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石鹸

大きな風呂を作ってみた。


作って思い知ったが、まずはこいつらに風呂の作法をたたき込まないといけない。

喧嘩をしたり、湯舟の中で飲食をする事は無い。

トイレだって小はわかんが少なくとも大は風呂の横に作ったトイレに行っている。


それは良い。


だが、汚れたまま入るから土や泥が風呂に入るのだ。

それはちょっとイカン。

という訳でかけ湯をして、全身を清めてから風呂に入るように指導。


そうして気付いたことだが、洗剤を作らないといけない。

風呂で体を洗うための洗剤、つまり石鹸やボディーソープ、シャンプーにリンスもそうだし、風呂桶や風呂場の床を洗う洗剤も必要だ。

風呂桶の材料は石材だが、汚れた体で何人もが入ると風呂の壁面に垢がびっしりになる。


営業が終われば風呂の湯を抜いて捨てるが、その際にゴシゴシ擦ってもなかなか取れない。

バスなんちゃらがあればキレイになるのに…ああ、作るしかないのか。


…って事で石鹸を作る。


石鹸は油と灰が主な材料になるわけだが、油をまずはどこから手に入れるか。

油は動物性と植物性がある。

豚さんから採れるラードや牛からの牛脂、鶏からは鶏油が採れるが、この世界ではニワトリをまだ見たことないから鶏油は却下。その代わりにそこらで狩って来た動物や魔物の脂が採れる。


植物性の油はごま油にコーン油、菜種油にそれからパーム油なんかもメジャーだ。

椿油なんてのもあるが、量があんまり取れるイメージは無い。

それから、荏胡麻油なんてのも聞いたことあるが…俺は荏胡麻を見たことがない。

胡麻とどう違うのかわからんし、そもそも野生の胡麻見たことない。気付いてないだけ説はあるけど。

うーむ。


「まあ何でもいいか」


灰を混ぜるが、一口に灰と言っても石鹸に良い灰と悪い灰があると思う。

確か海藻の灰が良いとか悪いとか聞いたことあるような気がするがまあそれはそれだ。

この山の中で海藻の灰なんてないぞ。


とりあえず灰をお湯にぶち込んでかき混ぜ、一晩放置。

竈に使っている薪は端材の木がほとんどなので元が何の木かはさっぱり分からんが。


植物油は絞るのが大変なので動物性の脂を集めさせる。コレはコレでフライパンに馴染ませて肉を焼いたりとか使い道は多いが今は領主権限で狩った獲物の脂を集めてしまうのだ。

そして鍋に脂たっぷりの身を入れ、ゆっくり過熱して油を抽出する。カリッカリに焼けた脂身が沢山できた。コレはコレで美味そう。


昨日放置した灰汁の上澄みだけを取り出す。

そこに溶けた脂を放り込んで混ぜる。

んで、グルグルと混ぜながら冷やし…


「これで出来た?のか?」

「石鹸にしては固まりませんなあ」

「まあそれはそのうちだな」


事前に石鹸を作るぞ!洗剤だぞ!と言っていたのでマークスはチラチラとのぞき込んでいた。

まあ、予想通りに固まらなかった。

硬い固形の石鹸にするには確か何か添加物が必要なはずだ。

まあそれはおいおい調べよう。


ちょっと不安はあるが自分の腕に塗ってみる。

駄目ならヒールすればいいし。その辺この世界は便利だ。


「痛くはないな」

「若、そういうのは自分で試さないでください」


マークスに怒られるが自分で試さないと不安だ。

化学式がどうだったのかは覚えていないが、鹸化ってのはそんなにおかしな反応じゃない。

人間の死体だって鹸化したりするくらいで、ごく普通に自然界にありふれた反応だ。


もともと、肉を焼いてて脂が薪の上に垂れてそれが鹸化したとか?

なんかそういう切っ掛けがあったはず。

その垂れたのを使えば泡が出てよく洗えるって発見した奴すげーよと思うけど。





石鹸は普通に使えた。

言うて液体石鹸だし、ツボか何かに入れて使う分だけ持っていく感じになる。

液体なのでプラ容器なんかが無いと、正直あんまり使い勝手は良くない。

そのうち固形の石鹸を作らないと。


そうは思うが、液体石鹸にデッキブラシの組み合わせは中々強い。

風呂の壁面も床もヌルヌルになって、バイトに雇った子供が遊びながら掃除をしている。

中々楽しそうである。転んで怪我をしないかが不安だが。


「楽しそうでよいですな」

「そうだな。捨てるだけだった灰も大事にしないとな。まあそれより油をもっと量産しないと」

「灰と油を混ぜるだけでこのようなものが出来るとは思いませんでした。さすがは若です」

「よせよ。何でも偉いのは始めに作った人だ。俺はただそれを知ってただけ。分かってりゃ簡単なレシピだよな。灰を水につけて油と混ぜるだけ…で…」

「そうですな。発想の転換ですな…若?」


ああ、そうか。

混ぜるのか…くそ、何でこんな簡単な事を思いつかなかったんだ!


