侵略
アーク歴1510年 捌の月
旧アルスハイル帝国領
帝都 アルス
進軍は好調だ。
旧帝国領を落とした。
落としたというと物凄い攻城戦の後、攻め落としたようだが…抵抗らしい抵抗はほとんどなかった。
ビラ作戦の後、少し押すと敵は崩れた。
あっという間の崩壊で追撃の出だしも少し遅かったかと思うくらいだったが、その後もまたひどい。
追撃戦が始まったというところで敵は潮が引いていくように一斉にいなくなった。
魔族の足の速い奴でも追いつけないほど一気に引いていったのだ。
勿論取り残されたのも沢山いてそいつらは捕虜になったが、精鋭部隊らしきものはあっさりといなくなったのだ。
そして帝国に入るときにもそいつらは居なかった。
攻城戦になると思って気合を入れていたので正直肩透かしだったが、今回が楽に終わったので…後で苦労があるかもしれんな。
とまあ真面目な軍事の問題はそこら辺までで終わる。
割とどうでもいいことかもしれんが、気になることはある。
初代勇者であるアルスの末裔が築いたとされる帝国、そして彼の名をそのまま使っている帝都だが…そこにある銅像は本人とはかけ離れた顔立ちをしているのだ。
「アルスに見えねえなあ」
「全く似ておらんな」
「もっと凛々しかったぜ」
「こんなツンツンした頭じゃなかったけど…それ以前に顔も全く似てないし服も武器も…」
ガクさんとグロードと、そして俺と。
本人を知る3人は銅像に文句を言いまくる。
勇者アルスが凛々しい顔立ちだった。
アイツは金髪のイケメンだったことは確かだが、この銅像は髪形も顔も全く似ていない。
どうせあれだろ。甥っ子が似てるかもって話になって適当に似顔絵にしたあの人みたいなことになってんだ。
「…まあ、わざわざ銅像を引き倒したりしなくてもいいだろ。アルスだって別に銅像立っててもそんなに嫌がりはしないだろうし……嫌がらないよな?」
「さあな…あの方は英雄視される事自体を嫌そうにしていたと俺には見えたが」
「話を聞くに罪悪感も有っただろうし…な」
塔の上で出会った本人は罪悪感の塊だった。
正直英雄として祭り上げられるのも苦痛かもしれない。
ただまあ、せっかく作られた銅像を壊すほどでもあるまい。
どう見ても古い銅像だ。それなりの歴史があり、民にも恐らく慕われていただろう。
折角そこそこ穏便に侵略できたのに、わざわざ住民の恨みを買ってまで銅像を倒すかというと…
それに、エラキス教国の配下になってしまった時も壊されなかったのだ。
それを魔族が侵略してすぐぶっ壊したなんて言われても困る。
本人に似てないから壊すって言われても意味わかんねえだろうし。
「まああえて壊して嫌われることもあるまい。保存だ。酔っぱらった馬鹿が壊さないように見張っとくように」
「ハッ」
「明日はここに市民を集めて演説でもしよう。…塔の101層を攻略すればアルスに会えるとでも言ってやろうか。ふふ」
グロードもガクさんも少しにやっとはした。
まあでも実際の話として…キリがいい層にいる番人は知り合いだから何とかなるかもって感じだけど、それなり以上の強者でも雑魚で詰みそう。
レベルをのんびりしっかり上げて、無理するところは無理して…ってうまくやらないと攻略は進まないだろう。まあそこそこの階層でドロップするモノでも一攫千金は狙える。
上手くやれば案外行けるんじゃないのか。
忙しくて投稿忘れてました。
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