彼方の事情
「それで、貴女は?」
「私は…」
もう一方の捕虜、どこぞの姫に話しかける。
彼女には見覚えがある。
ジジイとマークスと一緒に帝都に侵入したとき、目が合った美人さんだ。
どこぞの姫と言うが…わからん。俺にはサッパリ覚えがない。もしかしたら原作に登場したかもしれんがもう何年も前の記憶なので良く分からない。
「私はレミア。レミア・ラ・アルスハイルです…」
「レミア…?ベラトリクス魔王の知り合いか?それにアルスハイル帝国の…姫?ん?」
ベラさんの話を出したところでビクリと反応した。
ベラさんの知り合いは確定。それも深い仲っぽいかな。
ベラさんが俺たちを裏切った動機は不明だったが、女が絡んでいたのか。
じゃあまあ、しょうがない。
ある意味納得のできる理由だ。
「レミア・ラ・アルスハイルはベラトリクス皇太子の従兄妹で許嫁だったはずです。ベラトリクス魔王との関係は不明ですが」
マリアが補足してくれる。
居たのか…
「そうか…で、ベラさんとはどうなんだ?ああ、尋問する気なんてない。陣を引き終わるまでの暇つぶしに聞いているだけにすぎん」
「わ、私は…」
かいつまんで言うと。
レミアはベリオロスの婚約者だったが、奴が教国に売られた際にビシバシ働かせるための人質として連れてこられたと。
ところが彼女はそこでベラトリクスに出会って恋に落ち、ベラトリクスは彼女を解放するために裏切った…ベリオロスはその頃工場に缶詰めになって彼女とまともに会話をしたことすらないと。
「ベリオロスはそれを知らされているのか?」
「いえ…知らされていないはずです」
ガエル枢機卿は答える。
レミアも微妙な顔だ
まあ…
「随分いいようにこき使ったもんだ。そりゃブチ切れてもしょうがないだろうな」
俺ならブチ切れちゃうね。
その上で、彼女が裏切ったことをバラされて怒り狂っているのか。
それとも知らずに大切な彼女を求めているのか。
知っていて尚、彼女を求めているのか。
まあどうでもいい事か。
さて、理性的に見えたベリオロスがああなっている理由もわかった。
女を人質に取られてヤク漬けとは…シャブ漬け〇丼かって酷い話である。
ただ、恨みを持った教会連中をボコボコにしたとして。
それで満足して元に戻って理性的になるならいいが、そうでもないなら何とか止める必要がある。
命を懸けても…だ。
アイツは教会を恨んでいた。帝国も恨んでいるかも。もしかするとこの世界全てを…
そして世界のすべてを破壊する力があるのだ。気が向いたときに人類を鏖に出来るだけの力が。
プランはある。
リリーから太陽が隠れると魔力の供給が減ったと聞いた。
それと、今も太陽から続々と魔力が流れ込んでいると。
軍の準備を待つ間…枢機卿と話をしている間に観察してもらっていたが、どうもまだまだ溜まっているようだ。じゃあ夜を待てばいいかと思うが、夜対策が出来ていないとは思えない。
そんな欠陥があると思う?ねえだろうな…恐らくエネルギーをためるバッテリーがあるはずだ。
という訳でどうにかして太陽を隠す必要がある。
もしくはバッテリーをぶっ壊すかだ。
じゃあそのバッテリーとやらはどこにあるの?
サッパリわからない。大体、闇雲にたたいたところで本当に壊せるのか。
さっき通常なら死ぬほどの大ダメージを与えたと思うが、一瞬で治って元気いっぱいになっている。
もしバッテリーをたたいても戻るのだとすれば…やっぱりだめだ。
太陽を隠す方向で進めるしかない。
それにしても、奴はまるで太陽電池みたいな奴である。
それも多分効率がすごく良くて、蓄電池の性能もいいのだろう。
一部分けてほしい。ゴンゾに電源なしで持ち運べる冷蔵庫やエアコンを作らせたい。
地球のエネルギー問題もアイツ一人で解決できそうじゃないの。
NTRは悪い文化。バケモンが生まれてもしょうがないのだ