空の旅
パラシュートの実験も一応成功に終わり、アカに持たせる籠も出来た。
手綱も無しに乗っていくのはさすがにきつい。寒いし籠にしてもらおう。
あとはこれを落とさないように固定して…っと
「それでは行ってくる。道中頼んだぞ」
「行ってまいります姫様」
「シュゲイム、どうか無事に戻ってき「いってくるぞー!」」
姫が喋っていたがアカはあんまり気にせず離陸。
さすがドラゴン、空気は読まない。
アカには籠を持ってもらい、その中に俺とシュゲイム殿とで入る。
二人とも背中にランドセルの様にパラシュートを持っているが…これの出番がないことを祈る。
すでにかなり上空に上がっている。怖い。
「安全運転で頼むぞ」
「まかせろ!…なあかいと?あんぜんうんてんってなんだ?」
「ゆっくり、暴れないでねって事だ。」
「おー!おれのとくいわざだ!…で、どっちにいけばいいんだ?かいと?」
「えーと、あっちだ。あの山の向こう。あの火を噴く山の向こう側だよ!」
大魔王様の住む魔都の周囲は火山に囲まれている。
という事は火山を目指せばいいという事だ。遠くからも見つけやすくて安心だね!
すいーっと滑り出すように進み始めた。
全く翼はバサバサしないのにふわっと浮き上がって滑るように動く。すごい。
「これは素晴らしい景色ですな!」
「そうだな。全然揺れないし。すごいぞ、アカ!」
「そーだろ!もっとほめていいぞ!」
「このまま目的地に着いたら何かいいものあげよう。何が良いか考えておけよ!」
「うーん?そういわれるとなやむなあ。やっぱりキラキラかな?それともおにくかな?」
宝石や肉で安全が買えるなら何の問題もない。
死ぬことに比べりゃ何を払っても安いもんだ。
というか、どうして前回これをやってくれなかったんだ。
そんな俺の思いとは裏腹に、どんどん進んでいく。進んで…進んで…
「寒い」
「そうですな。だんだんと気温が下がってまいりましたな」
30分は飛んだだろうか?
遠くの方に霞んで見えていた火山もかなり近くなってきた。
かなり厚着をしてきているし、籠の内側に布も張っているが…冷たい風を受けてどんどんと体温が下がってきているのが分かる。
直線距離で言えば大して距離もない。
恐らく1時間か2時間か、ドラゴンの飛行速度ならそのくらいで飛べるはず…なのだが。
「一度降りるか我慢するか…シュゲイム殿はトイレは大丈夫ですか?」
「それは問題ありませぬ」
「さむいか?だいじょうぶか?」
「ちょっと寒いけど我慢する。あー、でも急いだらもっと寒そうだからそんなに頑張らなくていい。今のままのペースで十分だからな?」
「おー!」
クソ寒いがこのままなら問題ない。
本当は歩きまわったりジャンプしたりすればよいのだが、狭い籠の中じゃそうもいかん。
というわけでシュゲイムと二人、大人しく籠の中で手足の指をニギニギと動かすのみ。
これで駄目ならもう男同士で暖めあってアッー!をするしかなくなる。さすがに勘弁してくれ。
それにしても、最初は奇麗な景色だと思っていたがすることがなくてだんだん退屈になって来た。
だから話しかけてみる。
「…ゆうべはおたのしみでしたね。」
「なっ…突然何のことですかな?」
「何のって。姫とああいう関係なら先に言ってくれないと困るんですけど」
「…ハッ」
何でばれた?って顔だけど人の屋敷でアッハンウッフンしてて気づかないと思うのか?
まあ俺は気付いてなかったけど。
…俺は気付いてなかったけど、俺には優秀な部下がいる。
部下の手柄は俺の手柄!どやあ!
「まあ俺はお国の事は良く分からんのだけども…普通に考えると『もう無理だからお前たちだけでも逃げなさい』的な状況だったんじゃないの?」
「概ねその通りでございます。王は私に姫をよろしくと。幸せに暮らせよと仰せになり…くうっ」
「そうだと思った。大魔王様の前では嘘をつかずに正直に言った方が良いよ。取り繕って変なこと言うと怒られて何の援助もなくなると思う」
「はい…ご助言有難う御座ります」
「良いって事よ」
これで俺の配下になってくれれば尚良いって事よ。
見た感じ頭は脳筋っぽいけど腕は悪くなさそうだし。
というか戦力以前に一人でも村人が、労働者にして消費者にして納税者が欲しい。
村人を少しでも増やすことで領地を発展させる。
領地が開発されれば自然と人は増え、金が回る。これが内政ってモンよ。
つまりヒトモノカネ、これを上手いこと循環させる事こそが政治なのだ。
お、そうこうしていてたら火山上空に来た。気温も少し暖かくなってきている気がする。
もう少しだ。もう少しの我慢だ…
俺とシュゲイム殿は鼻水をたらしながら手足をひたすらニギニギしていた。
ああ、もう少しが長いなあ。




