表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/391

国境での戦い①

アーク歴1510年 什の月


旧帝国領・エラキス領国境付近




エラキス教国の国境を越えた。


エラキスは西大陸の南にある。

海も近いしメラク山脈から水が下りてくるので肥沃な大地が広がっているかと思っていたが、実際に来てみるとあんまりそうでもない。

水はそれほどないし、ここまで行軍してくる最中には砂漠化しているところもある。


正直なところ、帝国やタラモルのほうがよっぽど土地が肥えていた。

勿論リヒタールのほうがはるかに良い。

成程、草しかないと思っていたリヒタール平原をめぐって争いになるのも仕方ないのか。

まあ、争いばっかりになっていたおかげで国境付近は開発しないルールになってしまったわけだが…



これまで散発的な襲撃はあったが、狂信者による突撃といった感じで…それほど大きな軍が一斉に攻めてきたというのはない。

それでも帝国やタラモルを攻めた時よりは抵抗が強い。

アッチはほぼ素通りだったからな…帝国なんてこの短期間に支配者がホイホイ変わって、もう嫌になってたんだろう。おかげで楽に進めて良かったともいえるが。


やっぱアレだな。

一回どこかに侵略させて、そこで酷い目に合わせてそのあと解放したような状況なわけで。

こうやると人民の抵抗は少ないよってのの見本みたいになってるのかもしれない。

勿論狙ったわけではないが。


帝国なんて国境すぐそこだから魔族に慣れててその意味でもそれほど抵抗はなかったようだ。

教国の支配は随分身分差が酷かったようで…魔族は殺す、混血は殺す、他宗教は殺すって具合で。

どうにもならなかったらしい。


帝国の偉い人も人質に連れていかれたりだとかで、残ってる重臣たちは俺達が行くと教国軍や教国から来た坊さんたちをホイホイ殺して出迎えてくれた。

いい笑顔してると思ったが、後から聞くとそういう訳だったらしい。

うーむ、それはそれでどうなんじゃろ…。



俺らは本格的な支配をするつもりがないから、『犯罪とか反乱とか、変なことしなけりゃ普通に生活していいよ。』ってスタイルでいく。すでにその事は人間界の各国に表から裏から通知してある。

ラム爺の外交が実を結んだのか、割とすんなりと受け入れられているようだ。


逆に支配がヌルすぎて何か企んでるんじゃないかと思われそうだが、特に何かを企む意味もない。

実質的に天下を征圧しました。ってなればそれでいい。

あとはほどほどに平和で、ほどほどに困ることが無くなれば…


「見えたぞ」

「…ああ。わかってる」


はるか遠くにおどろおどろしい気配を持つ城が見えた。

これは俺が魔族だからそう感じるのであって、人族なら神聖な気配に感じるのだろうか?

