表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
377/391

空爆

城の防備をハリネズミのように、と評したアシュレイ。

まあそれは間違えていない。


城壁から突き出すのはたくさんの火砲。何個?何門の大砲があるのかさっぱりわからないほどだ。

これだけあるのなら先の戦で使えばいいと思うのだが、まあそうもいかないのだろう。

城壁内ではまだまだ兵器を大量生産をしているようで煙があちこちから上がっている。


街をぐるっと囲った形の城壁なので、中で工場も田畑もあると思われる。

あ、田んぼはないかもしれんな…


「このまま囲って兵糧攻めと言いたいが、俺たちの補給が間に合わんかもしれん。まあ…攻めるしかないか」

「上空から削れば良いかと思いますが」

「これまでにやってるんだけどな。アカと飛行隊で」


空襲、と言えばとても嫌な言葉の響きだが、飛行機による空からの爆撃はすでにやっている。

かなり障壁に弾かれたが、それでも恐らくは大勢の民間人を巻き込んだと思う。

誠に済まないことだが…ここまで来て城壁内に残っている時点で滅ぼされても知らんとしか言えん。


いちおう、攻撃前にビラはまいた。

言うて物資がないので1000枚程度だが、一般市民で逃げるものは追わない事、だが幹部と思しきものは逃がさない。戦後に裁判を受けさせる事などを書いてばら撒いたのだ。


昼のうちに夜のうちに、ある程度の数が外に出たのは把握している。

城をぐるりと囲んでいるので一方だけ開けて、身分改めだけしている形だが、なんせ誰が誰かわかりづらい。シュゲイムやグロードの部下などを動員して確認させているが、見落としもあるだろう。

まあ触手を背中にしょった教皇を間違えるという事はないだろうから…セーフか?セーフだろ?




「アカ、適当に上からブレスパカパカやってきて。工場っぽいところがいいな」

「おー!まかせろ!」


俺たちが町に来てから毎日、それも何回もやっているので…もはや何度目かわからないほどの空襲。

アカは珍しくやる気がある。


前回、逃げ帰った夜襲を覚えているようで…ジジイ二人を喪った悲しみや怒りを覚えているのか、積極的に攻撃を仕掛けている。燃料の問題で航空隊は空襲にやや消極的だが、アカのやる気に引っ張られて出撃るという感じだ。



勿論、対空砲火は飛んでくる。

航空機は装甲がぺらっぺらだ。危ないからかなり上空から爆弾を落とす。

そうすると命中精度は下がる。当然だ。

まだまだ誘導弾みたいなのは出来そうにない。

目で見て、この辺かなってところで爆弾を上からポイっと落とす。まあ…ズレる。


落とす方もまだまだ素人なのだ。

航空機爆撃は、当然のことながら前に進みながら飛んでいる航空機から落とすわけで、爆弾にも当然航空機と同じ速度の加速がついている。


複葉機なので大した速度じゃないとはいえ、何百キロかは出ているだろう。

それを高度1000~2000mくらいのところから落とすわけで。


まあ…狙えるわけがない。

おまけにパイロットは空対空の訓練はしたが、空対地の訓練なんてほとんどしてない。何もかもがこの世界で初めてのような戦場なのだ。

そんな状態で航空機爆撃をやりまくれば戦場となった町は悲惨なことになるし、魔族の評判も駄々下がりである。


というわけでビラを撒いて市民の撤退を促した後、アカによる精密射撃である。

コイツはパカパカ撃つのは慣れているし、少々の弾が当たっても、大砲が当たってもガトリングガンが当たっても…最早大した影響はない。

姿勢制御が崩れて撃とうとしたブレスが明後日の方向に飛ぶかもしれんがその程度だ。

黙ってりゃ一般住宅には飛ばない。

アカの一撃で障壁を撓ませ、俺が丸太をぶち込んで障壁を破り。

その後航空機の爆撃を…というのがここにきてしばらくしてから開発したパターンだ。



もう何回空襲したかわからないし、門の周りは一つ開けてある。

この期に及んで一般の善良な頭のイカれてない市民が残っているとは思わないが…それでも死人は少ないに越したことはないと考える俺は偽善者だろうか。


「もう良いのではないか」

「…そうだよな」


何度も空襲をした。

そして城門や城壁には大砲や長距離魔法をパカパカ撃ち込んだ。

アシュレイの部隊も合流したので撃ち放題だ。


さすがに耐えられなかったらしくあっちもこっちも壁は崩れ、門は大きく折れ曲がっている。

空襲に対する対空砲ももうかなりまばらだし、城壁に撃ち込む大砲に対して反撃の砲はまばらにしか飛んでこない。最初は一発撃つと10発撃ち返されていたものだが。


「…降伏勧告のビラでも撒くか」

「もはや意味ないのではないか?」

「そうかもしれんなあ…」


忍者部隊が夜に忍び込んだ結果、アカがパカパカやりまくった工場付近は特にひどいみたいだ。

火薬に燃え移ったり、油に燃え移ったり…小規模な爆発は何度も繰り返されたようだし、それを止めるための消火剤も不足しているようだ。


ただ、残っている者は目を爛々と輝かせた怪しい者たちばかりで…忍者部隊とはいえ見つかると逃げ切るのに一苦労だったらしい。


「念には念を、だ。今夜もう一度空襲して、明日全軍で行こう。残っているのはだいぶ頭のおかしい奴ばっかりだろうから油断しないように」

「ハッ!」

「航空隊は夜半に一度襲撃。後は休むように伝えて」

「分かりましたですじゃ」


なぜか工兵隊と航空隊の両方のトップになってしまって仕事がまた増えたゴンゾが返事をする。

俺はアカに餌をたっぷりやって一緒に一度出撃。

…あちこちで燻ぶる煙をみながら、教城の中心施設周囲にブレスをパカパカ落としてテントに戻り、寝た。


明日は…地上戦だ。

今日とは違い、惨状がよく見えてしまうだろう。

今から憂鬱である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