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リヒタール戦線異状なし!?

序盤はカイト視点、途中からは侵攻軍からの視点になります

アーク歴1510年 漆の月


リヒタール領



攻め寄せてきた敵軍の偵察が帰ってきた。

報告を受けると、敵の主力は帝国軍と、そして教国軍の旗が見えたようだ。

見た感じ聖騎士団は見えないし、集まっている軍も格別練度が高そうでもない。

帝国軍なんてイヤイヤ連れて来られた感があると。


「ふむ、士気は随分低そうだな」

「城壁に戸惑っている感もありますなあ」


副官としてついて来てくれているのはギザルムだ。


先日までの軍議では主力は全員集まっていたが、各方面に散っている。

俺とガクさんはリヒタール方面、アシュレイとドレーヌは大魔王城、そしてシュゲイムやウルグエアルはヴェルケーロと言った風に分かれている。


移動は蒸気機関車が使えるので早い。言うてリヒタール・ヴェルケーロ間は特急を使って1日がかりだが。

昔は1か月かかってたことを考えれば随分早くなったもんだ。寝てれば着くしな。

人員の輸送は幹部だけではない。

兵の輸送も物資の輸送も必要になる。

当然の事だが、それも蒸気機関車のおかげでスムーズだ。

線路が通ってないところは徒歩なので…一部コメントに困る所もあるが。


「一寸偵察飛行に行こうか」

「ハッ」


敵は指揮が低そうではあるが、新しい兵器を持ってきている可能性はある。

特に気になるのは航空機だ。


車や戦車は成程確かに有効だと思う。

だが、これほど分厚い城壁が有れば射程の問題さえ除けば大したことは無い。

ライフリングを成功させ、後送式の大砲に変えたとして…いや、それでも上空から今のアカが襲い掛かれば砲手ごと破壊できる。


だが、問題は航空機だ。

性能によっては飛竜を超えるくらいは出来るだろう。

体感でしかないが、恐らくアカですら速度は500㎞/hも出ていないからまともな戦闘機が出てきたらやられる。

戦闘機に銃弾を撃たれれば…あれ?たぶん大丈夫だな。

むしろ8mm程度なら何ともないんじゃないか。


以前のことだが、アカが一発撃ってみろとうるさいので大砲を撃ち込んでみた。

すると、何処からか取り出した棍棒でぶっ叩いてホームランにしていたのだ。

勿論、弾が飛んで行った先にある建物が破壊され、中からゴンゾが出て来てめちゃくちゃ怒ってた。

俺も一緒になって怒られたのだ。畜生。



でもそう考えればミサイルを持ち、マッハで飛行する現代の戦闘機なら兎も角。

機銃を撃つことが精一杯の複葉機など物の数ではない。

第二次大戦時の戦闘機であっても今のアカならちょっと痛い程度なのではないか。

防御力が全く違うからな…


でもまあ、アカは何ともないにしても普通の飛竜はどうだろうか。

それから戦闘機ではなく爆撃機だ。

上空から爆弾をポイポイされるとこういう拠点はどうしようもない。

動かない街を一方的に蹂躙してしまえるのだ。まあ動きの遅い爆撃機なら飛竜でも撃墜は出来そうだが。


…兎に角、航空機は発見次第潰したい。


そんな思いを抱えつつ、空へ。

敵軍を見回してもそれほどどうと言う事はなさそうだった。

ハッキリ言えば旧式の軍隊である。


辛うじて鉄砲や大砲は配備されている物の、殆どが槍弓を主力としているような部隊だった。

俺たちを見た天馬も上がってきているが、大した数でもない。圧も少ない。

つまり―――


「やはり外れか。ギザルム、此処の防衛はガクさんとギザルムの二人で協力して当たってほしい。」

「ハッ」

「本命は恐らく、ベラトリクスの所だろう…海路で来ているだろうから、アカで船を沈めて一網打尽にする」

「良いですな」

「その後はここの兵力が先鋒になる。目の前に居る帝国軍を蹴散らして教国領まで進むぞ。そのつもりで頼む。それと、諸侯軍は置いて行くが、アークトゥルス軍は大魔王城に移動させて」

