表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
359/391

対ベラトリクス戦線②

ベラトリクス方面


アシュレイ・アークトゥルス



空軍基地らしきものが完成しつつあることを確認している。

だがリリー殿の偵察の結果、2つあると。

海岸線にある1つは分かっていたがもう一つは森の中に上手く隠されていたのだ。


先制攻撃で潰してしまいたいが、あちらの基地に近寄るとこちらの攻撃より先に教皇領所属の天馬とベラトリクスの竜騎兵が出てくるだろう。

なかなか飛竜のみで遠距離を移動し、さらにその後に上がってきた航空戦力を全てを蹴散らし、おまけに基地を壊滅させるほどの攻撃を仕掛けるのは厳しい。虎の子の航空隊に爆弾を持たせれば可能かもしれないが、敵戦闘機も出て来るだろうし…



2つの基地はどちらも敵地の深い所にあるため、大魔王城方面から地上を進んでの攻撃は難しい。

一部の強者を選び、少数で潜入・破壊するという方法も無くはないが…



「まあ仕方あるまい。対空防御を固めるしかないか…」


あまり現実的ではないな。

そんな事より対空防御について考えよう。


カイトの世界にはコーシャホウ?というものがあるらしい。

高い所に来た敵を撃ち落とすためのモノだが…命中率は極めて低いようだ。

数うちゃ当たるだ、とカイトは言っていた。

実際に打ってみてもうーん?というところである。


何せ空だ。

そもそも高高度まで弾が届かない。届いたと思えば当たらない。

アカに限界まで高く飛んでもらったが、下にある建物が麦粒ほどの大きさだった。

試しに下から礫を投げてみたが、なかなかうまくは当たらない。

空から狙って当てるのは難しいが、地上から空に向かって撃ち落とすのはっと難しいだろう。


つまりこの場合の対空防御とは飛竜乗りにそれなりに良い武器を持たせる事、飛竜に魔力を与え、温石などを用いて保温、体力の温存を図ることにある。

どうだろう?これで十分かと言われると…


カイトの世界では高度1万メートル以上まで航空機は上昇できるらしい。

あの見せてもたっら航空機でも2000メートルくらいまでは昇れるのではないか。

アカは5000を超えていると思うが1万はどうか。現行の航空機より遥か上空から攻撃できるのは間違いない。

その一方で飛竜は精々1000メートル程度の所だ。余程無理させても2000まで上昇したころにはヘロヘロになっている。相手に上を取られることになるが…さて、難しい問題だな。


「ゴンゾ殿、こちらの航空機はどうだ?」

「一応完成しておりますが…燃料の問題が難しいですな。コピー元と同じ程度の物は作れましたが…」


ドワーフの金属加工技術に旋盤を用いることで寸分違わず同じものは作れた。

そしてそこから改良するアイディアもある。

羽を一つにしてプロペラも変えるらしい。まだ試作中でどうにもこうにもならんみたいだが。


だが、燃料に用いるガソリンエンジンのオクタン価がどうとかこうとかは私にはサッパリわからない。カイトももう一つよくわかっていないようだ。

ゴンゾは分かっているようだが、パイロットたちはどうなのだろう?


