武装解除
突然人間界から人がたくさん来た。
今のところ100名以下のようだが、それで全てとは限らない。
これから続々と増えるのかもしれないのだ。
というわけでこちらも兵力をかき集める。
兵力と言っても、中身は農民や猟師、大工に鍛冶屋など普通のおじさんおばさんたちだ。
そう、普通の魔族のみんな。
オーガ族の農民にミノタウロスの鍛冶屋、それからオークの猟師にゴブリンやコボルトのおじさんおばさんたち。
それを率いるのは鬼族とエルフのハーフの俺だ。
魔族の部隊はだいたいこんな感じになっちゃうのだな。どう考えても個人差が大きい。
ゲームだと魔族兵は武力300だった。人間兵が100だから3倍である。
でも、種族も体格も入り乱れているのに一律武力300というわけがない。やっぱりゲームとは違うわ。
「若、配置完了しました」
「ご苦労。相手の出方を伺おう」
巨人族で兵士長のロッソが俺に話しかけてくる。
俺の隣にはマリラエール師匠が護衛についている。
…師匠の種族はまだ知らないな。
吸血鬼か何かっぽいけど…分からない。
さっきの基準でいうとロッソは…1000は楽々超えてるだろ?師匠は?5000か?10000か??
敵が見えてきた。
相手はグレンの報告よりやや少ないくらいの人数だ。
軽く武装した兵が集団の外周におおよそ30。
そしてその内側にまた何人かと、馬車がいる。どう見ても馬車を守る陣形だ。
馬車と集団の後方には騎兵もいる。おおよそ5騎程度。
戦えそうな戦力は外周の30と騎兵5くらいか。
こっちは俺とマークス、後は村人たちで総勢50名。
ゲームでの戦力評価は先に述べたが、一般の人間100に対して一般の魔族は300だ。
だから余裕のはず。人数だけなら。
だが、その中に一人でもものすごい猛者がいると話は変わってくる。
親父や魔王様クラスになると一人で戦力5万くらいになっちゃうだろう。
一騎当千といえば一人で千人分。戦力100の一般兵の1000倍だから…10万か。
じゃあ親父はそこまで行かないのか?でもまあ戦車相手に生身の人間が1000人いて勝てるかというと、10人くらい轢き殺された時点で諦めて逃げ腰になって勝負は決すると思うけどな。
例えば俺が攻撃指揮官だとして、親父が待ち構えてる所にサラリーマンを100人突っ込ませられるか?
話にならんわ。
俺がリーマン側だったとして、3mくらいあるバケモンが自分よりでかい棍棒持って殺る気マンマンの所に突っ込めって言われても。
では守勢だとしたらどうか。
砦や城に立て籠もっているならどうにかなるか?うーん。
鉄の門はワンパンでぶっ壊されそうだし、門まで歩いてくるのを近代火器なしでどうやって止めるだろう?弓矢で親父が止まるか?
無理ゲーだ。はいさようなら。
それと同じ話が人間に対しても言える。
ものすごく強い人間、例えば英雄とか勇者とかそういうのは実在する。見たことないけど。
彼らの戦力評価はおおよそ1万~10万だ。
一般人100人~1000人分である。まさに一騎当千の強者なわけだ。
そして勇者の場合は多くが魔族特攻…魔族に対して特に攻撃力の上がるギフトを持っているはず。
つまりあの中に勇者が一人いた場合、俺らがいくら強がってみてもアリのように踏みつぶされて終わるのだ。
こんなことを考え、心の一部分では覚悟を決めているが相手は何もしてこない。
攻撃しに来たわけではないのか?
俺が来てから馬防柵を配置したり、樹魔法と土魔法で外壁を整えたりはした。
と言っても大した事はない。
一流の魔法使いが何年もかけて作ったリヒタールの町の防衛設備に比べれば屁のようなものだ。
この門だって生身の人間がぶつかっても壊れそうにないけど、ちょっとした破城槌くらいあればすぐに壊されるだろうに…まあそんなもの持ってそうには無いけど。
勇者とはいかなくてもそこそこ強いやつなら突破されてもおかしくないが。
それにしても動きが…ああ、ようやく動いたか。
あちら側から一人の軍人らしき者が歩み出てきた。
そして大きな声で語り始める。
「ヴェルケーロの諸君、我らの話を聞いていただきたい!私はエルトリッヒ公国、第一騎士団長のシュゲイムだ!我らは侵略に来たわけではない。どうか大魔王様にお目通りを願いたいのだ!」
「エルトリッヒ?」
「エルトリッヒと言えば連邦の小国家群にある国ですな。人口は10万ほどの小さな国ですな」
「ほう。さすがマークス。博識だな」
「若ももう少しその辺りのお勉強を「俺がここの領主、カイト・リヒタールだ!大魔王様に謁見して何をするか!大魔王様を害しようと言うならば、ここで我が排除する!」
マークスがいらんことを言いそうなので強引にカット。
いいか?そう言う勉強とか知識なんてのは周りで補うような人材がいればいいんだ。王や領主の仕事じゃあない。そうだろ?だよな?
「もちろん大魔王様を害しようなどとは考えておらぬ!あちらの馬車におわすのは我らが姫である。恥ずべきことではあるが、我が国は貴族共の反乱と他国からの侵略にあっている。大魔王様に謁見し、助力を得たい!これが全てだ!」
「成程…一応筋は通っているな。よし、良いだろう。城門を通っても良い。ただし武器の類はそこに捨てよ。後で我が兵が回収して預かる…文句あるか?」
「ない!よろしく頼む!」
そう言うと騎士団長殿は槍と帯剣を地面に置き、鎧も脱いだ。
後方の兵もそれに従っている。ううむ。なかなか出来ることではない。
だって柵のこっちからはいかにも恐ろし気なオーガ|(農民)にミノタウロス|(鍛冶屋)がいるのだ。
こいつらのこの太い腕にデカい体を見ると俺でも武器を手放したくなくなるのだが…
「うーむ」
「良い兵ですな。」
「そうだな。おい、あの立派な者どもに無礼を働くことは許さんぞ!わかっているな!」
「「ハッ!」」
「ふむ、先ほどの啖呵はよかったぞ。後は実力を伴うだけだな」
「へへ。師匠もじきに追い抜きますよ」
「フッ、言ってくれる」
いつの間にか後ろにいた師匠も褒めてくれた。
マークスも何やらうれしそうにニヤニヤしている。
武装解除も終わったし。
兵は少しピリついているが、町のみんなは解散させた。
おそらく問題ないだろう。
…問題があるとすれば呼びに行かせてしまったアカだ。
どうしよ。
PV数やポイントが増えないので外部登録?とやらをしてみました。
何かいい手段があれば教えてください。
投稿時間をチョコチョコっとずらしてみてからは少し増えた気がしますが…微増です。
いいねとかポイントとかください。
お願いします。