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リヒタール奪還作戦

アーク歴1510年 漆の月


リヒタール領




作戦は上手くいった。

マークスほどの使い手がなかなかいなかったので苦労したが、ガクさんの全面協力の下でどうにかやりきったという感じだ。


まずはリヒタールの東側から攻める。

盾を持ち、犠牲を最小限に防いで壁に向かって突撃。

当然砲の支援も行うが、何度も突撃を繰り返し、何度も弾き返される。

そして捨て台詞を言いながら撤退。

城門から軍が追撃に出てきたところで…リヒタールの壁の中からいきなり俺たちが現れる。


どこから?

勿論、土中からだ。

ガクさんたち土属性魔法使いを総動員して、戦争が始まる前からリヒタールの北方の山から穴を掘り…何日もかけて城の真下へと掘った。ガクさんは土属性のエキスパートだ。穴掘りくらいなんてことはない。

大昔の土竜攻めなんて大変だっただろうなと思うが、魔法で穴掘ってトンネルを固めて…って出来るのだから距離が長くてもまだマシだろう。



付け加えれば、リヒタールの町はもともとコチラの地元だ。

周囲の地形をよく知ってる奴はこちらにいくらでもいる。

おまけにマリアの部下で残っている奴もいるので、誘導も出来る。


やっぱり勝手知ったる土地ってのは最高だ。

穴の出口は懐かしの畑。

裏庭と言うか裏森を切り拓いて作った畑だ。

まあ今は畑はつぶされて何やら倉庫のような建物が出来ているが。


「懐かしいな」

「ああ…泥だらけになって親父に怒られたたもんだ」


泥だらけになったのは主にアフェリスが、怒られたのは俺が、だが。

俺とアシュレイは靴や手袋、ズボンの一部くらいしか汚れてなかったのに。

頭から足の先まで泥だらけになっていたのはあいつだけだが、怒られたのも俺だけだ。解せぬ。


「感傷に浸っている場合ではないな。行こうか」

「ああ」


アシュレイに促され、領主館へ。


「き、貴様らはここが一体…」

「うるさい」


ここは親父の執務室で、俺たちの館だ。

勝手に入って汚しやがって…


お袋の絵も無い。まあ良いか。

今となっては実物にいつでも会えるし…それほど会いたいとは思わな…


「いでっ!?」

「いた!?」


何故か頭をパコーンとシバかれたような衝撃が。

どうやらアシュレイにも有ったようだ。

お互い、何を考えていたかは言わぬが花だな。と思ってそこから口を噤んで外に出る。


「残兵の掃討を急げ。それと、心配ないとは思うが長距離狙撃があるかもしれんから、建物の窓が見えるような高い樹はバサバサ切ってくれ」

「ハッ」


この世界は未だガラス窓が殆ど無い。

大魔王城とアークトゥルス城、ヴェルケーロなどの一部とドレーヌやガクさんベラさんの所辺りにチョコチョコガラス窓を設置しているがそのくらいだ。生産も遅いし割れるしで…見た目はすごくいいんだけどな。なかなか普及しない。


リヒタールは一部ガラス窓になっていたが取られた際に全部割れたっぽい。

そして復旧していないから窓は木戸でフルオープンか、閉めて真っ暗になるかの選択肢しかないのだ。

という訳で会議の時なんか窓はフルオープンである。

子供のボールや野鳥が入ってくるくらいはいいが、狙撃は怖すぎる。


「追撃に出ている部隊はどうか」

「ウルグエアル殿、ドレーヌ殿の隊が追撃に出ております」

「ドレーヌはやや心配だな」

「最近はよく勉強して、真面目にやっておられるようですが…」

「補佐官は誰が付いているのか」

「エルナリエ殿です」

「ほう…」


懐かしい名前が出て来た。

伯父上と親父に毒を盛った、ゲラルド右大臣の娘だ。

原作でアシュレイ軍で軍師をしていた逸材なので何とか殺さずにさせたのだが…そうか。

やっと出てきたか。


「ふむ、エルナリエか」

「知っているのかアシュレイ」

「優秀な奴だというのは…生き返る前から知っている。最近は母上に付いて政治と軍事の両方に関わっていたはずだ。まあ、母上はアシェルにかかりきりだからほぼあいつが仕切っているのではないか」

「そうか。命を助けた甲斐があったと言うモノだ。アイツがいるなら大丈夫だろ。ドレーヌは賢そうな奴の言う事は聞くだろうしな。」


ドレーヌは人の意見を聞き入れられるタイプのアホだ。

偶に騙されることもあるが、そこもまた部下から慕われる要因となっている、得な奴だ。


「で、これからの予定だが」

「うむ」

「追撃は恐らく適当な所で中断することになる。敵の援軍が出てくるからだ」

「そうだろうな…それで」

「さあ?決戦にはなると思うが…本当に次に来るのが主力かは微妙だな」


援軍は恐らくすぐそこまで来ているはずだ。

となるとリヒタール平原での決戦か、もしくは籠城戦が行われる。

選択権はこちらにある。この場合は…


決戦だ。

普通ならそれ以外ありえない。

向こうもそう思っているはずだ。


リヒタールの西側、人族側の防壁はすべて撤去されている。

取り返される可能性を考慮してあるからだろう。

ならば、壁が出来る前に一気呵成に攻めて来ることが予想される。

となればこちらは何としても敵軍が来る前に壁を作り、防備を固めて戦場を有利にする。

そして攻撃を防ぎ、反転して一気に崩す。


あるいは敵軍の数が少ないならこちらから打って出て決戦しても良い。こちらは戦場を指定できるし、戦いも指定できる立場なのだ。

そして打ち破った後、返す刀で一気に攻め上がり帝国領を併呑して教国の喉元に刃を突き付けたい。


そうすれば教皇がいくら弱っていても、或いは変質していても出撃せざるを得ない。

でなければそのまま教都へ侵攻する。

数の暴力でボコボコにすればいいのだ。

どんな武人でも10万の軍勢でボコれば倒せる。少しずつ削ることは出来るのだ。

教皇だって、少数精鋭で倒せなかった場合は…数で押させてもらう事になる。

ドロドロの泥仕合になるだろう。いやなことだ。

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