後方攪乱
カイト視点に戻ります
「えーっと、このままあの山越えて海の方に出て…」
「これ海だよな?サカナ食っていいか?」
「ちょっとだけにしとけよ。時間ないからな」
リヒタールの防衛は問題なさそうだった。
敵軍の様子をチラッと見たが、無いはずの壁が有る事でワチャワチャしていたし、大砲はあっても攻城兵器のような物は見当たらなかったので…おそらく野戦の備えしかないのだろう。
砲でバンバン攻めて来るにしても、もっと時間がかかるはず。たぶん大丈夫だろ…たぶん。
という訳で主力は決戦が行われるであろう大魔王城方面へ送った。
隘路になっている峠で足止めし、突破されそうなら程々の所で下がって迎え撃つ予定だ。
そして俺は単騎で海から回り込む。
途中で輸送船らしきものを見かけたら…ゴリゴリ沈めていく。そして基地を破壊、敵軍の動揺を誘う。並の飛竜なら体力も力も持たないだろうが、アカの火力に持久力があれば可能だろう。
敵軍とは言えゴリゴリと削るのは何とも言えないが…悪く思うな。
リヒタールから発ち、海路を飛ぶ。
途中で一度休憩。アカに飯を食わせて自分も飯を食って…再出撃だ。
アカは燃費が悪いからブレス連射するとすぐ疲れたとかいうからな。
事前にいっぱい食べさせておかないと。
「カイト、船!船あったぞ!」
「あー、ホントだ」
「あれ敵?味方?」
「…敵だな。沈めよう。ブレスよろ」
「おー!ぎゃおおおん!」
そんな訳で第一軍船発見である。
下からワーワーと声が聞こえる気がするが、知ったことではない。
まだまだ元気いっぱいのアカさんにかかれば軍船も一発である。
ブレスが当たったところに大穴が開き…やがて炎上して何度か爆発。そして二つに折れて沈んだ。火薬にでも火が付いたのだろう。
乗員は…まあ何人も脱出していたようにみえる。
助かるやつもいるだろうし死ぬ奴もいるだろう。
悪いけど、これ戦争なのよね…
さあ、次行こうか。
「ぎゃおおおん!がおおおおん!ぐおおおおん!」
ブレスをドッカンドッカンと船に放つ。
ベラトリクス領に近寄るにつれ、船が増えた。港にはいっぱいある。
軍船か、それとも商船かは悪いけど俺にはハッキリ見分けがつかん。
だから大砲をいっぱい積んであるのは敵だとアカに教えた。
もし海賊用に砲を積んだ商人なら正直気の毒な事をしたとは思うが、悪いとは思わん。
こんな時期にこんな所に居る奴が悪いのだ。
「2番目のが一番きれいに沈んだな」
「水のさかいめに当てるのが一番いいみたいだぞ」
「ほー。喫水線か。なるほどなあ」
「キッスイセン?わかた?」
アカはコツがわかったのか、ドンドンと船を沈める。
一発で竜骨をへし折り、沈めるのが楽しくなったらしい。
「がはは!カイト!いまの見たか!」
「見た見た。パネエな!」
「がははは!船いっぱいある!もっとバンバン撃つぞ!」
「やっちまえやっちまえ…あ、天馬が来たな。アッチは俺がやるからお前船沈めろよ」
「わかった!がおおおん!」
調子よくポコポコと火球を撃つアカ。
だが、最早ポコポコなんて可愛らしい火力ではない。
ドオオン!ドゴオオン!という轟音とともに口から撃ち出され、着弾と同時に爆発。
船の装甲が薄い所に当たったやつなんて木をぶち抜いて穴をあけ、沈没させている。
火なのに貫通力があるのが…一体どういう原理になっているのかが気になるが…まあそれはいい。
「ツリーアロー・オクタ!アローペネトレイション・クワトロブル!アローストーム・トリプル!」
空中に飛んでいる的を撃つのはとても難しい。
あちらもこちらも動いていて重力が働き…まあマトモに当たらない。
なので数をぶちまける。
最初に弾幕を張って敵を集め、集めた所にドカーンだ。
「アカ!俺もいっぱいやったぞ!見たか?」
「見てない!がはは!ぎゃおおおん!」
「見ろよちょっとは!?」
どうも的当てが楽しくて仕方がないようだ。
いや、的にしては大きすぎるし足も遅い。
的当てというよりは何秒で沈めるかチャレンジだ。
そんなチャレンジやられる方はたまったもんじゃねえな。
こうして見えている船を全部沈め、さらに迎撃に出て来た天馬もフルボッコにした。
天馬隊は生き残りはいるだろうが、まあマトモに出撃は出来ないだろう。
さて、次の目標は有るという情報の飛行場だ。
まあ空から探せばすぐ見つかるだろ。