ラストバトル④
気化爆弾の熱波は強烈だった。
足元に沸いていた光の兵を焼き尽くし、さらに本体にもかなりダメージを与えたようだ。
だがまあ当然のように回復する本体。治りきると再度召喚される光の兵。
「本体が治癒している最中は兵は召喚されないのかな」
「今のところそのようです。9割を切りました」
「順調…とみていいのかな?」
「まだまだいきますぞい!」
ゴンゾのあたおか飛行機部隊はドンドンと突撃している。
高度は…かなり高い。何千メートルもありそう。
「あそこから落とすの?こっち来ない?」
「大丈夫ですじゃ。いい照準器もありますじゃ。」
俺の出した雨雲より高い位置から落とす爆弾もある。
雨雲と言えばきのこ雲と合体しそうになった部分もあるし、穴が開きそうになったところもある。
自然の雲だと多分一部が晴れて日光が…ってなるところだとは思うが、そこは半分魔法の雲なのでコントロールできる。雲は水分なので…割と自由に操れる。これアカに乗って空から操った方が楽か?
「あぶないですだ!」
「うおおっと」
またビームが飛んできてベロザに救われる。
アカンわこれ。アカに乗って飛んでると多分ビームで落とされる。
航空部隊は先ほどより小規模の爆弾をポイポイと投下している。
勿論それなりにダメージを与えているし兵も削っているが、空に攻撃されてかなり落とされているのだ。
今のアカの速度は複葉機よりは早いと思うが…光の速さのビーム攻撃からすれば五十歩百歩だろう。
「8割を切りました」
「よし…ゴンゾ、まだいける?」
「航空隊はもうそろそろ品切れですじゃ」
「そうか。無理せず下がるように」
「ハッ」
飛行部隊に後退の連絡をするゴンゾ。
無線めっちゃくちゃ便利やな。有線ですらすごいと思ってたのにいつの間にやら無線だ。
戦場戦場で開発する暇もなかったが、これもひとえにベリオロスさんのおかげで…おかげで俺らはこんなに苦労している。クソが!
7割を切ろうかというところで航空部隊は残弾が無くなった。
さすがに特攻しろなんてアホな命令は出さない。
航空機を一機や二機ぶつけたところでアイツは落とせないのだ。
「では参る」
「行ってくらあ」
「頼んだぞ。今のところビームは手からしか出てない。油断するなよ」
「おう!!!」「任せとけ!」
アシュレイとグロードが出撃した。
光の兵を弓が薙ぎ払い、そこにさらに二人が突撃する。
航空機部隊の爆撃で数を減らしていた光の兵は殆どが倒された。
もう最初に召喚された俺らとほぼ同数の…5万程度の兵は片づけただろう。
やはり、イカれた火力だ。
「はあああ!」
アシュレイはビームをあっさりと躱し、肉薄すると巨人の腕を切り落とした。
すぐに再生するが、ものともせずに今度は頭と喉に風穴を開ける。
「せい!はあああっ!」
グロードは左の脛を×字に斬り落とし、支えの無くなった巨人は膝をついた。
「まだまだあああ!」
「ぜあああああ!」
鬱陶しそうに払いのけようとする腕を打ち払い、胸に、肩にと穴をあけていくアシュレイ。
反対の足を切り落とし、さらに追撃を掛けようとするグロード。
『鬱陶しい!!!』
瞬時に回復し、目から、口から。
あちこちからビームをホイホイと撃つ巨人。なんなんだもう!
「ぬ…ぐっ」
「あぶないだ!」
グロードはもう少しで直撃しそうになり、ベロザは味方陣地のあちこちに飛んでくるビームを防ぐのに必死だ。ベロザの魔力はもともと少ないからもう危ない。順調に削れていると思っていたが、このままではこっちが先に削られそうだ。
『ふははは!調子に乗るな異世界のクズ共が!』
瞬時に再生し、あちらこちらからビーム攻撃を撃ちまくる。
コッチの兵はいくらベロザが頑張ってもどんどんと削れて行っているのが分かる。
俺に直撃しそうなのを優先的に防いでいるから…仕方ないが。
アシュレイとグロードも手が出せない。
そうこうしている内に光の兵がどんどん増えてきた。
うーん、やばいか。
「派手な攻撃ですが浪費が激しいようです…半分を切りそうです」
『ふははは!ざまあみろザコ共!これで!』
「みんな!もう少しで半分…なんだ?」
もう少しでベリオロスの魔力が半分になる、ってところで気配が変わった。
『ガ…ゴ…い、嫌だ。俺は消えたくない!俺は、俺はこの世界を、こわ・・・コワ…グ…』
「…なんだ?」
大暴れしていたベリオロスの気配が変わる。
同時に、俺でもわかる程に光の魔力が溢れる。
『ガ…アッ!』
巨人は腕を交差させ、力をためるような素振りをする。
「なんだ?何かやろうとしてるな」
リリーに聞かずとも、腕に力が溜まっているのが分かる。
そしてそのまま右腕を突き上げると、そこから光の柱を産み出し…雲を晴らす。
そして注がれる日光。
「うそだろ!?」
「魔力が回復していきます」
「待てよ!ふんぬぬぬぬ!!!」
負けじと魔力を込め、雲を厚くする。
どうにか日光を遮断できたが。
「…8割まで回復しました」
「せっかく削ったってのに!クソ!」
「怯むな!我に続け!!!」
「「「うおおおおおお!」」」
あっさりと今までの戦いが無駄になった。なんてこった。
俺がショックを受けているとアシュレイが兵を率い、再度の戦いを挑む。
ハッ、頼りになる奥さんだ!
「休むわけにはいかんな…」
「そうです。削れています」
リリーの眼にはこの戦いがどう映っているのだろう。
俺の眼にはまた光の兵がどんどん増えてきているのが分かる。
魔力が少なくなってきて兵の数も減ってきたと思ったのに、元の木阿弥だ。
翻ってこちらの兵はどうか。
前線は疲労困憊、次々とやられているのが見える。
『---!--!!!』
突然声にならない声で叫ぶベリオロス。
光の柱を再度出そうとするが、それはもうやらせない。雲を奴の真上だけ何重にも厚くする。
そして見えている雲の下にさらに雲を。上にももう一つ!
こうすることで雲の中の水分で光は拡散し、一直線に進むことが出来なくなるのだ。つまり雲に穴をあけられることが無くなる。
「ふふん、どーだ!」
そう何回も穴開けられてたまるかよ!