ラストバトル③
前線の戦いは膠着している。
光の兵たちはこちらの守りを抜けないようだが、こちらはこちらで決め手がない。
いくら減らしても次々と兵が生まれているのだ。
ジリジリと押し込まれているように見える。無理もないことだ。
アシュレイ辺りをド真ん中に突っ込ませれば数はモリモリ減らせると思うが、ここで大駒を使う意味がない。何と言ってもこの光の兵は前座もいい所だ。
「どのくらい減った?」
「雨雲で覆われ始めた時から考えて、残り8割くらいです」
リリー・スカウターは優秀だ。
ピピピ…戦闘力いくつですってな具合に残りHPを教えてくれる。いや、MPかもしれんが。
「だいぶイラついているようだな」
「そうですね、そろそろ次の動きがあるかもしれません」
まあ俺はバンザイのまま動けないんですけどね。
雨雲の制御は順調だ。
どう考えても師匠にもらった水属性のおかげだ。
じゃなきゃいくら俺のMPがアタオカな量であってもこんなに魔法を維持することは出来なかっただろう。水属性がなければ出来るのは樹を生やすくらい…ウーム。内政の時にはいいんだが…
「きました」
「動きはじめたか。もう少し削りたかったが…ゴンゾ!飛行隊!」
「出撃じゃあ!」
意気揚々と無線で連絡するゴンゾ。
ベリオロスがこちらに向かって進み始めた。
出来ればもっともっと削って、それから来てほしかったがまあ向こうもアホじゃない。自分のことくらいは分かるのだろう。
まだ数キロ離れているし相手の歩みは遅いから飛行隊は間に合うとは思うが。
「飛行隊が爆撃したらアシュレイ、グロード、頼む」
「待ちくたびれたぞ」
「やっと出番か」
俺は雨雲を維持しなきゃいけないしガクさんが使えないので今は二人しか前衛がいない。
回復役もアフェリスはまだまだ遠い。
「足止めメインでいいぞ。無理すんなよ」
「分かっている」
強い相手だと分かっているのでウキウキしているアシュレイ。
その様子を呆れ顔で見ているグロード。
二人とも頼りになるなあ、って顔で見る俺と、俺の後ろで出血多量で朦朧としているガクさん。傷は治っても出血は戻らないからな…輸血する暇なんてないし…
「ガクさん、無理そうだったら後ろに下がってろよ」
「そうはイカン…俺とて…」
「無茶すんなよ…ベロザ!」
「まかせるだ!!!」
またも飛んでくるビーム攻撃。
ベロザはアムルタートを巨大化させ、防ぐ。
なんだかんだでアイツと盾の相性はいいようだ。
そう言えばコレを貰ったのは巨人族というよりトロルっぽい種族だった。
その辺も相性に影響しているのかもしれん。あるいは先祖だったりだとか。
「いいぞベロザ!でも無理はするなよ?薬草食って肉食っとけ!」
「大丈夫だよ!ちゃんと食べてるだ!」
そう言ってアイテムボックスからもしゃもしゃと食料を食べるベロザ。
シレっとアカも一緒に食べている。
しかも慣れた様子で餌をあげるベロザ…ちょいちょいもらってるのかアイツ。
少し和んだところで航空隊が来た。
「爆撃来るぞ!衝撃波に備えろ!」
「「「応!!!」」」
ゴンゾが野太い声で叫ぶ。
複葉機にあんな大きい爆弾持たせて大丈夫か?ってサイズの爆弾をポイポイっと巨人の上で投下。
勿論巨人もぼんやり見てはいない。迎撃しようと手を伸ばしたところで猛烈な光とともに爆発が。
少し遅れて熱を伴った衝撃波が数キロ離れたこちらまでビリビリと来る。前線の兵が。敵兵はともかく味方の兵まで!そして遅れて音が。
ゴンゾおおおお!何やったんだ!!!
「げほ…なんだ今の!」
「新開発の爆弾を試してみたのですじゃ…酷いことになるとは思っていたのですがここまでとは…」
「何だよ新型爆弾って?まさか核か?」
「核は試してみたいのですがウランやプルトニウムが見つかりませんでしたのじゃ。なので石油からナフサを取り出してさらにナフサをクラッキングしたところ…」
「ちょっとまて、ナフサをクラッキングってなんだ??何でお前そこまで詳しいんだよ」
俺はそんなの全く教えてないし、そもそも知らない。
ゴンゾに聞いて何となく分かったけどアレはいわゆる気化爆弾ってやつだ。
俺が前にユグドラシル王ことクソジジイとマークスと一緒に潜入した研究所で捥ぎ取ってきた資料に書いてあったんだと。何と作り方や必要な機材までご丁寧に書いてあったらしく…
なんでそんなの知ってるんだアイツは!