合流
包囲してチクチクと攻撃し始めて一週間が過ぎた。
さすがは人族の首都だけあって防御が固い。
帝国やタラモルでは首都攻略戦は発生しなかったので、防衛機構も何も稼働していない状態のお城にお邪魔させてもらった。普通に入って普通に出ただけだ。
だが今回は防衛機構がフル稼働だ。
教都防衛には科学的な兵器と魔術的な結界をうまく融合させており…まあ一言で言うと、我々は攻めあぐねている。
大砲を撃っても空から爆撃しても決定打にはならない。結界に弾かれ、或いは減衰されている。
アカが張り切ってブレスを撃っても一発だけじゃ防がれて終わる。
上手く連携させないとダメージにならない。
が、連携が決まって防御に穴が開き、爆撃が成功した際の炎もすぐに消し止められている。
消火器でもいっぱい置いてあるのだろうか。
アチラからの反撃は様々だ。
壁の上から、壁の向こう側から大砲がドッカンドッカンと撃ち鳴らされ、遠距離ではライフル弾っぽいのが、ある程度近寄るとガトリングガンが火を噴いてきた。ちょっと歩兵を突っ込ませるのは躊躇われる。
しょうがないからこちらもチビチビと攻撃するくらいしかやってない。
そうこうしている間に西側ルートを通ってきたアシュレイたちが合流した。
コッチは野戦だったから1日で終わったが、あちらは攻城戦だったので時間が多くかかったようだ。
「ハリネズミのようにチクチクと攻撃してきて大変だった」
「で、結局どうしたんだよ」
「私が押し通したのだ!」
豊かな胸を張り上げ、猛烈なドヤ顔をする。
胸が上下に動いたタイミングで俺の顔も上下に動いたのは内緒だ。
「そうか…ご苦労だったな、エルナリエ」
「いえ…結局私の考えなど下らない事でした」
「元気を出せ。コイツの存在自体がおかしいのだ。お前は何一つ間違っていない。胸を張ってそう言えるはずだ」
「いえ…ありがとうございます」
ダメだこりゃ。
アシュレイのせいですっかり自信を無くしちゃったんじゃないか。
普段優秀な眼鏡さんがしょんぼりしている。
だが、これはこれでいい。
強気な眼鏡さんが偶に見せるしょんぼり眼鏡もこれはこれで…隣にいる嫁さんの視線が怖いからそっと目を逸らすけれども。
あちらの戦況はマリアとザイールとどちらもがチェックして競い合うように報告してくれていた。
エルナリエは如何にして損耗を抑えて制圧するかと考えていたようだ。
大砲や土竜攻め、それから川が近くにある地形だったので水攻めなども考えたそうだが…結局誰かさんの脳筋攻めが一番早く、犠牲も少なかったようだ。
まあそのおかげであちらは攻城戦の割には早く制圧できた。
結果論だが、もし俺たちが負けていても城内と援軍とで挟み打ちに会うこともなかっただろう。
そんなこんなで合流した軍を合わせておよそ7万の兵およびその軍を支援をするための集団が集まった。
7万のニンゲンが一日に食べる食料は…およそ10万kgくらいになるだろうか。
水は一日につき一人2Lほどは最低でも必要だから…14万Lだ。すごい量だ。
アカン。サッパリピンとこない。
そういう人にいいことを教えてやろう。
14万Lの水は14万㎏だ。
な?やっぱりピンとこないだろ?俺も全くピンとこない。
まあこの世界では水は水魔法でどうにでもなるんですけどね。
俺のような奴がいれば風呂桶どころかプール一杯分くらい水を出せるのだ。
だから飲み水や煮炊きする分についてはどうにでもなる。
アシュレイは脳筋型だし適性は火に全振りしているが、それでも風呂に入るくらいの水は楽々出せる。
魔法が得意な奴は重宝されて仲間から大事に守られるというのはその辺にもある。
大昔の戦場とかどうしてたんだろう。
日本だと湿度も高く、夏場は色々きつい環境だと思うが…アッチコッチに湧き水とか川とかあるからまだまあ…と思うが、大陸の場合はどうしていたのだろう。川もなければ樹もない、そんなところを行軍していると喉が渇いてヘロヘロになるのも仕方ないな…
そして食料の輸送については飛竜隊にマジックバッグで持たせるのが一番早い。
だがまあ、持てる量の限度もあるので結局は輜重隊を組む。鉄道網があるところまではどうにかこうにか鉄道で運び、そこからは旧来の輜重隊を組んで…大変なのだ。
そんなこんなで必死に後方から運ばれた食料さんは7万人が貪り食うと一瞬でお亡くなりになる。
食べるもの食べれば次は出す。当然だ。
しょうがないよね。にんげんだもの。 かいと
土属性の達者な者が大きな穴を掘り、そこに出したものを集めて埋める。
7万人の大小が溜まるわけだ。
定期的に捏ねれば数年後にはいい土壌に…なるかもしれん。
大量すぎていくら微生物が頑張っても追いつけない可能性はある。
そして、尿をかけまくりながら頑張ってかき混ぜればものっすごい量の硝石が取れる。かもしれん。
7万人分の硝石だ。
でもそれをだれがやるんだっての。
教国側の策を閑話で書こうかと思いましたが、どうせ上手く行かなかった裏話になるからまあいいかで止めました。あっちもバカ丸出しで何にも考えずに戦っているわけでは無いのですが、そこら辺の戦術を書こうかなと思いつつ止め。上手くいかなかった戦術を描いても敗軍の将~~みたいなモノかなと。