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猫龍

アーク歴1498年 玖の月 下旬


大魔王城



「ふむ…おぬしの言い分は分かった。少しこちらで相談するから食事でもしておれ」

「ハッ!」


大魔王様には、あっさりと謁見することが出来た。

俺が連れて来たからオッケーなんだと。

ほーん?


大魔王城の上空にアカで乗り付けた時は危うく撃墜されそうになったが、誘導に従って地上に降りてからはなんてことはなかった。まあ、大人のドラゴンも大魔王様と比べりゃ屁みたいなもんだからな。

こいつみたいな子供なら驚くほどでもないんだろう。


「どこへ行く。カイトとそのアカとやらはこっちへ来い」

「はーい…おいアカ、こっちこい」

「おー!」


下がって飯でもって言われたから俺もなんか食わせてもらおうと思ったけど、俺らはダメなんだと。

大魔王様について執務室にいくとそこにはマリラエール師匠もいた。


「ありゃ?師匠何で?」

「お前の領地から急いで戻ったのだ。」

「マリラエールは自分で飛ぶ事も出来るぞ。何だ知らなかったのか?」

「はあ、全く知りませんでした」


つーか飛べるのなら俺を乗せて飛んでくれてもいいだろうに。

もしくは俺は領地でゆっくりしてるから姫とかこのイケメン騎士団長とかを乗せてくれれば。


「残念ながら人を運べるほどの力はない。それに速度もお前のドラゴンと大差ない。いくら子供でもな…どれこっちへ来い」

「うが?おれか?わわっ」


呼ばれた?行ってもいい?って顔をしてるアカだが、大魔王様の手に吸い寄せられるようにぴょーんと飛んでひざの上へ。そして有無を言わさずなでくり回される。


「おう、かわいいのう。よーしよーし」

「う、うが。お、おれはこんな…こんな…きもちいい…何だこれ…ゴロゴロゴロ」


はじめは抵抗していたがいつの間にやらすっかりゴロゴロしているアカ。

ドラゴンって猫みたいにゴロゴロするんだなあ。って変な感心をしてしまう。

くそう、俺の時はあんなにゴロゴロしたこと無いのに…


「それで、あ奴らをどう思う?お前の意見を聞かせてみろ」


大魔王様はアカをナデナデしながら言う。

アカは目を細めて今にも溶けそうなほどリラックスしている。

くそう!何だか悔しい!



「…我らを頼って一国の姫が山越えをしてきたわけです。頼られたものとして一応の義理を果たすために一度山を越えて偵察に行く程度はするべきかと思います。」

「うむ。続けろ」

「その結果ですが、恐らく間に合わないでしょうから彼らはそのままこちらの住人になってもらいましょう。」

「まだ滅んでいなければどうする?」

「まだ防衛が間に合っていた場合ですが、その場合は積極的にエルトリッヒ公国に加勢して防衛するか、それとも双方に停戦を呼びかけるか…もしくは連合軍に加勢し、エルトリッヒ公国を滅ぼして領地を得るという手もあります。」

「なんという不義理なことを考えるのだ!貴様というやつは!」


マリラエール師匠に怒鳴られた

こういう場では臣下はしゃべっちゃいけないはず。

分かっているのに大きな声で起こると言うのはそれだけ俺の言っていることが彼女にとっては非常識だからだ。


まあ無理もない。

『窮鳥懐に入れば猟師も殺さず』という諺があるが、俺が言ってるのは正反対だ。

『川に落ちた犬は棒でたたけ』だったっけ?

あの酷い悪魔のような諺を思い出す所業である。


でも地球ではよくこういうことはあった。近代でも某大国は同盟してたはずなのに土壇場で同盟破棄して領土を乗っ取ってそのまま…おっと、誰か来そうだからやめとこう。



まあそういう手は俺も好きではない。

一般に正直者が多く、正義感の強い魔族には特に受け入れがたい所業だろう。

でもこんなのを大魔王様が選ぶはずがない。

そこまでして領土を得ようとする大魔王様なら今頃世界は魔界に統一されているのだ。


「その通りよ。儂は領土などどうでもいいと思っている。だから大魔王に成ったのだな…儂が生きている間は人魔間戦争は起こらぬ。いや、起こせぬことをお前は知っているのだろう?」

「はい。というわけでまだ国が滅んでいなかった場合に僕らが取れる手段は偵察に行って、ちょびっとだけ世界にバレないように防衛の手伝いをするか、見るだけ見て逃げる人の手引きをするか、精々その程度ですね。」


防衛の手伝いと言っても大したことはできない。

大っぴらに戦うと『盟約』に反することをしたとしてペナルティがかかる。

そのペナルティの結果がどうなるかは分からない。

罰として死ぬか、風邪をひいて寝込む程度で済むかは不明だ。


でもまあ…アカに乗って上空から花火みたいにブレスを撃つだけで気もそぞろになって攻城戦に集中できなくなるんじゃないか。


そうしたらエルトリッヒ公国の生き残りや民衆が逃げ出しやすくはなる。

ただし夏場とは言えアルプス越えをしてもらうことになるが…。

おまけに山越えの最中に背後を襲われる心配もあるな。

その頃には魔族の軍団が撤退の手伝いが出来る程度には接近してくれているだろう。そう願いたい。


「ふむ。ならお前のすべきことは分かるな?」

「アカに乗って偵察に行きます。可能なら民の逃亡を助けます」

「うむ。こちらも飛竜部隊を用意しておこう…食料の輸送準備もだな。お前の袋に開きはあるな?一応持てるだけ水と食料を持って行け」

「はい」

「それと…マリラエール、スパルナのマントを持て。コイツの持っているパラシュートとやらではまともに落ちれば死んでしまうぞ」

「ハッ」「うぇ!?」

「気付いておらんかったのか。軽いお前の体なら1度くらいは重荷に耐えられるだろうが…それも高さによっては途中で破れるかも知れぬな。連れて来た騎士の方はまず助からん。落ちなくてよかったな。フフ、ワハハ」


序盤は気の毒そうな顔で、最後の方は楽しそうな顔で大魔王様は言う。

…まあそんな気はしてた。

やっぱりあんな急ごしらえのパラシュートじゃ無理だったんじゃないか!


それを聞くと安全運転でお願いしてよかった。

あぶねえ所だったんだなあ。


「お持ちしました!」

「ご苦労…このスパルナのマントは防寒具にもなる。空中では落下速度を和らげることが出来、ある程度滑空も出来るだろうな…ただ、空を飛ぶことが出来るわけではない。そして魔力が切れたらただのマントだ。わかったな?大事に使えよ」

「ハイ!ありがとうございます!」

「お前とこのドラゴンは軽く飯を食べてから出るがよい。騎士の方は儂が適当にお前の領地に戻れるように手配しておこう」

「お願いします!」

「うむ。ではな」


アカを俺の方にポイっと放り投げて去っていく大魔王様。

小さな羽と尻尾をばたつかせる柴猫ドラゴンは去っていく大魔王様を悲しそうに見つめるのだった。




猫龍と言えばナルガですね。昔は苦労させられました。

ワールドでも最初はフルボッコにされ、最後の方もソロはやっぱりしんどかった。

でも見た目は好きなんだよなあ。


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