺としてはあまりに良いタイミングでの攻撃だったのでエルトリッヒの関係者だとは思うが、確証はないというところだ。


「リケルム将軍はどう思っておられる?」

「そうですな、ブレスが直撃してあの程度のダメージです。まあ子供の竜でしょう。戦場の気に中てられて、と言うのも納得できます。ですがあまりにタイミングが良いのでエルトリッヒの関係者が仕掛けたものという事も考えられますが…まあ私の所からでは太陽を背にしていましたし、小さな豆粒くらいの大きさにしか見えませんでしたからな。良く分かりませんという所ですな」


隣に座っているグレアム将軍と小声で話す。

我が国の隣国、ヤグノホーペ国の将軍である彼は理性的で好感が持てるタイプだ。


「私の所からはほとんど見えていなかった。赤くみえたから赤龍なのではないかという話もあったが、この国の位置なら魔王領にある山から飛んできてもおかしくない。長らく戦もなかったから子竜が物音に驚いて興奮したという事もあるだろうなあ」

「そうですなあ。おかげであの頭ですが」

「ふふっ。それは言ってはいけませんよ」


タラモル国王は頭部を燃やされ、魔法によって治癒された。

おかげで奇麗に頭髪だけ亡くなったようで…なんとも部屋中がまぶしい。

まあそれもこれもかの国の魔法使いや騎士団の防御のおかげなのだろう。国王自身は一般人と同じくらいの戦力しかなさそうだし、いかに子供の竜と言ってもブレスに耐えられるわけもない。


「…怖気付いたと言うなら貴公らは帰られよ!我が国の精鋭だけでも討ち取ってみせる!」

「何を申す!タラモル殿こそ頭の治療でもなさっておられればよいではないか。おっと、ケガ…なしでござったな。ワッハッハ」

「何を!」「なんじゃあ!やるんかわりゃあ!」


また揉め始めた。

さっきまで一緒にやるぞと言ったと思えばすぐ揉める。

酒でも飲んで気が大きくなっているのだろうか。話も何度も同じことを繰り返している。


はあ、トップがこんな状態では…この軍は余計な苦労をしそうだ。



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