そう思ってグロードやシュゲイムを見るが、彼らも嫌な顔をしている。

なんだ、だれが見ても嫌なんだな。


「敵襲来ます」

「来たか…」


電探リリーが敵を発見した。

マリアからすでに敵軍が集結しつつあるとの知らせは受けていた。

ここまでロクな抵抗もなかった。

どこかで軍を集中させて、迎え撃とうとしていたのだろう。


「きっちりこちらに当ててきましたな」

「ああ。まあこっちの方が軍は精鋭が多い。どちらかというとこちらに当ててくれた方がうれしいが」


俺たちとアシュレイたち、左右から教国を挟むように侵攻している。

どちらに来るかなと思っていたが、ちゃんと|俺(大魔王)の方を当ててきた。

こっちの方が強いとか弱いとかは無いと思うが、俺を倒せば両軍の侵攻は間違いなく止まる。


こちらにも内通者がいるのかもしれん。

嫌なことだがこれだけの軍がいればそういうこともあり得るだろう。

それか普通に道々に偵察がいたとかかも。そっちの方が精神衛生上はいい。


「迎撃!飛竜隊急げ!」

「アカ、お前もいけ。テキトーにぶっ放してきて」

「おー!」


アカ連れてきているのは全く隠せてないし…そこでばれたのかもしれん。その分働かせればいいだろう。


大編隊と言えばいいのだろうか。

パッと見て100機くらいの大群がこちらに攻めてくる。

こちらから迎撃に出たのはアカとリリー、ギザルムなどのエースを主体としたエリート部隊だ。

それと航空機部隊。こちらは飛行場をあちこちに開設し、燃料の確保を…その辺が難しいが。


敵もなかなか精鋭部隊のようだ。

迎撃に行った航空部隊と戦う者、それをスルーしてこちらの上空まで来ようとするもの。


当然のように何機も抜けてくる。


「ウオータードーム!」


全軍を覆うように水の膜を張る。

範囲が広く、高い。


全軍を覆うと、すぐにバリバリと撃ち込まれる。機銃掃射だ。

水の膜は機銃くらいは防げるが、それにも限度はある。


案の定、何機目かの機銃が当たった時『バツン!』とバリアが破られる感触がある。


「破られたぞ!対空防御!」

「盾あげーい!」


巨人族の盾持ちは巨大な盾を掲げる。

そしてそこに潜り込む一般兵。

何人もが一緒に入る相合傘みたいになっている。


「ゴンゾ!こっちの航空隊は!」

「あと2分ほどで到着ですじゃ!」

「このままじゃ2分持たねえぞ。ウオータードーム!ダブル!」


水の膜を二重に重ねる。

でもこういう魔法は重ねても…


「ああっ!やっぱりだめか!」


二重に重ねた水膜はほぼ同じタイミングで二つとも破れた。

体感だとさっき一重だった時と大して変わらない。

やっぱりこういう魔法は扱いが難しいんだよなあ


「防御!防御!」

「盾に…ぎゃあああ!」


機銃だけではない。何かを落とした。

それが何なのかわからなかったが…着弾した瞬間に分かった。


「ナパーム弾かよ…!やっぱり無茶苦茶しやがる!」


地面を薙ぎ払うかのように爆炎が上がる。

そして水魔法でもなかなか消えない。


「クソ…消火器…はない。砂かぶれ!」


水魔法でも消えない。

土属性魔法で固めても中で燃える…砂をかぶると少しマシか?だが消えるまではいかない。


「風だ!真空を作れ!誰か風魔法!」

「ヨツハ!真空を作るのじゃ!」

「はい!」

「範囲内のやつは息止めろ!」


最終的に風魔法の名手、ゴンゾの弟子のヨツハにより、真空を構築することで火は消し止められた。

コイツはたまたまゴンゾのところに出入りしていたやつだから真空の概念があったが…

間に合った奴は息を止めている。藻掻いている奴もいて、そいつには聞こえていなかったらしい。範囲外のやつが息止めろと大きな声で言っているが、音も聞こえねえんだよな真空は…。


それにしてもすごい威力のナパーム弾だった。

どうにか消火できたが着弾地点、爆発のあったところでは生きている兵を探す方が難しいほどの有様だ。

真空を作った所も炎は消えたが一瞬の高温でも炙られた奴は酷いやけどを負っている。大丈夫かあれは…


「医療隊!急げ!」

「水!水出せるやつ!」


あちこちの消化地点に兵の火傷にぶっかけるために水をバラ撒きながら様子をうかがう。

残念だが、回復して回る程の暇はない。他の部隊に任せよう。


「厄介ですな」

「空中で爆弾を迎撃しても空から火の雨が降りそうだ。といって俺の魔法でも全軍を覆うことはできないぞ」


爆弾を落とされるとどうやっても火の海になりそうだ。

上空で爆発させるとより広範囲に火が飛び散りそうだし…


というわけで上空に来られる前に迎撃した方がいい。

それが出来りゃやってるともいうが。

撃たれた後は…土魔法で傘でも作るとか…着弾点に真空を構築するとか?水膜をもっといっぱい張るとか…風で弾を押し返すとか…うーむ。


「やれることは何でもやろう。着弾点に土魔法で傘を作って、そのあとすぐ真空にするとか。弾押し返すとか?なんでもいい」

「そううまくできればよいですが…」

「近寄せないことが一番…ツリー・トルネード!」


早速抜けてきた機体に木の竜巻を食らわせる。

相変わらず一発一発はクソみたいな威力だが、ひどい気流でそもそもまともに飛べなくなる。

そうこうしている間に一騎撃墜だ。


「ふう、対空防御をしっかりやっていくしかないんじゃないか」

「そうですな…と言いたいところですが前からも来ましたぞ。右からもですな」

「…マジか」


上空ばかり見ていたので反応が遅れた。

偵察は出しているが、相手の移動が速すぎる。

気が付けば周囲は夥しい数の戦車や歩兵、そして銃器に囲まれていた。

すでに半包囲されかかっているのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