よく分からない物に命を預けているのやも知れぬ。

パイロットに志願した者たちには頭が下がる思いである。


「ううむ…こちらの航空機はある程度隠しておこう。科学?の知識のある者がもっと増えてもしいものだが…」

「学校で教えてはおるようですがな…魔界中からもっと知性の高い者を集めた方がよいのではありませぬか」

「この状況ではなあ…」


二人して溜息を吐く。

科学が発展すると私のような武を持っていてもどうしようもない兵器が生まれてしまうようだし、あまりに発展しすぎても困ることしかないと思うのだが。


「リリー殿より鏡通信が入りました。敵前衛、こちらに向かっているようです!」

「よし…迎撃準備急げ!」

「「はい!」」


ようやく戦いの時間だ。長かった。

悩む時間より戦う時間の方が好みだ、なんて言えば奴はどんな顔をするだろうな。





敵軍の様子は今までと大差ない。

少なくとも私の感覚ではそうだし、ドレーヌやエルナリエに聞いてもここ最近の軍団と装備はそう変わらなく見えると。


だが、異常は少し遅れてやって来た。

ブオオオオンという音とともに航空機の姿が見えたのだ。


「やはりやって来たか…飛竜隊、迎撃用意」

「「ハッ!」」


かなり高い所を飛んでいるが、それでもあれくらいなら届くのではないか、そう思う程度ではある。

後は戦闘力の問題だが…


「ゴンゾ殿、こちらの航空部隊は」

「いつでもいけますぞ」

「では出発準備はしておいてもらいたい。飛竜で迎撃できなかった場合には出てもらう事になる」

「ハハッ」


上空の状態が気になる。

母が使っていた飛竜が私に譲られているので、私も空で戦うことは出来る。

だが、そもそも飛竜で到達できない高さに居るなら…マトモに戦うことすらできない。

ならば地上で攻撃に対して防壁を張る方がよいだろう。


上空を見ていると前方からドンドンと兵が進んできているのが見える。

隘路になっているのでそれほど一度に多数は来られまい。

正面に現れるのは精々数百単位だろう。と思っていたが…


「…なんだあれは」

「センシャですのう。若が盗ってきた設計図に書いてありましたですじゃ」


キュラキュラと不思議な音を立てながらゆっくりと大砲がこちらへ進んでくる。

こちらの銃弾や魔法がパラパラと当たるも、ダメージになっているようには見えない。

そしておもむろに砲がこちらを向いた。


「いかん。皆、対砲撃防御!」


巨人族が鋼鉄の盾を構え、魔術師が防護障壁を張る。

ドオオオン!という音とともに撃ち込まれる砲弾。


着弾と共に『バリン』と障壁の砕かれた音が鳴り、弾き飛ばされる鋼鉄の盾。

盾の持ち手であった巨人族の戦士は無事のようだが…腕が折れたか。

奴はもうこの戦いでは使い物にならんな。


同じようなセンシャとやらが後ろから何台も来ている。

これではひとたまりもないな…通常の軍であれば。


「こちらも砲撃開始しろ」

「砲撃開始!砲撃開始!」


私のいる陣の少し前から大砲による砲撃が始まった。

射程はセンシャのモノとそう変わらないようだ。なので当然センシャにまで届く。


1発命中。まだ動く。

だが、2発目、3発目と当たるたびに動きが悪くなり…最後にセンシャは動かなくなった。

コチラは先と同じような負傷者が数名出たのみだ。治癒魔法をかければ治る範囲である。


「「うおおおお!」」

「まだまだ次が来るぞ。歩兵も来たようだ」


兵は浮かれているが、あのような物は本命ではない。

恐らくはもっと広い所で運用するものなのだろう。

狭いのでこちらの砲撃も集中しやすい。アレでは狙ってくれと言っているようなものだ。


確かに装甲は厚い。だがその分かなりの重量があるのだろう。動きが遅いのだ。

アレでは砲撃部隊に盾を沢山構えた物と変わらない。


あのセンシャが平野を高速で走り回りながら砲を撃ちまくる状況を考えた。

成程、そうなれば中々手ごわいだろう。


敵も同様の考えか、残りのセンシャは引っ込めたようだ。

砲と銃、そして歩兵と騎兵の通常の戦いに戻った。

残るは上空の戦いだ。


「…さあ、これからが本当の戦いだぞ」


上空はどうか。数ではかなり劣る。

おまけに慣れない敵兵科。…かなりの苦戦が予想される。


粛々とそして迫りくる歩兵。

見慣れぬ武器を持った者共…


敵に異様な圧は感じない。

成程、センシャは恐ろしい。だが砲弾くらい私の方に飛んできても何と言う事はない。


もちろん私だけではない。

カイトもガクルックスも、恐らくはこの世界の頂点に近い位置に存在する者たちは砲弾の一つや二つ、何と言う事はないだろう。銃のように数が集まれば別かも知れぬが、大砲では人間の大きさであればまともに狙う事すらできまい。


万の敵が押し寄せて来る。

この無数の敵軍の中にベラトリクスはいるだろう。

だが…敵に魔王がいても、航空機がいても、私はそれを特に脅威とは感じていない。

それが何より恐ろしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