後方攪乱②
飛行場はすぐ見つかった。
木造や石造りの家屋に田畑と森が広がる中世チックな世界の中、急にアスファルトで整地してある土地があるんだもん。そりゃ目立つよ。
上から見る限りアスファルトで舗装はしてあるもののその横にある施設は木造だ。
上からポコポコ火球を撃ってアスファルトって凹むのか?滑走路が無事だと困るんだが…
機体は見えないが出撃した後だったかな?まだそれとも残っているのか?わからん。
気になるのはタイヤだ。ゴムタイヤは完成しているのだろうか。
鹵獲した機体はタイヤついてなかったんだよな…でも鉄タイヤ、鉄輪とかじゃブレーキ掛けてもガン滑りになりそうだし転倒の可能性が極めて高い。ゴムタイヤはそこそこ以上の完成度なのだろう。
ウチのよりいいならまた参考にしたい。
ゴムの木はあった事だし、現代のタイヤは無理にしてもかなりのタイヤは出来ているのだろう。
ウチでもそこそこレベルのは出来たし。あくまでそこそこ。
まあ問題はエンジンっすよ。
14気筒エンジンとか16気筒エンジンとか意味わからんし。
いや、意味は分かるし原理もそこはかとなく理解できる。だが俺の頭でそれを設計しろと言われても…
星型って一体なんぞ。何で横に並ばずぐるっとしてるんだ?
どういう順番で動くの?回るの?交互に動くの?
…という訳でエンジン開発辺りはゴンゾとその弟子、学校を卒業して極めて優秀な成績を修め、機械に興味のある奴らに積極的に開発させることにした。設計図もいただいてきたし頑張ってくれるはず(丸投げ
原理的には蒸気機関と大して変わらんはずだ。
何かの動きでピストンを行ったり来たりさせてその力を回転に変えて…ってことで開発が順調かどうかはよくわからんが、この間聞いた所だと出力が上がっていると言っていたので、『なら良し』と答える。
ゴンゾにはとりあえず飛行機ぶっ飛ばせるくらい出力が出たらドンドン出力を大きくして、ある程度の所まで行ったら今度は小型、軽量化を図る方針で、と滅茶苦茶フワッと指示をした。
『ある程度』がどこなのか、俺にはさっぱり分からん。
ガソリンエンジンの開発が終われば電気モーターの開発もしてほしい。
電気と言えばエジソンは電話と竹のフィラメントで電球を作った。
その辺は俺もフワッと伝記で読んで覚えていたので、ふわふわっと伝えてある。そしたらすぐに電球が出来た。ぱねえわ。
発電の理屈は蒸気機関と大体同じだが、こちらは雷属性魔法と言うモノが有るので何となくイメージは早かったのだろう。
平賀源内がエレキテルを作った時代には電気と言うモノを理解できる人がどのくらいいたのだろう。
案外多かったかもしれん。静電気と同じやで、って。
だが、それが現代にまでドンドン進化して、電灯は勿論、煮炊きに通信、移動手段に娯楽…あらゆる方面にまで使われるようになるとはだれも予想できなかったのではなかろうか。
静電気と同じやでって言われても常人には『ふーん?』で終わるだろう。
『なんでこんなもん作ったんや?』と言われるのがオチだ。
所がヴェルケーロの学校で俺が電気は色々ぱねえんだってやってたおかげか、領民の変な情熱のおかげで発電所は出来た。出来ちゃったんだ。
まあ発電所というよりは発電研究施設と言ったところか。
これから電気を使って何をどうするか、それが不明なままとりあえず電気を作ってみた。
何と言うアバウトさ、危なっかしさ。
研究者のぁゃιぃ情熱を感じる。
だが、おかげでその周囲は電気で動く不思議な工作機械やこの世界じゃやたら明るい照明、電球が生まれた。電球のおかげで24時間働ける恐ろしい企業戦士となったゴンゾたちは煩悩と情熱を発明にぶち込み、ついに航空機を完成させた。
本人たちは未完だと言っているが、どう見ても完成品だ。
最高速はアカにも劣らない程に出る。
何と天馬よりも速く飛べる飛竜より、さらに速い。
グロードの持っているグリフォンと比べてもほぼ同速。どうしてこんな事がおこったのか。
これ以上求めるならジェット機じゃないとダメなんじゃね?なんてことを言うと今度はジェット機の開発に乗り出した。プロペラじゃなくて何か不思議な羽みたいなのでジェット気流を…というとまた良く分からんまま絵を書かされ。
昔乗った飛行機の絵を書いて、そしたら羽の構造がどうだったこうだったと質問され…分かるか!!!
分かるのはプロペラじゃなくて風を吸い込んで後ろから吐き出す時に空気を圧縮してドカーンと噴き出させる。その圧力で前に進む?んじゃないか?わっかんね。
それで…
「おい、あれぶっこわすのか?」
「応…たぶん格納庫に飛行機居ると思うからそいつらぶっこわそ」
「おー」
また思考がぶっ飛んでいった。
いかんいかん、今は戦場なんだぞ。
飛行場の横には倉庫のような物がある。
まあ普通に考えて格納庫だ。
アレ。次はアレ。とアカに指示を出し、ドカーンとブレス。もういっちょおまけにドカーン。
建物は木製じゃなかったからやや燃えにくかったが、途中で燃料にでも着火したのか勝手にドッカンドッカン燃え広がり始めた。滑走路は一発撃つとちゃんと穴が開いた。ついでに俺も樹を生やして嫌がらせする。よし、このくらいでいいだろう。
「よし…これだけ騒げば戦場にも聞こえるだろ。さー、後ろから掻き回してやろう」
「おー!」