「…マリア、カラッゾを呼んでくれ。至急だ」

「はい。」


マリアはメイド服の胸元を引っ張る。

そしてたわわな胸の間から伝書鳩のようなものを出した。羽ばたく鳩のような鳥。

おかしくない?今どこから出てきたの?何で今までじっとしてたの!?


「明日には来ると思います」

「おう…つーか今の突っ込みどころ満載なんだけど?どうやって出したの!?」

「見ますか?坊ちゃまならいつでもよろしいのですのよ」


ちらっ?と上体を曲げ、上目遣いに俺を見る。

と言ってもマリアの方が身長が大きいから微妙な上目遣いである。


「止めなさい、はしたない!…まあ兎に角、明日だな」

「早ければ今夜かもしれません」

「何時でも良いと伝えてくれ。」







その日の深夜

俺は寝付けないでいた。

いよいよ仇の尻尾を掴むことが出来そうなのだ。


石鹸をまぜまぜしていて気が付いたのだ。

特定の2種類の薬を混ぜ合わせることで、致死性の毒にすることが出来るだろうと。

日本でもそこらにある薬品を混ぜ合わせることで硫化水素を発生させて自殺すると言うのが流行った時期がある。

名前は何だったか忘れたが、入浴剤だっけ?トイレの洗浄に使う薬だったっけ?まあ割と手軽に手に入ったものだ。

んでイッパイ自殺者が出て、生産中止になったのだ。


とまあ、そういう薬がこの世界であってもおかしくない。

何らかの2種類が胃の中で混ざり合う事で…とかな。


「カラッゾ、罷り越しました」

「おう、すまんな急に呼んで」


考え事をしながらゴロゴロとしていると足元の方から声がかかった。

扉には鍵がかかっていたはずだし、窓が開いたような形跡もない。

どこから入ってきたんだ?


「まあいい。ところで一つ思いついたことがある」

「はい」

「2種類、あるいはそれ以上の毒薬を時間差で飲ませることで殺すことはできるか?」

「…そういう薬はあります。2種の薬を併せることで重大な副作用を起こすモノはあります。そちらは調べておりますが…」

「そうか。では3種以上はどうだ?」

「今の所魔界では聞いたことがありません」

「ふむ…」


つまり人間界にはあるのかも知れない。

それをどうにか入手しすることができれば犯行は可能なのではないか。

運動後に飲んだ酒と風呂から出て飲み喰いした食べ物にそれぞれ混ぜればいいのだ。


問題は立証する術がない事だ。

大魔王様の所に下手人を連れて行けば何とでもなりそうだが、大魔王様の所までは手続きが多い。その間に大事な証人を殺されかねない。

指示した者はかなり上の立場だろうから簡単に引っ張っていくわけにもいかないし…うーむ。

まあそれは今は考えなくていいか。


「で、参考までに聞いておきたいのだが。どんな風な作用で薬を併用すると死に至るのだ?」

「私も医師ではありませんので聞いた知識のみですが。本来は心の臓の病に効く薬ですが、2種類を同時に飲むと効果が増強され過ぎて死に至る組み合わせと、それとは別で2種を併せて使うと出血が止まらなくなるような薬の組み合わせもあります。他にも調べれば怪しい物はあるかと思いますが…」

「しかし、毒見役がいたのでは?」


マリアが口を挟む。

でもそれについては解決法は分かっている。


「毒見役は途中で交代したのかもしれん。それから組み合わせが分かっているならその作用を抑えるような薬を先に使うとかな。いずれにしても毒見役の周辺はかなり怪しい。奴らを洗うように」

「ハッ!」

「それから毒の入手先も洗いなおそう。先ほど3種類混ぜるといけないという話が出たが、俺たちが知らない毒薬が新たに開発されているという事もあるだろう…忙しいな」

「いえ、我らにとってもやりがいのある仕事です」

「ならいい。すまんがよろしく頼む」

「ハッ!」





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