「心得ております」

「…では頼んだ。アカ、あの後ろの方の大砲狙って。」

「おー!」


俺はアカにブレスを一発撃たせると戦場から移動した。






アーク歴1510年 漆の月


リヒタール領


帝国軍 エジンド・ウルサロス将軍



「確かに壁があるな…」

「あちら側の壁はすべて壊していたはずですがね」

「前回、リヒタール攻略時に私もここに居ました。間違いなくこちら側の壁は破壊しましたが…」



眼前には立派な城壁を備えた要塞がある。まともな数で防衛されれば力押しは難しいと感じざるを得ない。

私と同じことを教国の坊官殿も感じているようだ。

教国の軍務役人でもあるケラエナスという坊官だが、坊主というよりは軍人だ。

生まれを鼻にかけた貴族や、宗教かぶれで信心があれば何でもできると考える阿呆よりも現実的で我らもやりやすい。



そうして帝国の宗主国となったエラキス教国の命を受け、私は旧帝国軍2万の軍勢を率いて出立した。

2万の軍とは言え、我ら帝国軍の士気は低い。

何せ手伝い戦であるし…それに相手はあの魔王だ。


『カイト・リヒタール』の名は人間界にも鳴り響いている。

まだ生まれて20年そこそこと実に若い魔族であるにも関わらず、魔界のほぼ全土を支配する恐るべき実力の持ち主だ。


恐ろしい赤龍を従え、旧主であったアークトゥルスの姫を無理矢理娶り…美女とみれば見境なく拐し、手籠めにするという話もある。ある意味羨ましいと思うのは致し方なかろう。


我らは2万だが、教国軍はあちらこちらから兵を率いて今やこのリヒタールに詰め寄せる連合軍は10万に近い。魔族共も城壁のない砦などに頼らず野戦に出るだろう。

さすればこの大軍で鎧袖一触に屠ってくれようと思っていた。


意気軒昂、士気もおかしいほど高かった我が軍も、相手がカイト・リヒタールであると知ると次第に萎縮していった。ヴェルケーロの火殺しやの噂、あるいはリヒタールを逃れた者たちから聞いた地獄の底から突如出現し、人々を生き埋めにするという噂を兵が思い出したのだろう。

途端に兵の足が重くなったと見てわかる程だ。


その矢先、城から現れた恐ろしい魔力を持った赤龍とそれに乗ったこれも劣らず恐ろしい魔力の若い黒髪の男が軍を奇襲していった。

兵はその魔力に中てられたか阿鼻叫喚の混乱。そして混乱の中、砲と火薬が焼かれた。


先行きが不安になった所で何とか軍を整えて再び布陣すると、そこには斥候の報告通り立派な城壁があったというわけだ。

これはいかに火力があるとはいえ厳しい戦いになると予想せざるを得ない。



「しかし、以前はあのような壁はなかった。張りぼての城壁という事はあるまいか、カイト・リヒタールは詐術も用いるというぞ」

「さて…砲を撃ちかければすぐにわかるかと思いますが」

「尤もだ」


すぐに砲戦が始まった。

2発、3発と壁に当たるが崩れる気配はない。オマケにあちらからはドンドンと撃ち返してくるし、我らの大砲は先ほどの赤龍の攻撃で2割ほど損傷している。どうも面白くない。

開発中の新兵器でもあればどうかと思うが、我らの持ってきた武器では力押しは厳しかろう。


「ここは事前の軍議の通り、持久戦に持ち込むしかないのでは?作戦通りに後方が崩れ、奴らが浮足立つのを待ちましょう」

「そうだな…そうしかあるまいか」



こうして持久戦の様相を呈する事になった。

我ら帝国軍の士気の低さをこの坊官殿も良く分かっているのだろうな。

将軍は今後出番ないと思います…

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